世界のプロレス探検隊

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AEW ALL IN London 2023 Review MJF対アダム・コール/FTR対ヤング・バックス他

AEW All In London 2023 - Zero Hour 8/27/2023

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ROH世界タッグ王座戦
オージー・オープン(c)(カイル・フレッチャー&マーク・デイヴィス)対ベター・ザン・ユー・ベイベイ(MJF&アダム・コール)
 タッグとしての芸術点はFTR対バックスの方が上回っているが、MJF &コールの圧倒的人気に支えられ、プレショーにしてこの日最高級の盛り上がりを生んだのがこの一戦。一挙手一投足でウェンブリーが爆裂に盛り上がる。

 最悪の嫌われ者は最高の人気者になる。本人以外待ち望んでいたMJFの(擬似)フェイスターンは、想像を遥かに超える大成功。単なるドロップキック(カンガルー・キック)で盛り上がる事が出来るのは唯一無二。オージー・オープンの的確な仕事ぶりも見事だったが、MJFとコールがスターパワーとストーリー性で全てを持っていった試合でした。
 好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4

 

AEW All In London 2023 8/27/2023

 

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Real World Championship
CMパンク(c)対サモア・ジョー

 


 HHHが右腕に据えた男。ビンスがPPVのメインでブロックレスナーに挑戦させた男。唐突なリリースに遭っても業界が放っておかなかった男。狂った00年代インディで頂点に立ち、TNAでも頂点に立った男は、対戦相手が試合直前にバックステージでシュートの喧嘩を行っても、平然と切り抜ける。問題児に対する心得を持っている度量の広さ。それがサモア・ジョーという男。いつおかしな行動を取ってもおかしくなかった状態のパンクを制御出来る強さを発揮し、大事なウェンブリーのオープニングを務め上げた。 

 ジョーが対戦相手で本当に良かった。トニー・カーンが右腕に据えるべき存在はこういう存在。ブライアンが怪我、ジェリコとモクスリーはDynamite専属状態の中、ジョーがいるからこそCollisionも含めたパンク帝国が成り立っている。
 試合は、かつてのライバリティを思わせる攻防、懐かしのムーブも多く取り入れる。普段以上に煽り要素を強めた構築も、大会場を焚き付けるものとしては最適解。ジョー支持が多数の会場を無視せずに、ドミネイトに結びつける。

 ライブで見れば、コンディションの良さが上回るジョーの強さが出ていたとはいえ、何だかんだでパンクのシナムーブ、テリー追悼やペプシ・プランジが持って行ったなという印象だが、騒動の後に見直すと、最終的なパンクへのお膳立てを欠かさなかったところも含めてサモア・ジョーの完璧な仕事ぶりに圧倒された試合でした。ジョーは今大会のMVPの一人でしょう。
 中々良い試合。
評価:***1/2

 

ザ・ゴールデン・エリート(ケニー・オメガ、”ハングマン”アダム・ペイジ&飯伏幸太)対バレット・クラブ・ゴールド(ジェイ・ホワイト&ジュース・ロビンソン)(w/ザ・ガンズ)&竹下幸之介(w/ドン・キャリス)

 


 ケニー対竹下、ケニー対ジェイのマッチアップを中心に据え、GLの連携やガンズの介入をアクセントとして加えていく。ケニーや竹下に比べると飯伏のコンディションが全快時には程遠いのが、残酷な程見えてしまうのは苦しさはあるものの、存在のプレミア感は持っている。シングルだと厳しいがタッグやトリオならやってくれる部分もあるでしょう。
 色々な前哨戦となっている為、ケニー&ハングマンとBCGは突き詰めた形とはなっていないが、ケニー対ジェイのカードは将来のPPVのメインだけあり、やはり格別に輝きを放っていた。面子を考えれば期待外れかもしれないが、アンダーカードということを考えれば余りにも上級過ぎる。

 中々良い試合。
評価:***1/2

 

