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AEW All Out 2023 Review ブライアン・ダニエルソン対リッキー・スタークス/オレンジ・キャシディ対ジョン・モクスリー他

AEW All Out 2023 9/3/2023

 

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AEW TNT王座戦
ルチャサウルス(c)(w/クリスチャン・ケイジ)対ダービー・アリン(w/ニック・ウェイン)

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 クリスチャンの傍若無人な悪党っぷりが弾けているこの抗争。ALL INでのコフィン・マッチでダメージを負ったダービーをルチャサウルスが体格を活かした攻撃とラフ殺法で流血に追い込む。ダービーの類稀なる被虐力により、ルチャサウルスの破壊力が最大限活かされていたのが特筆すべき点。

 攻守に渡りスーサイド過ぎるダービーにしか出来ない手法はまさにチート。それでいて反撃シーンでも魅力を打ち出せる。クリスチャンとニックを絡めたクライマックスも狙いズバリ。クリスチャンの悪さも全開で非常に楽しめた一戦でした。
 好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4

 

AEW TBS王座戦
クリス・スタットランダー(c)対ルビー・ソーホー(w/サラヤ)
 安定した実力を誇るルビーと団体随一の身体能力を誇るスタットランダーの激突。インディ仕込みのパワフルな攻防を多く挟み、アクセントはサラヤのセコンドワーク。

 ストーリーがあってないようなものだったことや、溜めて溜めて爆発という王道のフェイス/ヒールよりは、流れが不規則な一進一退な為、乗りづらさはあるものの、アクション面での力強さは保たれている。

 最後はトニー・ストームがルビーを邪魔する形のフィニッシュで、それ自体は楽しみなストーリーであるが、試合内容も良かったので、この再戦を特殊形式でやってくれたら申し分ない。

 平均的良試合。
評価:***1/4

 

ノーDQ、ストラップ・マッチ
ブライアン・ダニエルソン対リッキー・スタークス

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 CMパンクリリースの影響を1番受けたリッキー・スタークスとこの抗争だったが、右前腕の骨折が完治していないブライアン・ダニエルソンが緊急復帰して、かつてのフィーンド・プレイ・ワイアットとも激闘を繰り広げたストラップ・マッチで激突するという急転直下の展開となったが、結果は特大の大成功。

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 Forbidden Doorに続き、『Final Countdown』で登場し、瞬く間にシカゴの観客を熱狂させるだけではなく、リッキーの奇襲攻撃により大流血まで負い、序盤はグロッキー状態が続くも、一度反撃の機会を得ると、ストラップを駆使し、鬼神の如くリッキーをボコボコにするこれぞ暴力龍というところを発揮する。
 ブライアンの凄さもさることながら、リッキーのヒールプレイは完璧。早々に逃げて、ヘタれるかと思いきや奇襲を仕掛けて主導権を握る。攻勢を強めるも反撃に遭った時のダメージ表現は痛みを十二分に感じさせるもの。

 その後も逆に流血に追い込まれ、ひたすらボコボコにされても、ワンサイドではなくこちらも気迫の籠った表情で食い下がる。ストラップの使い方やその他の攻撃もインパクト満点で的確。リッキーの大活躍があったからこそブライアンの大爆発も生み出せた。

 セコンドのビッグ・ビルやスティムボートの扱い方も適切。非常に難しいストラップ・マッチを他の凶器を一切使わずに、ストラップに拘り、これ以上ない死闘感を纏った大流血戦に昇華。災い転じて福となす。年間ベスト級の名勝負でした。
 文句無しに名勝負。
評価:****3/4

 

 

ケニー・オメガ対竹下幸之介(w/ドン・キャリス)

 

 

 


 日本の至宝竹下をオーバーさせる為にセッティングされた抗争。自らの価値はキープしつつ、竹下の能力を世界に改めて知らしめる。柴田対エディとは少し異なるアスリート性を全開にしたジャパニーズスタイル。

