世界のプロレス探検隊

WWEAEW新日本インディ他、国内外問わずプロレスのマッチレビューを行っています。

AEW Full Gear 2022 Review ジョン・モクスリー対MJF/エディ・キングストン対秋山準他

AEW Full Gear 2022 - Zero Hour 11/19/2022

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エディ・キングストン対秋山準

 Rampageの試合後のプロモ、そして試合前後のプロモで勝負有り。試合自体も対戦をずっと熱望していた秋山と四天王プロレスへのリスペクトがこれでもかと感じられる重厚な肉弾戦となっており、秋山がリビングレジェンドとして再設定されていた。

 完全にメインショーレベルの内容だが、プレショーのメインとしてメインショーにバトンを渡す役割としてはこの上ない。メインショーを軽々喰って行くのは、千両役者エディ。夢を叶えたエディ•キングストンの大立ち回り。

 試合前、試合、試合後のマイクと涙なしには観ることは出来ないプロレス史に残るエモーショナルなひととき。エディ•キングストンが死なないで本当に良かった。エディ•キングストンを好きで本当に良かったと思える歓喜の瞬間です。少なくてもプロモ・オブ・ジ・イヤーは決まり。

 好勝負。
評価:****

 

AEW Full Gear 2022 11/19/2022

 

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スティール・ケージマッチ
“ジャングル・ボーイ”ジャック・ペリー対ルチャサウルス(w/クリスチャン・ケイジ)

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 エスケープなし、完全潰し合いの金網戦。通常技ではオープニングらしい疾走感を出し、早々に金網攻撃を入れてJボーイは大流血。場外戦や凶器使用も積極的に行い、豪快かつ苛烈なスポット連発。それでいてスポットのみにならないのは、Jボーイの流血による新鮮さや、一つ一つの攻防が良質だから。

 Holy Shitなシーン連発、メインイベント級の死闘は、金網天辺のスーパーダイブで豪快にフィニッシュ。素晴らしいオープニングでした。

 文句無しに好勝負。
評価:****1/4

 

AEW世界トリオス王座戦
デス・トライアングル(c)(PAC、レイ・フェニックス&ペンタ・エル・セロ・ミエド)(w/アレックス・アブラハンテス)対ジ・エリート(ケニー・オメガ、マット&ニック・ジャクソン)(w/マイケル中澤&ブランドン・カトラー)

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 シカゴの暴君とピットブルに殴られ噛みつかれた挙句出場停止処分を下された散々なエリートの面々が遂に復活。ドラマ「スーパーナチュラル」オマージュの入場から盛大に登場。

 試合は、PAC×ケニー、ルチャブロズ×エリート、そしてトリオでと全ての組み合わせにおいてライバル関係あり、相性も抜群と、実力が最大限発揮出来る環境が揃っており、後はエリートのコンディションのみだが、ケニーもAll Out前は万全ではなかったが、今回はコンディション万全で仕上げており全快。となれば当然最高峰のトリオスマッチが出来上がる。

 独創性、疾走感、完成度共に100点満点。バックスとルチャブロズだけなら既視感が強いものの、旗揚げ当初のライバルであるケニーとPACがいる事でかなり景色を変えてくれるのは強い。近頃行ってきたハンマーを使うくだりも、予想を遥かに超えて見事に伏線回収出来ていたのも好ポイント。

 他の追随を許さない極上の名勝負でした。芸術品。
 文句無しに名勝負。
評価:****3/4

 

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AEW TBS王座戦
ジェイド・カーギル(c)(w/キエラ・ホーガン&レイラ・グレイ)対ナイラ・ローズ(w/ヴィッキー・ゲレロ&マリーナ・シャフィール)

 


 試合自体は正直クールダウンのポジションだが、ナイラのキャリーで何とか形になっていた。ジェイドはスカッシュもしくはドミネイトしやすい相手じゃないと活きないのはまんまゴーバー。それが魅力だが、そろそろ次のステップに行きたい。WWEに行く必要はない程セレブではあるものの、WWEの管理プロレスの方が活かしてくれそうな気はする。

 ということでメインは入場。ナイラ軍のエディ•ゲレロトリビュートとジェイドのサンダーキャッツコスプレ。
評価:**3/4

 

ROH世界王座戦-フェイタル・4ウェイマッチ
クリス・ジェリコ(c)対ブライアン・ダニエルソン対サミー・ゲバラ対クラウディオ・カスタニョーリ

 ROH伝統の4コーナーズ・マッチではなく、普通の4ウェイではあるものの、互いのチーム同士によるタッグ戦から仲間割れとなり、それぞれの組み合わせで見せ場を作っていく展開。

 王道ではあるものの、演者が超一流揃いなのと、飛び道具を持つサミーとクラウディオが大事な所で強大なインパクトを生んでくれるのは強い。試合時間もしっかり取り、これまでのストーリーと試合の中で描かれるストーリー、両方織り込まれているのが強い。

 ブライアンとクラウディオがいながらも、ジェリコとサミーの組み合わせがメインとなっていくのは、ジェリコの支配力の高さを物語っているが、確実にアクセントを超えて基軸として機能していたのは流石ジェリコというべきか。

 Dynamiteなら余裕でメイン級の激戦となりました。好勝負。
評価:****

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サラヤ対Dr.ブリット・ベイカーD.M.D

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 5年ぶりに首の負傷からリング復帰を果たしたサラヤ。クールな入場テーマとリングギアの後押しもありスター性を放ち続けている。

