世界のプロレス探検隊

WWEAEW新日本インディ他、国内外問わずプロレスのマッチレビューを行っています。

AEW Double Or Nothing 2022 Review アナーキー・イン・ジ・アリーナ戦/CMパンク対ハングマン・ペイジ他

AEW Double Or Nothing 2022 5/29/2022

 

www.fite.tv

 

 

マクスウェル・ジェイコブ・フリードマン対ウォードロウ

youtu.be


 サーシャ・バンクス&ナオミの試合ブッチ事件のパロディなのか、本当に揉めているのかは定かではないが、殆どスカッシュに近い試合を、ここまでの注目試合にしたのはさすがMJF。若き千両役者は違う。HBKにおけるディーゼルの様に、ただのボディーガードをダイヤモンドに変えてしまう魔法を施し、見事出荷。

 ウォードロウもパワー・ボムを放つだけの仕事とはいえ、デカくて動けてイケメン。表情の訓練もされており、アメリカン・プロレスを体現する貴重な存在なので、このまま突っ走って欲しい。MJFは、2024年1月に契約が切れるそう。この日にちを覚えておいて欲しい。そこに向けて何が行われるかが楽しみになる。AEWからWWEに移籍した前例やベルトを持ったまま辞めたけれども戻ってきた前例も近くにいて、皆MJFを寵愛している。

 MJFとウォードロウに関してはWWE&AEW間のマネーゲームになると思われるので、両方を追うとより一層楽しめる。ストレッチャージョブの後の展開も気になる所。Forbidden Doorの後に注目したい。中々良い試合。
評価:***1/2


追記:次のDynamiteではMJF版パイプボム炸裂。賛否両論あるとはいえ、偉大なるストーリーへの幕明けには間違いなし。

 

 

AEW TBS王座戦
ジェイド・カーギル(w/The Baddies)対アナ・ジェイ
 ランペイジで良い試合を残した事で選ばれた再戦。動きも安定してきており、単発では良いものが光るが、介入や新加入のデビュー等を詰め込んだが故に、注意が逸れてしまう。それを修正したり、勢いを増大させたりするところまでは行かないので、トータルで見ると厳しい評価になるのは無理はない。

 しかし、この位置でスタットランダーやアティーナを使うには惜しいので、確かに人選はアナが妥当でしょう。アナはいつダーク・オーダーの縛りが外れて、元相方タイ・コンティやジャングル・ボーイとのストーリーが解禁となるのかが更なる飛躍の鍵。

 平均レベル。
評価:***

 

 

デス・トライアングル(PAC、レイ・フェニックス&ペンタ・オスクーロ)(w/アレックス・アブラハンテス)対ハウス・オブ・ブラック(マラカイ・ブラック、ブロディ・キング&バディ・マシューズ)

youtu.be

 トリオとしても極上、個々としても極上と本来持つ実力通りの濃密な攻防の連続、想定よりも少しズレても、個々のアジャストとパワーで完全に払拭してしまう内容。

 元タッグ王者ルチャ・ブラザーズの連携、PACとマシューズ、元WWEクルーザー級王者対決、遂に真価を発揮機会を得たマラカイ・ブラックの切れ味鋭い攻撃の数々と試合の中に、トリオ、タッグ、シングルと何通りもの世界最高クラスの攻防が詰まっている。

 最後、ロー・ブローのシーンで崩れかけた展開も、闇堕ちジュリア・ハート召喚のサプライズで完璧に払拭。個人的には今大会において、アナーキー戦と並んでお気に入りの試合です。好勝負。
評価:****

 

 

MOTY組が勝てば、スカイが王者の間、カザリアンとサミーはTNT王座に挑戦出来ない。
サミー・ゲバラ、タイ・コンティ&フランキー・カザリアン対Men of the Year(イーサン・ペイジ&スコーピオ・スカイ)&ペイジ・ヴァンザント(w/ダン・ランバート)
 フェイスヒールが混在しているカオスな中休み。マレフィセントコスチュームのコンティが悪女キャラクター全開で裏回ししているのが良く、盗んだBMFベルトを着用しているサミーと同様、団体1番のバッドカップルである事を示し続ける。

 デビュー戦となったPVZも、コンティの上手いサポートもあり、中々様になっていた。元UFC、MMAファイターも継続しているはずなだけに、スター性、フィジカル面では抜けているので、シングルも見てみたい所。後はベテラン達が印象的なスポットを残しながら上手く纏めてフィニッシュ。十分楽しめた試合。平均より上。
評価:***

youtu.be

 

