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WWE Payback 2023 Review セス・ローリンズ対中邑真輔/ベッキー・リンチ対トリッシュ・ストラタス他

WWE Payback 2023 9/2/2023

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スティール・ケージマッチ
ベッキー・リンチ対トリッシュ・ストラタス

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 ディーヴァズ・エラの象徴とウィメンズ・レヴォリューション・エラの象徴の最終決戦は、トリッシュが熱望していた金網戦。毎週の様にRAWに登場し、ハウスショーにまで登場したトリッシュは、47歳にして全盛期を更新するコンディションの良さをキープ。WWE女子部門をリードし続けるカリスマベッキーのサポートを受けながらも、そのサポートを感じさせない程に活躍。

 冒頭から遺恨を感じさせる素早い一進一退から金網を使った攻防も早々に取り入れる。エスケープ狙いとフォール狙いのバランスが非常に良く、常にどちらを狙っても試合の世界観が壊れない状態をキープし続けている。往年のライバルヴィクトリアのウィドース・ピークでノスタルジックにさせる演出も憎い。

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 そして終盤からは金網をよじ登りエスケープを狙うスリル感を増幅させ、捕まえた後は、想像を超える雪崩式の攻撃を決め、インパクトを生み出す。金網外からのぶっこぬきスーパープレックスは年間のハイライトになる名シーン。受けるトリッシュ、完璧に投げ切ったベッキー、共に天晴れ。
 クライマックスでは、ゾーイ・スタークも介入しラストスパート。ゾーイの介入によって、チープフィニッシュにならない演出も大成功。それまでの内容を無に帰さず、最後まで勢いを持続し切った。

 流血以外のエッセンスは全て入っていて、全て高いレベル。HIACやチェンバー戦を含めても、今のWWEで出来る金網戦の最高峰。それを47歳のトリッシュが残したのが驚嘆の一言。彼女のキャリアでも間違いなくベストの一戦。

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 それをTNA版チームカナダ、元Xディビジョン王者、カナディアン・デストロイヤーの元祖、ピーティ・ウィリアムスがプロデューサーとして、同じカナダ人のレジェンドトリッシュと一緒に作り上げたのも感慨深い。ヴィクトリアとはTNAで被っていたので、そのアイデアが出てくるのも頷ける。

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 ライバルであり盟友のミッキー・ジェームズが、インパクトで今年1月にキャリアベストを残す好勝負を生み出した後、トリッシュが同じ様にキャリアベストを打ち立てる。ディーヴァズ・エラの生き残り達が、時代を超えて、今の現世代新世代達の力を借りながら、好勝負を残す。これ以上ドラマチックなものはない。今大会のMOTNであり、団体のMOTYにも挙げられるべき試合。プロレス史にも残る大熱戦でした。

 名勝負。
評価:****1/2

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アンディスピューティドWWEタッグ王座戦-スティール・シティ・ストリート・ファイト
サミ・ゼイン&ケビン・オーウェンス(c)対ジャッジメント・デイ(フィン・ベイラー&ダミアン・プリースト)

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 サミKOのハードコアは天下一品なので、期待値が上がり過ぎてしまったことが、もっと出来たはずなのになと思わせてしまう要因。しかし、4試合目というポジションでやれる事は詰め込んだ試合。
 序盤は、まったり目の乱闘模様だったが、場外戦でNHLピッツバーグ・ペンギンズのコスチュームに着替えたサミKOが反撃した辺りからはギアチェンジ。

 テリー・ファンクのTシャツを着用し、テリーに対する追悼の意味も込めて、少しの時間だけ流血姿をTVに刻んだケビン・オーウェンス。プロレス頭の素晴らしさ、プロレスラーとしての魂を感じる一幕で、それを交渉して、キッチリ許可が出るほどの存在である所もケビンが超一流である要因。高所からのテーブル破壊スワントーンも決め、確固たる存在感を示した。
 その後は、必殺技が決まりもう決まったかと思わせておいて、度重なる介入の嵐。ドミニクにマクドナそして最後はリアと5対2というまさに多勢に無勢を具現化した形でフィニッシュ。

 サミKOの王座陥落は残念だが、JD分裂ストーリーがいつ結末を迎えるかわからない時限爆弾を抱えている中で、それが爆発する前にタッグ王座という記念の証を与えたのは理解出来る。それに値する活躍を身を粉にして続けていた。メインに代わってWWEらしいエンタメ要素満載の乱戦を見せてくれました。

 好勝負。
評価:****

 

WWE女子世界王座戦
リア・リプリー(c)対ラクエル・ロドリゲス

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 かつての親友対決。NXTでも素晴らしい試合を残している両者。互いにステージを上げての激突となった。何といっても両者の最大の武器は類稀なる体格。男子以上のパワフルさを持っているので、それを損なわない様に構成されている。

 その一方で、非常に丁寧に一つ一つの攻防を進めていったのは印象的。ベーシックなレスリングからショルダータックルにグラウンドを織り込んで行った。リアのヒールプレイを耐えたラクエルがミスムーブも何のその、パワフルな投げを連発し、特にバリケードにパワーボム、鉄柱へのスネークアイズと容赦ない攻撃を見舞っていたのがハイライト。

 ただ、迫力は十分だったが、オープニングを境にテンションがイマイチな観客の後押しは少なく、期待していたリアクションは得られず。身体能力としては匹敵しているが、ラクエルのフェイスとしての引き込む力がトップレベルからすれば物足りなさがあり、リアのレベルには到達していなかった。更にドミニクを介入させるので、結果リアの完勝感は際立った。

 ハードコアの方がこのカードの魅力が出るので、抗争を継続し、NXTの時の様に特殊形式にまで持ち込みたい。
 平均的良試合。
評価:***1/4

 

WWE世界ヘビー級王座戦
セス・”フリーキン”・ローリンズ(c)対中邑真輔

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 セスはブレイ・ワイアット追悼コスチューム、中邑は入場前のビデオ付きの特別仕様の入場。客席で観戦している武藤敬司の化身グレート・ムタをオマージュした様なコスチュームも着用していた。

 ただ、試合はムタの要素を出す訳でも、エンタメ要素を織り込む訳でもなく、シンプルな一進一退が続く。このカードのテーマとなっているセスの背中を狙うストーリー。セスの演技力で何とかなっているものの、PLEのメインを背負うカードのテーマとしては弱過ぎる。セスの演技も特別な襲撃スキットがあった訳ではないので、そこまでダメージ表現を強め切れないのももどかしい所。

 その為、観客がWWEに期待する内容とは乖離が生じており、会社の盛り上がりもセミに続き弱い。AJとの抗争の際、ロー・ブローを多用するヒールキャラで実績も残しているので、アーティストな面と共存させて欲しい所。気味が悪いほどに外連味のないジャパニーズスタイルは、AEWを意識していないことはないであろう采配。
 セスが、普段使っているスリングブレイドに歴代トップの高さを誇っていたハイフライフローといいたくなるフロッグスプラッシュに、正調レインメーカーを放つなど試合の中に散りばめられたメッセージも興味深い。

 試合後にキャッシュインがあるのでは?と思わせるくらいにブッキング面での演出を廃していたのが印象的。終盤にかけても攻防を重ね、ボリュームアップ。十分に良い試合ではあるが、正直RAWでも出来るレベル。WWEのPLEのメインという意味でも、ジャパニーズスタイルという意味でもさっぱりし過ぎていて、物足りなさは残る。

 抗争は継続になる様なので、どう決着を迎えるかは注視したい。

 好勝負に届かない良試合。

評価:***3/4

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全体評価:8.5+