世界のプロレス探検隊

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WWE Elimination Chamber 2023 Review ローマン・レインズ対サミ・ゼイン他 ~SAMI MANIA in Montréal~

WWE Elimination Chamber 2023 2/18/2023

 

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エリミネーション・チェンバーマッチ/#1コンテンダー(RAW女子王座)
リヴ・モーガン対ナタリア対ラクエル・ロドリゲス対カーメラ対アスカ対ニッキー・クロス
 若手〜中堅揃いの人選。1番実力、実績、人気を兼ね揃えたアスカを先に出したいところだが、何とか最後まで温存。ラクエルのパワーを活かした3ウェイムーブにポット破壊、ニッキーのポット上からのダイブ、カーメラの姑息な動きもアクセントとなっており、アスカの登場までクオリティをキープ。

 全員に見せ場を与えながら、適切な形で脱落させ、もう一つのチェンバー戦の足掛けにならない様にコンパクトな仕上げとなっている。オープニングとしては十分な内容。

 平均的良試合。
評価:***1/4

 

ブロック・レスナー対ボビー・ラシュリー

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 恐らくブレイ・ワイアットを絡めた特殊形式での再戦となるWMへのネタ振り。クリーンに決着する訳はなく、必殺技連発のアバウトな展開にチープフィニッシュ、試合後の暴走まで通常運転。HHHとWM前にこの仕事を飲むレスナーとの関係が悪くないのがわかるのは良い。
評価:**3/4

 

エッジ&ベス・フェニックス対ジャッジメント・デイ(フィン・ベイラー&リア・リプリー)(w/ドミニク・ミステリオ)

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 エッジのカナダ凱旋試合。エッジ&クリスチャンの連携を行った後は、ブル中野オマージュメイクで登場したベスをメインに据えた構成に。度重なるドミニクの介入、チープフィニッシュ未遂からのエッジの親友FTRから拝借した秘技シャッターマシーンと盛り上がる上に、全員が損をしない様な構成となっており、クオリティ以上の盛り上がりを見せていた。

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 ベスがかなりフューチャーされており、流石にフルタイムの時の様には出来ないものの、年1回ロイヤル・ランブルに出てくるだけの時に比べれば、フィジカルも含めかなり戻していた。エッジが極力サポートに回っていたのも印象的。ただ全盛期と比べると、女子革命以後にベスがピークを迎えていたらと思わざるを得ない。

 WMではシャーロットに挑戦することが決まっているリアもWMに向けて仕上がっており、無理はし過ぎずとも存在感を見せていた。実質JDは彼女のユニットだが、シャーロットよりもリアの方が支持を受けているので、2002年のHHHばりにベビーフェイスを無理に演じているシャーロットにヘイトが飛ばない様な工夫は必要。

 平均的良試合。
評価:***1/4

 

WWE US王座戦-エリミネーション・チェンバーマッチ
オースチン・セオリー(c)対セス・”フリーキン”・ローリンズ対ジョニー・ガルガーノ対ダミアン・プリースト対ブロンソン・リード対モンテズ・フォード

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 NXT ”Black and Gold”期に活躍した選手で固めた人選。AIWでしのぎを削っていた過去を持つセスとガルガーノからスタート。業界でもトップクラスの腕を持つ2人が最も簡単に濃密な攻防を演じると、メインヴィランとなるセオリーを投入。ヒールらしく集中攻撃を浴びるシーンは画になる。新世代のジェリコやミズ枠をほしいままにする活躍。

 その後はリード、プリーストと火力の強いメンバーが支配する展開。掃除屋でも単なる掃除屋でなく、動きに動けて、破壊力と共に技量も併せ持つ2人なので、その迫力で試合の熱を逃さない。最後のフォードも入ると、次々と脱落していくのかと思いきや、スクランブルマッチの様に豪快なムーブを連発し、素早くスポットを回していく。全員何らかのタイトルホルダーだった実績を持つ選手達の競演。メインロスターのスケールでインディの様な独創的なスポットを繰り出す隙のなさ。それぞれの特性を最大限活かし、それをチェンバーに落とし込む。特にリード、ガルガーノが脱落するまでは神掛かっていた。

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 セス、セオリー、フォードの3人となってからは、WM、その後の種蒔きがメイン。フォードの健闘を印象的に映す演出は、長らく噂されているシングルプッシュの予感を明確にし、セス×セオリーとなった後は、早々にローガン・ポールの介入でフィニッシュ。全てはWMの為ではあるものの、WMに出る事がほぼ確定しているセスとセオリー以外の4人がエネルギッシュな活躍を見せ、話題沸騰のメインに埋もれない程特別な試合に押し上げた。ロスター内の競争が生んだ名勝負です。
評価:****1/2

