世界のプロレス探検隊

WWEAEW新日本インディ他、国内外問わずプロレスのマッチレビューを行っています。

AEW Collision Review "年間ベスト級" FTR対BULLET CLUB GOLD/CMパンク対サモア・ジョー他

AEW Collision #4 7/8/2023

 

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AEW世界タッグ王座エリミネーター・マッチ
FTR(ダックス・ハーウッド&キャッシュ・ウィーラー)対バレット・クラブ・ゴールド(ジェイ・ホワイト&ジュース・ロビンソン)

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 タッグチーム・クラシック。逆風が吹き荒れる中でのCollision放送開始だが、自らがメインなので、自分達の力で挽回する事も可能。FTRらしい基本を大切にしたクラシカルな構成の中に、現代的な激しさ、華やかさも兼ね揃えている。

 そして対戦相手のBCGがタッグチームとして予想以上に仕上がっていたのも嬉しい誤算。団体内の地位を確立し、業界に更に名前を刻むには絶好の機会。業界最高峰のFTRの要求に応えられるだけではなく、ジェイのスターパワーは一際輝きを放っており、それを支えるジュースもポイントゲッターにもなれる2番手として申し分ない働き。試合を進めれば進める程クオリティが上がっていく。次週に即再戦が組まれるのも頷ける程の大熱戦。

 エセWWEの様な方向性を、Collisionという確固たるブランドに昇華させ、インディ色の強いDynamiteとの差別化を図れる様になったのも好材料。素晴らしいタッグマッチ。
 文句無しに好勝負。
評価:****1/4

 

オーエン・ハート・ファウンデーション メンズ・トーナメント 2023 準決勝
CMパンク対サモア・ジョー

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 18~19年ぶりのパンクの出世作がまさかの復活。Collisionがなければ、実現しなかったかもしれないマッチメイクは、賛否両論のパンクであっても、注目はせざるを得ない。

 ただ、15分を超えるシングルマッチを毎週バリバリやれる程のコンディションではないパンク。タッグであればFTRのサポートがあるものの、シングルでは化けの皮は剥がれる。華や色気は唯一無二のものがあり、パンク対ジョーというブランドの歴史の力を借りて成立させているが、昨年からもずっと一線を張ってきているジョーに比べるとコンディションの差は歴然。

 ジョーの猛攻に対して、のらりくらりと対応。出来るベターな選択を行っていた印象。果たしてコンディションを上げられるのか、それとも落ちていくのか、パンクが絶対的な主役のブランドだけに、責任は大きい。
 中々良い試合。
評価:***1/2

全体評価:7.5+

 

AEW Collision #5 7/15/2023

 

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AEW世界タッグ王座戦-3本勝負
FTR(c)(ダックス・ハーウッド&キャッシュ・ウィーラー)対バレット・クラブ・ゴールド(ジェイ・ホワイト&ジュース・ロビンソン)

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 結果58分ものロングマッチとなった3本勝負。基本的な攻防も多く、クラシカルなスタイルにジャンル分けされる試合内容ではあるものの、特筆すべき点は、序盤から一つ一つの攻防、権利がない時の動きも含めて、皆が丁寧に全力で試合に取り組んでいる点。ネタ切れにならないアイデア力やミスをしない技術、それを可能にするフィジカル、表現力は当然素晴らしいけれども、全てに魂が込められている。同じ事を再現しようにも、この日このタイミングだからこそ生み出せた試合。

 どの組み合わせにおいても見応えがある攻防が続く中、ジュースの活躍、そしてジェイとダックスの攻防が特に印象的。ジェイとダックスはシングルマッチにしても物凄い試合になると確信を持てる程激しい攻防を紡いでいく。逆水平の応酬で金が取れるレベル。それが長く続くと思わせておいて、虚を突いた中でブレードランナーが炸裂し、BCGがまずは1本先取。
 2本目は疲労感を残しつつも一旦リセットし、基本的な攻防から細かな孤立シーンを積み重ねていく。ここでも一つ一つの攻防を全力で丁寧に行う事で、停滞感を生み出さないのが見事。ハイスポットはないけれども非常に安定しており、そこで崩れなかったことが、ダックスの爆発を生み出す。

 繋ぎ感は一切なく、大技も次々と飛び出し、ブリスコズオマージュのレッドネック・ブギーも炸裂。ここでもジェイとダックスが火花を散らし続ける。2本目をFTRが奪い返し、3本目。流血やテーブルスポットはないが、場外戦を挟み、死闘感を追加。単なる場外床へのスープレックスもここまで指導を積み重ねれば、必殺級になる事を示唆。

 3本目はジェイ対ダックスのマッチアップに絞り、キャッシュにタッチさせない様にジュースが妨害し続けるという展開。シングルマッチ要素はかなり強いが、ジェイ対ダックスが余りにも熱くハイクオリティの為、全く気にならない。

 そして満を持してのシャープ・シューター。HBKオマージュを挟んでから決めるジェイも憎たらしければ、一回で終わらせず、手法を変えて最後までシャープ・シューターで走り切ったのも、この技の重みを伝えるにはピッタリ。プロテクトされているジェイに簡単に黒星をつけるのではなく、消耗し切った上でジュースに交代。

 しかしそのジュースもシャープ・シューターで脚を引きずっており、ギリギリの状態。そこで粘ったダックスが改めてシャープ・シューターを決め切るというクライマックスは、理に適っていて、ストーリーテリングとしても抜群。ジェイだけでなく、ジュースの価値も守り、BCGとしての価値を守った繊細さは見事。ブランドを守り、自らの価値を守るFTRと高みを目指す為に地位を確立させたい野心と才気溢れるBCGが引き起こした化学反応。カナダという環境もある意味最高の舞台。会場の雰囲気も素晴らしく、試合が昇華していくのを後押し。 

 必然と偶然が交わり、良い方に作用する要素が全て整った魔法の時間。問題児CMパンクを支え続けるFTRは、その批判を内容で黙らせ、ジュースはキャリアの再生を成功させ、ジェイは名声を更に業界全体に轟かせた。

 年間ベストマッチ候補、5スターマッチです。
評価:*****

 

オーエン・ハート・ファウンデーション メンズ・トーナメント 2023 決勝
CMパンク対リッキー・スタークス

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 アピールや挑発を交えながらオーソドックスなレスリングの攻防を積み重ねていく。パンクが目指す方向性は、リッキーが活きる方向性でもある。勢いにも動きのキレにも勝るリッキーと、コンディションは上がらないが、老獪な試合運びで対応するパンクの構図。

 WCW移籍後のブレット・ハートを彷彿とさせる様な動きの衰えをレガシーで乗り切るパンク。名実共にリッキーが凌駕していく形だったが、パンクが何とか踏ん張って、次代のメガスターを生み出す役目を果たしていきたい。特別な試合ではないが、極端に低評価を付けられる様な試合ではない。

 また、リッキーのヒールターンは、期待したい。
 平均的良試合。
評価:***1/4

 

全体評価:8.5