世界のプロレス探検隊

WWEAEW新日本インディ他、国内外問わずプロレスのマッチレビューを行っています。

AEW Review 2021 "世紀のドリームマッチ" ブライアン・ダニエルソン対鈴木みのる/スーパークリック対ダーク・オーダー

AEW Rampage #10 - The Buy In 10/15/2021
ボビー・フィッシュ対リー・モリアーティ

 部分破壊を含むグラウンドやサブミッション偏重の技巧派対決。スタイルが近いので、手が合うだろうと思って組んだら、やはり手が合いましたという一戦。正式契約したとはいえ、モリアーティは、まだ期待の若手位のレベルに設定されているので、もっと出来るのは言うまでもないが、フィッシュの老獪なテクニックに合わせながら、自らの持ち味も発揮。正式契約したとはいえ、まだインディ出場が多いままだろうが、今後どうAEWで存在感を見せていくかが興味深い。平均的良試合。
評価:***1/4

 

“アメリカン・ドラゴン”ブライアン・ダニエルソン対鈴木みのる

 「俺はやりたいことやる、やめたいことやめる。議論の余地なしお前もだろ?」とまるで互いに問いかけ合いながら、拳を交わすドリームマッチ。これをやる為にWWEを辞めた。そして辞めて良かった。これなのよ!と心の叫びが、表情に表れているブライアン。嬉しくて嬉しくて仕方がないのがこれでもかと伝わる。ブライアンのこれまでの道のりを思い起こせば、それだけでお腹は一杯なのだが、それは鈴木みのるも同じこと。G1にもエントリーされず、新日本本体では序列がかなり下がっている中での1人G1クライマックス中。己の価値を示すアメリカ遠征において、これ以上ない相手を用意され、これまでの相手よりも更にギアを数段上げた振る舞いを見せていた。

 この試合よりも強く、凄く、激しく死力を尽くしたハード・ヒッティングマッチはいくらでも溢れている現代だが、この試合よりもエンターテイメント性に優れたハード・ヒッティングマッチはほぼないといっても良いだろう。当然激しい打撃合戦や技術の高さを示すグラウンドの攻防がメインではあるが、両者キャリアを重ね、フィジカルの限界は見える中で、それを補って余りあるのは、空間支配力。難しい事をやっている様には見えないけれど、選ばれたプロレスマスターしか出来ない事をやっている。嬉しくて適当にチャントをして騒ぎ回る観客を、絶妙に乗せたり落ち着かせたりして掌に乗せ、普通の打撃の打ち合いすらも最高級の名シーンに昇華。観客だけではなく、画面の向こう側のファンも全て魅了する。

 みのるは、日本人に求められる表現力や立ち振る舞いを見せるが、それは日本人離れした表現力だからこそ海外の団体やファンが彼を求める。日本ではやり過ぎに映る表現も、アメリカではこれ位が丁度よい。鈴木みのるが何故今も尚USマット、世界中のリングで選ばれているのかが、モクスリー戦を超えて、気持ち良い程最高の形で表れた。スローになるシーンも全て画になる。選ばれた者同士の戦いでした。

 このカードを放送前にYouTubeで行い、演者にもファンにも時間を気にさせずに試合にのめり込ませた裏方の英断があってこそのこの試合。演者も観るものも全てがハッピーになる非の打ち所がないドリームマッチ。プロレス史に残る名勝負です。
評価:****1/2

全体評価:8.5

 

AEW Rampage #10 10/15/2021

ザ・バニー対ルビー・ソーホー

 フィッシュ対モリアーティ→ブライアン対みのる→パンク対サイダルという豪華な3試合の後で燃え尽きた観客を引き当て、完全に割りを食った両者だが、10年代中盤の米インディ時代で凌ぎを削ってきたベテラン同士だけあり、大技多め、場外での攻撃で派手目に調節しながら、手に汗握る一進一退の攻防を演出。

 その中で試合をコントロールするバニーの安定感は特筆もの。旗揚げ当初から重宝され続け、今や王者ベイカー以上に毎大会出続け、TVプロレス慣れしていない若手や新しく契約した選手の相手を担い、結果を残す。インディでトップの実績を残し、インパクトの女子王者としてPPVクラスの試合も多く行ってきたのは伊達じゃない。

 まだAEWファンには認知され切っていないルビーが1つ印象的な働きを残す為のサポートが出来た。地球上のレスラー全てが誰もやりたくない環境で、これだけの試合を残したのは立派。評価されるべき一戦です。平均的良試合。
評価:***1/4

 

AEW Dynamite #106

Saturday Night Dynamite 10/16/2021
スーパークリック(アダム・コール、マット&ニック・ジャクソン)対ダーク・オーダー(ジョン・シルバー、アレックス・レイノルズ&イービル・ウノ)

 PWG印のフェイスヒールの楽しさと華やかな連携の数々が織り込まれた熱戦。仲直りしたダーク・オーダー3人の見せ場をそれぞれ作り、あわやというシーンまで持っていくも、キッチリ形勢逆転し格の差を示し勝利する。カード通りの楽しいトリオスマッチ。あえて外しにいく以外は外れるわけがない。中々良い試合。
評価:***1/2

 

全体評価:7