 

アンディスピューティドWWEユニバーサル王座戦
ローマン・レインズ(c)(w/ポール・ヘイマン)対サミ・ゼイン

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 全てはサミ・ゼインの為に。ローマン・レインズとウーソズの為に始まったブラッドラインのストーリーを予想を遥かに超える団体を代表する大ヒット作に押し上げた立役者であるサミ・ゼインの活躍に対する敬意を込めた最高のプレゼントは、地元カナダ・モントリオール開催のPLEで、団体最大のスターであるローマン・レインズ相手にアンディスピューティドWWEユニバーサル王座戦を戦うこと。
 プロレスにおいて勝ち負けは些細なことな時もある。でもこの試合は、絶対にサミ・ゼインに勝って欲しかった。そう思わせてくれた時点で素晴らしい作品であることは確定。この日同様モントリオール開催となった昨日のSmackdownでの旧入場曲『Worlds Apart』復活、割れんばかりの大歓声からの熱気を引き継ぎ、ジョン・シナやブロック・レスナー級でしかあり得ない、王者ローマン・レインズを先に待たせての後入場。この時点で最高にエモーショナル。

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 試合自体は、特別な攻防や強度の高い過激なシーンはなく、絶対的にサミ支持のこの環境を楽しみ、最大限に活かすことを軸として展開させている。スーパースター、ローマン・レインズの立ち振る舞いは、全てにおいてストーリーテリング。観客全体だけでなく、執拗に最前列で観戦しているサミの妻を挑発、サミなんて相手じゃないとあしらいつつも、反撃を喰らうと焦った表情を見せる。

 尊大ヒールをさせれば、現代で右に出るものはないレインズと、インディ時代からキャリア全体を通してアンダードッグをやらせれば右に出るものはいなかったサミの競演。ブラッドラインストーリーがあったからこそではあるものの、互いの魅力が光る関係になり得る可能性はあったので、最高の形で立証する事が出来た。

 家族の前で痛めつけられ、やっぱりダメかという感情と奇跡を信じたくなる感情が交差する内容。世界観を壊さない様に丁寧に、シンプルに。それは必殺技攻勢からレフェリー失神×2、来るはずのなかった、そもそも逮捕歴から国境を越えられない可能性が高かったウーソズのジミーとジェイを呼び、ロイヤルランブルのオマージュもこれでもかと追加。レインズの強さと悪さを示しながら、同時にサミの価値も上げていく。対抗策としてスーパーマン・パンチを使ったのも、わかりやすい技セットが少なめなサミを補う選択肢としては賢明。最後の最後まで「モントリオールの」奇跡を信じさせた一方、ジェイへのスピアー直撃や椅子攻撃による支配的なフィニッシュとWMに向けた種蒔きも忘れない。

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 試合後、助太刀に来たもう1人のモントリオール生まれ、サミの唯一無二のライバルであり大親友ケビン・オーウェンスによるクリーンハウスの時、安易に抱き合わないビターな演出もこの2人の関係性を表現するものとしては最適。ケビン・オーウェンス&サミ・ゼイン、スティーネリコ再結成ではなく、この日はあくまでもサミ・ゼインが主役であることを通していたのも見事。クリエイティブ側もそうさせたかったとは思うが、ケビン・オーウェンスならば絶対にサミの為になる様なことをしてくれるという確信はある。

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 場所、日時、演者、ストーリー含め全て運命的。HHHやローマン・レインズを突き動かしたサミ・ゼインの為のプロダクション。この試合よりも凄い試合はいくらでもあるけれども、少なくても今年はこの試合よりも、この大会よりも本当に観たいと思える大会は中々生まれないでしょう。伝説の『Money in the Bank 2011』級。まさにサミ・マニア。サミが前夜のSDのプロモで述べていた通り、「Once in a lifetime」というべき特別な試合であり、サミ・ゼインがWWEにおいてもメインイベンターの器である事を証明するには十分過ぎる作品となりました。2度目はきっと来る。名勝負。
評価:****1/2

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全体評価:サミが王座奪取していれば年間ベストは当確でした。なのでこの評価。でもそれが仕方ない事位は理解している。この大会よりも凄い大会は生まれるだろうが、この大会よりも観たいと思える大会は、今年に感じては正直生まれない確率は高い。それ程までに熱中出来た素晴らしい大会でした。

全体評価:9.5+