 試合に関しては、AEW随一の生え抜きスター、ベイカーがキャリア1番のビッグマッチを迎える中で、首攻めとヒールプレイを軸に堅実に構築。これがメインならもう少し派手な構築となるはずだが、ミッドカードということで、石橋を叩いて渡る様な形に。 

 それでも場外でのネックスクリューなど厳しい攻めを見せ、サラヤがダウンベースの受けで応える流れは的確。終盤以降もペイジ・ターナー、PTO(ペイジ・タップ・アウト、ランペイジ)とサラヤの持ち技フルコースがメインとなり、まさにサラヤ復活祭となっていた。

 女子部門最大のメガスターの復帰戦であり、負荷をかけ過ぎることも難しい中で、ベイカーが一歩引きながら、試合を作れたのは成果。一回で終わらせるには勿体無い上々の滑り出し。この抗争は2人にとってレベルもスケールも向上出来る貴重なものとなるでしょう。

 女子部門がマディソン•レイン体制となってからはベイカー対ロサの様な強烈な試合はないものの、試合もストーリーもじわじわと安定してきているのは評価したい。

 中々良い試合。
評価:***1/2

 

 

ノーDQ&ノーカウントアウト
ジェフ・ジャレット&ジェイ・リーサル(w/サンジェイ・ダット&サットナム・シン)対スティング&ダービー・アリン

 「WCW Halloween Havoc 2000」JJ対スティングのセルフオマージュとして、偽スティングを引き連れたJJ。ダービーとサットナム•シン以外は皆TNA関係者という事もあり、JJとスティングが向き合えばTNAチャントが飛ぶというまさかの展開に。

 ダービーのラダーからのスーパーダイブを受け止めるシンやダービーばりに張り切るスティング、JJのジャレットウォークにギターショット、下支えをするリーサルと狙い通り。最後はスティングの大立ち回りからそれをサポートする愛弟子ダービーと見せたい画は揃える事は出来た。

 平均より上。
評価:***

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AEW暫定女子世界王座戦
トニー・ストーム(c)対ジェイミー・ヘイター

 


 トニー・ストームやビー・プレストリー、そしてブリット・ベイカーの影に隠れ、永遠のナンバー2だったジェイミーが、観客の支持と仲間のレベル、ベイカーの援護を受け、日本時代からのライバルトニーから遂に勝利とベルトを奪うという感慨深い試合。 

 ヒールなのに圧倒的な指示を受けるジェイミーという状況と長時間かつ濃密な大会の反動を受けて、盛り上がりにくい状態を、無駄のないテンポの良い攻防を続け、前述の介入シーンを多めに挟む事でスリル感を演出。

 強引ではあるものの、印象に残らないよりは良い。プッシュを嘱望され続けたジェイミーの歓喜の瞬間。それに見合う成長曲線は描いている。サラヤやトニーを巻き込むのか、ベイカーとの抗争に入るのか、勢いがある内にプッシュを強めてスターにしたいところ。

 中々良い試合。
評価:***1/2

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AEW世界タッグ王座戦
ジ・アクレイムド(c)(マックス・キャスター&アンソニー・ボーウェンス)対スワーブ・イン・アワー・グローリー(c)(スワーブ・ストリックランド&キース・リー)

 

 ストリックランドとキースの不仲が完全に亀裂となった試合。セミ抜擢だが、その不仲ストーリーとアクレイムドの攻めるパートが多い事が功を奏さず。個々は魅力十分で良いものの、ストリックランドのコントロールが効いていないとまとまらない弱点を露呈。キャスターのシナムーブなど小ネタもあったが、点が線にならなかった。

 平均より上。
評価:***

 

AEW世界王座戦
ジョン・モクスリー(c)(w/ウィリアム・リーガル)対MJF

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 濃密だった名大会もメインを迎える。モクスリーがWWEディーン•アンブローズモードを打ち出し、期待のライジングスターMJFのトップ到達を後押しする大人の対応。CMパンクに続き、悪い事は何一つしていないのに、大ブーイングが飛び、決して美味しくない仕事を団体の為未来の為に遂行するモクスリー。

 フェイスヒールが混沌としている中、オーソドックス、クラシカルとも評したくなる程の典型的なアメリカンプロレスは、MJFが活きる土俵。モクスリーがやりたい内容、スタイルの試合ではない様に見えるものの、相手の土俵でも最高の仕事をする。これぞ仕事人。

 MJFも試合数が少ないのが嘘のように、毎回確実な仕事をやり遂げる、その完成度が26歳とは思えない。得意のヒールプレイを余り出せない、むしろフェイス的な振る舞いを見せなければならない中でも、疑似フェイスとして不足が一切ない働きを見せ、本当にフェイスとしてやり続けるのではないかと信じ込ませる事に成功。フィジカル面、アクション面でもモクスリーのレベルに難なく付いて行っているのも恐ろしい。

 後は自ら引き出す立場でどの様に活躍出来、相手を光らせる事ができるか、課題はそれのみ。その他は非の打ち所がない選手に仕上がっている。テーブル破壊に2度のレフェリー失神、そして待ってましたのリーガルの裏切りで最後に相応しい衝撃を与えたメインに相応しい激闘。

 悪魔と名乗りつつも叩き上げスーパー・エリートであるMJFが、業界随一の悪党とどの様に化学反応を起こしていくか、モクスリーやBCCの強烈な復讐劇も含めて、今後が楽しみになる好勝負です。
評価:****

全体評価:10