AEW世界タッグ王座戦
FTR(c)(ダックス・ハーウッド&キャッシュ・ウィーラー)対ヤング・バックス(マット&ニック・ジャクソン)

 業界全体でタッグの頂点に立つ者同士の3戦目。大会場を意識した攻防が多くなる中でも、タッグとしての戦略的な攻防を多く取り入れ、控えを交えた展開も多く用意。掟破りの合体必殺技やTVマッチでは抑えられている攻防も多く披露。

 凄いのが当たり前で期待値が高過ぎるが故に、驚きが起きにくくなっていて、3試合目という配置も抑制される要因とはなっているが、面白さや凄さが変わらず高いレベルにある。キャッシュの騒動も何のその、実力で騒動を払拭してくるのは流石である。タッグの面白さ、このカードの魅力は惜しみなく発揮されていた大熱戦。

 文句無しに好勝負。
評価:****1/4

 

スタジアム・スタンピートマッチ
ブラックプール・コンバット・クラブ(ジョン・モクスリー、クラウディオ・カスタニョーリ&ウィーラー・ユータ)&プラウド・アンド・パワフル(マイク・サンタナ&オルティズ)対ベスト・フレンズ(チャック・テイラー、トレント・バレッタ&オレンジ・キャシディ)、エディ・キングストン&ペンタ・エル・セロ・ミエド(w/アレックス・アブラハンテス)

 


 会場全体を使った凶器満載ハードコア。モクスリー×オレンジ、キングストン×クラウディオといった遺恨が深いマッチメイクを中心に据えながら、ほぼ全員流血していく大乱戦。竹串、有刺鉄線、フォークといった凶器が飛び出し、オレンジが珍しく大流血し、ハードコアに身を投じていく辺りは、ある意味更なるステップを歩み出したといっても良いでしょう。

 復帰戦となるPNPの2人も乱戦はお手の物なタイプなので、十分健在をアピール。バレッタの母親スーの登場を皮切りに、ペンタがコスチュームチェンジ、テーブル破壊連発、クラウディオのジャイアントスイング、キングストンの復活、そしてガラスの破片を投入し、大流血のオレンジが拳にガラスの破片を付けるタイペイ・デスマッチモードと怒涛のクライマックス。まさにオレンジ・キャシディの新章到来を感じさせる一幕でした。

 ライブで大会場に10人いて、画面が次々に入れ替わる見にくさは少しあるのは仕方ないとはいえ、ヴァイオレンス度の高い激闘には十分仕上がっており、楽しさも満載。東海岸インディの雄+インパクトで凌ぎを削ったペンタとPNPというメンバーで勝手知っている関係性だったのも大きく、互いの活かし方を理解していた。粗はなく、スケールの大きさをキープしながら上手くまとめ切ったのは賞賛に値する。
 文句無しに好勝負。
評価:****1/4

 

AEW女子世界王座戦-フェイタル・4ウェイマッチ
志田光(c)対Dr.ブリット・ベイカーD.M.D対トニー・ストーム対サラヤ


 一家総出、Queenの『We will rock you』使用というさくらえみ封殺入場で現れたサラヤの為の試合。決して悪い試合ではないのだが、性急なアウトキャスツの仲間割れとサラヤ王座戴冠の為の試合。それ以上でもそれ以下でもない試合。技術も実績もそしてスターパワーもあるので、後はまともなストーリーを付けて欲しい。

 平均より上。
評価:***

 

コフィン・マッチ
スティング&ダービー・アリン対クリスチャン・ケイジ(w/ルチャサウルス)&スワーブ・ストリックランド(w/プリンス・ナナ)

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 再びジミー・レイヴのローブ着用で登場のスワーブ。レイヴへの思いなのか単純に気に入っているからなのかは不明だが、インディファンには嬉しい演出。そしてWCW時代の入場曲 メタリカの『Seek & Destroy』でジョーカーモードのスティングとダービーが登場したのがこの試合のハイライト。

