世界のプロレス探検隊

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新日本プロレス The New Beginning In Osaka 2024 Review ザック対ブライアン/64分金網デスマッチ/オカダ対棚橋ラスト

新日本プロレス(NJPW)

The New Beginning In Osaka 2024 2/11/2024

 

オカダ・カズチカ対棚橋弘至

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 棚橋は旧テーマ、コスチュームや髪型もライバル期を思わせる出立ちで特別仕様の登場。12年前にレインメーカーショックが起きたこの地で、最後の激突。
 試合は、全盛期に比べると流石にコンディションは落ちている棚橋だが、送別試合ではあるもののヒール調の振る舞いも見せたオカダのフォローも受けながら、このカードの代表的な切り返しも見せるなど、ノスタルジックに浸らせる攻防を披露。

 時間も15分程度、キレやペースもまったりではあるものの、重厚感は備わっており、思い出に浸るにはクオリティを十分満たしている。今の棚橋で出来る事は全てやり抜き、特別感をキープ。最高の送別試合を作り出しました。

 好勝負。
評価:****

 

ブライアン・ダニエルソン対ザック・セイバーJr.

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mdk2727.hatenablog.com

 


 世紀のテクニカルレスラーNo.1決定戦から半年も経たずに再戦。この試合でも一時も目を離すことが出来ないグラウンドテクニックの応酬で、掴みは抜群。気を許せばあっという間に1本奪われる。いつ終わってしまうかわからない緊張感溢れる攻防の数々で空間を支配する。互いに数手先以上の未来を読み合っているかのようなこの2人にしか出来ない攻防の数々。

 暴虐龍ブライアンのドミネイトは、腕や脚を極めるといった基本技を中心に行う。変幻スタイルのザックに対し、そのスタイルに完璧に対応しながら、比較的オーソドックスな極め方で制圧することにより、精神的な揺さぶりも行っていくのも憎い。違う手法ではあるが、かつてPWGでスーパー・ドラゴンが見せていた精神的にも追い込む術を、リストロックやグラウンドテクニックで成し遂げてしまう。

 サブミッションという一つの巨大な軸がある一方、もう一つは、ザックをローカルのトップから世界のトップに押し上げるというストーリー・テリング。ザックは既に巨大な存在ではあるものの、さすがにブライアンほどではない。「お前、オカダやオスプレイに変わって団体を背負えるのか?」というブライアンと団体側の挑戦状が見える。

 その自らが敷いたレールに沿って、ブライアンは部分破壊と厳しい打撃の数々で強大な壁として君臨。ブライアン・ダニエルソンのことを嫌いな人はおそらくいない。むしろ好きな人の方が多いはず。しかし、それでもこの試合を何とかザックに勝って欲しい。そう思ってしまうほど感情移入させる。世界に比べれば大人しい日本の観客でさえも、熱狂の渦に落とし込む。
 キラーモードのブライアンに滅多打ちにされながら、文字通りボロボロになりながらも勝利を取りに行く。かつてウォルターにボコボコにされながらも立ち上がり続けた、本来持っていたが、日本マットに参戦してからは見せる必要がなかったアンダードッグ性が遂に解き放たれる。
 サブミッションを執拗に狙いに行くストーリーはある意味ブラフ。グラウンド偏重の綺麗な試合内容になるのではと思わせておいて、最終的には泥臭く、厳しく、食うか食われるかの「闘い」の部分をフィーチャーした試合内容。まさに彼らなりの「闘魂」を描いていた。
 ビジョンと技術力が共有出来ていなければ到達出来ない高みである。崇高なる神々の戦いでありながら、相手を屈服させてこそ勝利を得ることが出来るという戦いの根底にある部分も忘れない。これぞ「コンバット・シアター」。
 AEWでの一戦よりもより玄人好み的ではあるものの、TVプロレスを気にすることがなく、そしてザックのホームである日本でこそ実現出来た内容。
 テクニカルレスラーNo.1決定戦という謳い文句は彼らに適用するのはおこがましい。それよりも遥か高い次元に存在しているプロレスリング。最高峰の技術と最高峰のストーリー・テリングが合わさった比類なき名勝負。真冬の時期に行われたのにも関わらず、会場が真夏の様な暑さになるほどの熱気でした。

 歴史に残る5スターマッチ。
評価:*****

 

ドッグパウンドケージマッチ
BULLET CLUB WAR DOGS(デヴィッド・フィンレー、ゲイブ・キッド、アレックス・コグリン、ドリラ・モロニー、クラーク・コナーズ)(w/外道)対ユナイテッド・エンパイア(ウィル・オスプレイ、HERALE、ジェフ・コブ、TJP&フランシスコ・アキラ)

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 金網は、WWEやAEWが使う様なものではなく、かつてのROH vs CZWのCage of Deathで使われた様な高さはないが場外が広く使えるもの。結果的に見やすく、1リングのため、試合が作りやすい。まずは、この選択が一つ目の正解。

 

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CZW Cage of Death 7: Gage, Pain & Zandig vs. Necro, Klein & Joker (CZWstudios.com) - YouTube

 

 次に、オスプレイとフィンレーという大将を1番手に配置したこと。結果的に64分戦い抜くこととなったが、ポイントゲッターであり、バランサーであり、ハードバンプも取れる。オスプレイほどの実力はさすがにないと目されていたフィンレーだが、日に日にヒールが板に付いてきており、状態の悪いメンバーや慣れていないメンバーに変わって、印象に残るスポットには常に顔を出しており、リーダーとしてもリード。彼の大車輪の活躍がこの試合を締めることに成功した要因でもある。
 オスプレイ×フィンレー、コナーズ&モロニー×Catch 2/2、ヘナーレ×ゲイブのストーリーラインを軸に展開。正直長いけれども、メンバーの配置、スポットの配置、凶器の使い方、出す順番の妙もあり、長時間ダレることはなく、手を変え品を変えインパクトを与え続けたのはあっぱれ。WWEの様な完全管理プロレスではないものの、起承転結がしっかりと考え抜かれた試合。

 前振りをした割には大きなインパクトにはならなかったニューマン絡みのシーンやそもそもハードコアが余り得意ではないTJPの変身などは、オスプレイの所属ラストという究極のお祭りだからこそ許容される。
 椅子や竹刀、テーブルは予想が付いたものの、有刺鉄線テーブル葬、大量の画鋲、絞首刑、場外ラダーへのパイルドライバーといったクレイジースポットを多数用意し、更にはリングの板剥き出しまで行い、デスマッチ感をとことん打ち出したのも見事。流血も多数、テーブル破壊も複数回かつド派手なのも良い。STRONGはともかく、特殊形式不毛の地新日本・日本大会でここまでやり切った演者のハードワークとここまで許した裏方側に賞賛を送りたい。
 全体的に活躍していない選手はいない構成となっているものの、オスプレイ&フィンレーのリーダーズは勿論のこと、ハードコアなスポットを担当し続けたコナーズ、ゲイブ、ヘナーレ、アキラの奮闘は目を引き、コブの様な状態が悪い選手も、出来る限りの活躍をしていた。それだけの価値があったグランドフィナーレ。
 歴代のウォー・ゲームス形式の中でも屈指の内容。初期ROHを彷彿させるUSインディの過激度、物量押しの部分と通常技もしっかり行い、丁寧に作る部分が絶妙なバランスで混ざり合った一戦。他団体の焼き増しにならず、アイデンティティを持った試合であったことが何よりも素晴らしい。セミの年間ベスト級の名勝負すらも消し去る程の衝撃を与えてくれました。

 名勝負。
評価:****1/2

全体評価:9.5