世界のプロレス探検隊

WWEAEW新日本インディ他、国内外問わずプロレスのマッチレビューを行っています。

WWE SummerSlam 2023 Review イヨ・スカイ悲願の女子王座戴冠/"Tribal Combat"ローマン・レインズ対ジェイ・ウーソ他

WWE SummerSlam 2023 8/5/2023

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ローガン・ポール対リコシェ

 メガスターを使ってドラゴンゲート、ルチャ、インディ要素満載のハイフライングメインの試合をさせたオープニング。ローガンの華とキャラクターありきではあるものの、その道のトップランナーであるリコシェを迎えて派手な攻防を連発。
 とはいえWWEスタイルなので、スピード感はいまいちで、単発気味。TVマッチならもっと疾走感を上げる事が出来たが、ローガン・ポールなのでそこはやむなし。想像よりは時間も長く与えられており、リコシェの活躍機会も多かった。
 まあまあ良い試合。
評価:***1/2

 

ブロック・レスナー対コーディ・ローズ
 このカードであれば予想通り、レスナーがコーディを圧倒し、コーディのセルの凄さを楽しめる展開に。異なるのは予想に反して、終盤のボリュームは厚めだったこと。

 レスナーの猛攻を受け切ったコーディが、鉄階段や剥き出しターンバックルを活用しながら波状攻撃を仕掛けて反撃。その反撃に対するレスナーの受けやダメージ表現も適切。試合後の演出も含めて、この抗争のレスナーは他の時とは違う心意気を感じている様に見えた。

 2試合目の為、演出面は抑えられているが、クリーン決着も含めて予想を裏切られたことと、トップスター対決のスケール感は確保されている。豪華過ぎるアンダーカード。中々良い試合。
評価:***1/2

 

WWE IC王座戦
グンター(c)(w/ルドヴィグ・カイザー&ジオヴァンニ・ヴィンチ)対ドリュー・マッキンタイア
 動けてハードヒッティングも得意なビッグマン対決。厳密にいうとマッキンタイアは、ハードヒッティングにも対応出来るオールラウンダーなのだが、この試合でもグンターに引けを取らず、肉弾戦に足を踏み入れていく。

 グンターのチョップの破壊力と一つ一つの攻防の破壊力は、低調だったロンダ対シェイナの流れを払拭するには申し分なし。介入を使わずに、実力でマッキンタイアを越えさせたのは、更なるプッシュに向けた準備といっても良いでしょう。

 確かな技術、スタジアムサイズをも物ともしない圧倒的な迫力を兼ね揃えた比類なき肉弾戦。最高のゲームチェンジャーとしてHHHがグンターを信頼し切っているのが改めて理解出来る一戦。好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4

 

WWE世界ヘビー級王座戦
セス・”フリーキン”・ローリンズ(c)対フィン・ベイラー

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 2016年のサマースラムにて、同カードで行われた初代ユニバーサル王座戦。ベイラーが初代王者に輝くも、試合中の負傷で即返上に追い込まれたことを、7年後同カードで復讐を果たすべく、ベイラーが肩〜腕を攻め込む展開。乱戦ベースの入りから部位破壊にスムーズに繋げた上で、同時進行で疾走感も伴った一進一退を軸に発展させるのは見事。

 ストーリーと歴史、そこに技術を織り交ぜた確かな熱戦。そこにお待ちかねJD介入、MITB権利を持つプリーストを絡めることでスリル感を増幅させる。絶対来ると分かっていても確実に魅せるJDの力は格別。

 セス、ベイラー、プリースト三者の高い演技力も見事。ますます今後が楽しみになる終わり方。試合をプラン通り完遂したことで、ある意味7年前の無念を晴らす事が出来たといっても良い好勝負でした。
評価:****

 

WWE女子王座戦-トリプル・スレットマッチ
アスカ(c)対シャーロット・フレアー対ビアンカ・ブレアー
WWE女子王座戦
ビアンカ・ブレアー(c)対イヨ・スカイ(w/ベイリー)

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 セスとベイラーで燃え尽き、メインの為にトイレ休憩、体力温存している観客達に、攻防メインの3ウェイは厳しかった。 

 ビアンカ、アスカが女王シャーロットを立てに立てる試合展開。それ自体は悪くないが、全てを兼ね揃えた世界の女王シャーロットが唯一持っていない実力実績に見合った人気。その人気を問われる状況下で試合をしなければいけなかったのが苦しく、それを下支えしたのが最も人気がある女子レスラーの1人であるビアンカ。

 攻防も良く繋がっており、身体能力モンスターが男子を超える迫力を示していたが、盛り上がりには繋がらず。イヨキャッシュインに向けたビアンカのワーク負傷も予定程は熱量を生み出せず、結果的にはアスカの毒霧攻撃が1番印象的なシーン。

 キャッシュインからの王座戴冠がなければ、雰囲気的には結構危うかったのが正直な所。平均的良試合。
評価:***1/4

 

 

アンディスピューティドWWEユニバーサル王座戦-トライバル・コンバットマッチ
ローマン・レインズ(c)(w/ポール・ヘイマン)対ジェイ・ウーソ

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 現代のクリックは、アノアイファミリー。
 次のフェーズは身内を対角線に立たせて、自分がいる内に、タッグ屋ではなくシングルのトップスターに押し上げる。ウーソズとAEWに残りタッグ屋であることを選んだヤングバックスと対照的なのが興味深い。ただWWEならばシングル戦線でトップに立てなければ真のトップにはなれない。
 ブラッドライン前後、そしてサミとのストーリーを経て、個人としてもかなりの支持を受ける様になったジェイ。2020年のレインズとの抗争でも、レインズが押し上げることでシングルレスラーとしての可能性が見えていたが、この試合でもトップフェイスとして躍動出来ている。並のレスラーが相手ならばそれで十分なのだが、相手は業界の象徴ローマン・レインズ。レインズの存在感に比類することは中々難しく、レインズのコントロールの中で躍動するという印象。

 トライバル・コンバットという名のノーDQマッチで、本来ならここで血の力を借りられるならばその差を埋めて、よりドラマチックにジェイを映す事が出来るが、WWEでそれは不可能。その代わりに、様々な凶器攻撃、バリケード破壊や客席での乱戦を含む場外戦、度重なるソロの介入に複数回のテーブル破壊で試合そのものを押し上げる形にスイッチする事で好転させていた。

 レーティングを気にする必要がない世界で戦っているからこそ出る余裕と重厚感。尻上がりに良化していくのはWWEスタイルでありレインズ政権の持ち味。ソロとの抗争の予兆を匂わせ、ジェイ歓喜の戴冠かと思わせた所でジミーの裏切り、ヒールターン。トップ王座戦での兄弟によるダブルクロスは、ハーディーズを彷彿とさせる衝撃の展開。ある意味これしかない終わり方で盛大に締めくくり、色々な意味でサモアン・ダイナスティによる統治はこれからも続いていく事を示唆する結末でした。

 現時点でcagematchではかなりの低評価で、レーティング至上主義のファンには受け入れにくいWWEらしいハードコアだけれども、レインズの圧倒的なスターパワー、ジェイを押し上げるストーリー、ハードコアや介入を含むエンタメ度の高さと4大大会のメインに相応しい激戦でした。好勝負。
評価:****

 

全体評価:9+