 試合は、ダービーのハードバンプをメインに、トルネード式に展開。フォックスからクリスチャンに変わる事でタッグマッチらしさは皆無に。スワーブとクリスチャンも意図的に個々で交わらない様にしていた印象。単発では見せ場は複数あったものの、試合全体で見ると線にはなり切っていなかった。既に過激なハードコアをやり切っているので、立ち位置としては難しさがあるのは理解出来る。

 どちらかというとダービー対クリスチャンに向かってしまっていたので、スワーブとしては割を食ってしまったが、ウェンブリーに出られているだけでもトップとして認められているので、次の抗争に期待したい。
 平均的良試合。
評価:***1/4

 

クリス・ジェリコ(w/サミー・ゲバラ)対ウィル・オスプレイ(w/ドン・キャリス)

 前日のRevPro「11 Year Anniversary Show」にてわざわざ襲撃スキットを仕込んだほど、望んでいた一戦。

 ジェリコが今のコンディションで出来ることを確実に遂行し、オスプレイはジェリコに配慮しながら、少しハイフライング要素多めで反撃し、受けでもいつも以上にデフォルメした受けで対応。

 今のオスプレイは、この様なレジェンドマッチも難なくこなせますというショーケース。ヘビー級の体躯にしたことにより、貫禄があるのは、こういう試合では非常に効果的に映る。今後のストーリーの為に、サミーの介入なども絡めながらも、ホームのオスプレイが完勝と見られてもおかしくはないほどクリーンにフィニッシュ。内容も伴った上で、故郷に錦を飾る激勝でした。
 好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4

 

AEW世界トリオス王座戦-ハウス・ルールズ
ハウス・オブ・ブラック(c)(マラカイ・ブラック、ブロディ・キング&バディ・マシューズ)(w/ジュリア・ハート)対ジ・アクレイムド(マックス・キャスター&アンソニー・ボーウェンス)&”バッド・アス”ビリー・ガン

 HoBの入場でのトレードマークの"ランタン"持参によるブレイ・ワイアット追悼。いつもなら場内が完全に暗転するところだが、客席が携帯のライトを光らせていたのを映していたのは、AEWからの追悼の意である。

 試合は、ジュリアに対する攻撃という見せ場はあったが、1番は大ベテランビリー・ガンがスケールの大きい動きを見せ続け、アティチュードエラを生き抜き、今も現役として活躍し続けている所以を示していた。WWE、いやWWF戦士、元DXの凄みを堪能出来た。

 平均より上。
評価:***

 

AEW世界王座戦
MJF(c)対アダム・コール

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 プレショーでROH世界タッグ王座を獲得した両雄がこの日2試合目で激突。どこか亀裂が走るのではという空気感を持ちながらクリーンに、レフェリーのプライスを交えながらファニーな要素も含めた試合構築を行う。

 基本的には1戦目の内容を踏襲し、世界一情けない顔で笑わせるMJFのトペスイシーダなどハネた攻防を流用し、手堅さを見せつつも、鉄階段へのブレーンバスターや実況席でのツームストーンに得意のパイルドライバー系の攻撃も連発と、終盤に行くにつれ、スケールを伴った派手な攻防も増えていく。

 ダブルクローズラインでダブルピンはやりすぎと取られても仕方はないとはいえ、ストーリーが非常に上手く行っている中での再戦ということで、何をやっても上手く回る状態に持ち込めており、加えて助演男優賞に挙げたいロデリックの介入も適切な形で実現。

 プライスが誤爆に次ぐ誤爆でボロボロになる活躍を見せ、クライマックスにかけては、特にこれまでのそれぞれのキャラクターと行動、そして現在の友情関係の機微を巧みに演じた2人の演技力の高さを堪能。王道の裏切りや介入によるフィニッシュではなく、AEWだからこそ出来る描き方のままで走り切った拘りも賞賛すべき点でした。

 非常に満足度の高い好勝負。文句無しに好勝負。
評価:****1/4

全体評価:9.5