 アンダーテイカーばりのフライングクローズラインやブルーサンダーボムにヘルヴァキックなど特大のジェネリコ殺法で実力は示し、そこにケニーのハードバンプを付加。どうしても足りないヒール要素は盟友キャリスにお任せ。キャリスは、存在しているだけでヒートを集められるので、竹下もアクション面に集中出来る。

 終盤はケニーの十八番メドレーが炸裂し、制裁感を打ち出しケニーの怖さ強さを表現した上で、キャリスの介入やスクリュードライバーを絡めながらフィニッシュ。流血戦が揃っていて、鉄階段スポットはルチャサウルス対ダービーで使用済とラフの面で試合の幅を広げ切れなかった所に難しさはあったものの、竹下の実力を改めて示し、次代の大物として改めて再提示するには十分過ぎる好勝負でした。
評価:****1/4

 

ヤング・バックス(マット&ニック・ジャクソン)&FTR(ダックス・ハーウッド&キャッシュ・ウィーラー)対バレット・クラブ・ゴールド(ジェイ・ホワイト、ジュース・ロビンソン、オースティン・ガン)

 


 箸休めになりそうな所をそうはさせないAEW。ただ5つ星を狙う様な試合ではなく、息継ぎはさせながらも楽しめる内容となっている。飛ぶ鳥を落とす勢いのBCGは、リーダーのジェイ、参謀のジュース、若頭ガンズと役割が明確でありながらも、ジュースとガンズが生き生きと働いているのが印象的。

 特にこの試合では、FTRとバックスの腕の影響も勿論あるが、一つ一つの動きが向上していたガンズのレスラーとしての成長を窺える。そしてこの試合の肝は、永遠のライバルであるバックスとFTRのカルテット結成。個々の安定した働きは勿論のこと、バックスとFTRの連携、それぞれの連携を片割れずつで行う演出はプレミア感満載。

 バックスの頑張りでパンク派のFTRが出てきた(キャッシュの逮捕の余波もある)時に流れる微妙な空気を払拭していたのが印象的でした。箸休めにしては超豪華で充実した内容。この組み合わせでしか出来ない8人タッグを堪能出来ます。
 好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4

 

AEWインターナショナル王座戦
オレンジ・キャシディ(c)対ジョン・モクスリー

 

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 シングル31連勝を引っ提げて、遂にオレンジ・キャシディがPPVのメインに到達。しかし、そこには10回目のPPVメインを飾る、ミスターPPVモクスリーが立ちはだかる。

 ポケットに手を入れるオレンジ殺法には付き合わず、スーパーマン・パンチの使い手を横で誰よりも見てきて、誰よりもオレンジ・パンチのことを理解している為、簡単には当てさせない。それでいて一気にドミネイトに行くのではなく、オレンジの攻撃は喰らいつつドミネイトしていく展開で、オレンジの格は、最低レベル保ちながらもモクスリーの圧倒的な強さを示すストーリーテリング。

 そして何よりもオレンジは大流血を強いられる中、3度の飯と同じくらいに流血が大好きなモクスリーが流血なしだったこと。クリエイティブが正常でなければ、モクスリーも流血していたかもしれないが、そこをコントロールさせたのはこの試合に大きなインパクトを与えた。

 モクスリーが最強のヴィランとして君臨し、オレンジが霊込めたトップベビーフェイスとして食い下がる。オレンジ・パンチ連発からローマン・レインズばりのスピアーを決め、その上でポケットに手を入れたオレンジ殺法を行うも、隙を見せたら倍返し。狂犬のラストスパートに遭ってしまうと、試合までのストーリー、試合の中でのストーリーテリングも完璧。

 試合時間を追うごとにボルテージが上がっていく感じは極上のひと時でした。急遽のメイン抜擢となったが、CMパンクのことなんて思い出す必要もない位に素晴らしいメインイベントを作り上げました。
 名勝負。
評価:****1/2

 

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全体評価:10