AEW女子世界王座戦
サンダー・ロサ(c)対セリーナ・ディーブ

 業界屈指のテクニシャン対決。ロサは入場時に銃撃事件が起きたテキサスの学校の名前を書いたハートを持参し登場。

 優れたグラウンドのテクニックと落ち着いた試合運びで進めていく安定感満載の試合展開。停滞する事もなく、テンポ良く進んでいくものの、グラウンドやサブミッションをキーとする内容が、この前の試合のアリン対オライリーに試合展開が似ている部分もあり、また長時間の反動で中弛みもしている為、軌道に乗っていけなかったのは残念。

 その大きなハンデがあっても、テクニックと経験でまとめられるのはこの2人ならではだが、このカードをこれで終わらせるのは勿体無いので、メインカードとしてじっくり見てみたい。まあまあ良い試合。
評価:***1/2

 

アナーキー・イン・ジ・アリーナマッチ
エディ・キングストン、サンタナ、オルティズ&ブラックプール・コンバット・クラブ(ブライアン・ダニエルソン&ジョン・モクスリー)対ジェリコ・アプリエーション・ソサエティ(クリス・ジェリコ、ジェイク・ヘイガー、ダニエル・ガルシア、マット・メナード&アンジェロ・パーカー) 

youtu.be

 

youtu.be


 スタジアム・スタンピートを完全ライブ用にし、流血あり有刺鉄線ありとデスマッチ仕様にした一戦。ナチュラル・ボーン・キラーズの様にワイルド・シングを流しっぱなしにして乱闘を続けるニュージャックオマージュに、乱戦大得意なスター達、キングストン、モクスリー、ブライアンが縦横無尽に暴れまくる展開。ジェリコを筆頭にJASのやられっぷりややり返すときのヒールとしての絵作りも見事。サンタナ&オルティズと2Point0も脇役ではあるが、流血シーンにテーブル破壊と大きなスポットは与えられていて活躍。

 

 ただ要所は首領ジェリコが大立ち回り。モクスリー、キングストン、ブライアンそれぞれの強者に対峙し、見劣りなくやり切る姿はエンターテイナーであり、デスマッチファイター、さすがECWオリジナル。キングストンがジェリコを燃やそうとして灯油をかけ、何するんだとそれにキレたブライアンとの仲違い、モクスリーは有刺鉄線ボードに撃墜。キングストンとブライアンが奮闘するも凶器攻撃も活用したジェリコとヘイガーにやられていくシナリオも見事。

 今後のストーリーに繋げた上で、ヒール軍団JASが、狂犬スター軍団に勝つにはこれしかないという展開を描き切った。これぞAEWというべき大激戦。名勝負。
評価:****1/2

 

 

AEW世界タッグ王座戦-トリプル・スレットマッチ
ジュラシック・エクスプレス(c)(ジャングル・ボーイ&ルチャザウルス)(w/クリスチャン・ケイジ)対チーム・タズ(リッキー・スタークス&パワーハウス・ホッブス)対スワーブ・イン・ザ・グローリー(スワーブ・ストリックランド&キース・リー)
 長過ぎる大会、その前のクレイジーなデスマッチの後、メインの前という絶望的な状況。準備の事を考えれば、緊張感が切れるのも緊張し過ぎてしまうのも無理はない。ミスムーブ、攻防の崩れが目立ち、リズムが作れない。リッキーのアピールやスワーブ&キースの安定した攻撃で加点は作るものの、大きなうねりを生み出そうとした所で切れてしまうもどかしい形。JEがもう少しリードしたかった。

 JB、スワーブ、リッキーで試合を回して、巨漢達はスポット的に爆発するのが理想。経験値を積む為なので仕方がないが、短期間とはいえWWEの一軍にも登り詰めたキースに対して、ホッブスとルチャサウルスは少し劣る所が見え過ぎてしまったのは残念。

 まあまあ良い試合。
評価:***1/2


AEW世界王座戦
“ハングマン”アダム・ペイジ(c)対CMパンク

youtu.be


 業界最大手WWEの2/3は飲み込んだ業界最凶の蛇、CMパンクを、団体の顔となり躍進し続けてきたとはいえ、まだまだこれからのハングマンが飲み込める訳はない。レスラーとしての動きはハングマンの方が数段。パンクの全盛期も上の能力を持つハングマンだが、何をやってもパンクがバックショットを散々ミスしても、パンクの掌で踊り続けるだけという印象しか残らない。
 試合に至るストーリーが短め、そもそも今大会が長すぎるというハンデがある中、余計パンクのスターパワーのみが試合を観続ける意欲となってしまう。流石にメインを1番にする構成は心掛けたい所なので、トニー・カーンは修正を迫られるでしょう。

 老兵となりつつあるパンクがスターとしての輝きで何とかしてしまい、ハングマンを倒してしまった試合。パンク政権到来、団体の方向性も微調整が毎日の様になされている中で、ある意味今後のターニングポイントとなってしまう試合ではあるでしょう。

 好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4

youtu.be

全体評価:9