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WWE Money In The Bank 2023 Review イヨ・スカイ躍動! 女子ラダー戦/レインズ&ソロ対ウーソズ "Bloodline Civil War"

WWE Money In The Bank 2023 7/1/2023

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メンズ・マネー・イン・ザ・バンク・ラダー・マッチ
LAナイト対サントス・エスコバー対ダミアン・プリースト対リコシェ対ローガン・ポール対ブッチ対中邑真輔
 実力者人気者揃いの豪華なラダー戦。それぞれの持ち味や技術が見事に反映されており、メガスターローガン・ポールの使い方も的確。ブッチがピート・ダンにならなかったことは残念だが、マイナス要素はそれ位。

 リコシェとローガンの業界最高レベルの身体能力の高さが発揮されたスポット連発に、誰が勝つかわからない魅せ方もズバリ的中。目新しいスポットこそなかったものの、参加者全員に満遍なくスポットが行き届き、ストーリーを反映されながら、途切れずインパクトを生み出し続ける。多人数ラダー戦のお手本の様な試合でした。

 好勝負。
評価:****

 

WWE IC王座戦
グンター(w/ルドヴィグ・カイザー&ジオヴァンニ・ヴィンチ)対マット・リドル

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 PROGRESSの3試合は未だに記憶に残る素晴らしい肉弾戦であったこのカード。そして狙い澄ましたロンドン開催と期待は高まるものの、結果からするとミッドカードレベル。

 負ける理由付けとなったリドルの足首の負傷が、結果的にこのカードの持つダイナミズムを阻害してしまうことに。ラッシュを仕掛けられる所もダメージ表現をしたことにより、勢いが止まってしまったシーンが散見された。

 それでもリドルのシューター部分とグンターのハードヒットが堪能出来る試合内容には仕上がっているものの、年間ベスト級を狙えるポテンシャルを秘めていたが為に、期待外れではあるが、PLEのアンダー〜ミッドカードと考えれば、十分な良試合ではある。

 中々良い試合。
評価:***1/2

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ウィメンズ・マネー・イン・ザ・バンク・ラダー・マッチ
ゼリーナ・ベガ対イヨ・スカイ対ゾーイ・スターク対ベイリー対ベッキー・リンチ対トリッシュ・ストラタス

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 男子のラダー戦を観た後だと、どうしてもフィジカルの不足感は否めない。

 フィジカルで勝負出来るリア、ビアンカ、シャーロット、ラクエル辺りが不在。テクニックやハードバンプで貢献出来るアルバ・ファイアやリヴ・モーガンも不在と人選の時点でハンデが相当あり、実際懸念していた要因は表れてしまったものの、粗を出さない管理プロレスの強みと女子部門の番頭格ベッキーとベイリーのずば抜けた調整力が光る展開。そこにイオやスターク、ベガがハイスポットで貢献。

 そしてもう一つ肝となったのは、47歳トリッシュの使い方について。フィジカルについては、かなり厳しい戦いを強いられていたが、スタークと組ませ、ベッキーとのストーリーを反映させる事でカバー。そして何といってもWWE女子史上最大の存在の1人である貫禄と衰えぬ華。トリッシュがいるだけで豪華になるネームバリューは効果有。

 終盤は、Damage CTRL内紛ストーリーやラダーへの投げに手錠スポットを絡め、男子と上手く差別化出来たことが功を奏し、女子のMITB戦としては史上最高のフィニッシュを演出出来ました。中々良い試合と評価を付けますが、特別な試合には変わりはありません。

 日本人としては歓喜の瞬間がまた一つ増えました。イヨのメジャー・プッシュは喜ばしい限り。
評価:***1/2

 

 

WWE世界ヘビー級王座戦
セス・”フリーキン”・ローリンズ(c)対フィン・ベイラー
 ベイラーが負傷中のセスの肋骨を攻める展開。派手ではないがセオリー通りに堅実に試合をすすめて、外れのない構築。大きな仕掛けがあるかと思いきや、プリーストが出てくるところが1番の見所。

 丁寧にストーリーを紡いだ割には、やけにあっさりとした試合内容に着地。大ヒットとなったブラッドラインの次はJD分裂ストーリーになるのかは気になる所で、堅実な良い試合だが、今のこの2人であることを考えれば、正直期待外れではある。

 中々良い試合。
評価:***1/2

 

Bloodline Civil War
ローマン・レインズ&ソロ・シコア(w/ポール・ヘイマン)対ジ・ウーソズ(ジェイ&ジミー・ウーソ)

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 ブラッドラインの内戦がメイン。まず冒頭10分間の密度が格段に高い。4者4様の現在の能力や格、これまでのストーリー、しかも分裂が起きた1カ月間ではなく、ブラッドラインが発足する以前のレインズ×ジェイ、ジミーの関係性や試合内容をフラッシュバックさせる様な演出を、ヘッドロックやナックルといった基本技のみでやってのけるまさに神業。積み上げたストーリーと類稀なる演者の技術が合わさった極上の空間でした。

  レインズが支配する空間でありながら、ウーソズのタッグ力は下剋上を起こせるレベルにあること、ジェイ、ジミー、そしてソロとこの3年間(ソロは1年間だが)により格段にレスラーとしてのスキルが向上した事を、ドラマチックに表現していく。特別なことをしていなくても、特別に映る。ライト層はストーリーとこのマッチメイクに熱狂し、マニア層はディテールの緻密さに酔いしれる。全方向でトップレベルの内容。

 中盤は、じっくりとレインズ&ソロの支配ターン。何の変哲もない基本的なホットタッグだが、レインズがやるだけで数億ドルの輝きを放つ。そして終盤。ソロのブルドーザー的魅力を活かしながら、レインズ×ジェイのマッチアップを中心に、必殺技、幻の3カウント、レフェリー失神などこれぞタッグマッチの王道というべき攻防を広げていき、最後はレインズがジェイからフォールを奪われるというサプライズ。

 サマスラに向けた繋ぎに過ぎないはずの抗争、試合を1番クラシカルな手法で極上の内容に昇華させてしまう巧妙な手口。団体を挙げて作り出した一大巨編は、まだ簡単には終わらせない。名ストーリーの効力を更に増幅させたWWEにしか生み出せない重厚なタッグマッチでした。文句無しに好勝負。
評価:****1/4

 

全体評価:9.5