世界のプロレス探検隊

WWEAEW新日本インディ他、国内外問わずプロレスのマッチレビューを行っています。

AEW Review 2021 アダム・コール対ジャングル・ボーイ/ソニー・キス対ジョーイ・ジャネラ他

AEW Dynamite #104 9/29/2021
アダム・コール対ジャングル・ボーイ
 

 JBの若さ溢れるラッシュを活かしつつ、序盤、中盤とじっくりと溜めて落ち着かせ、終盤でその爆発力が最大限効果を発揮する様なコールの試合構築力に惚れ惚れする内容。インタビューでも散々HBKの指導を受けたことが、WWEでの大きな収穫だったと語っていたコールが、緩急の利かせ方、スケールを大きくする手法を学んだ事を、見事に反映させたのがこの試合。

 インディやROH時代から、インサイドワークに長けている選手だったが、20分以下の試合だと、物量を詰め込んだファストペースの試合になりがちだったコール。それでも素晴らしい試合は作り続けていたが、やはりWWE、NXTで天下を取っただけあることを証明する様な働きぶり。同じ試合展開でも、格段にスケール感が上がっており、メジャー団体のプロレスを見せていた。一方ではパナマ・サンライズに代表される様に、インディ時代の良さは消してはいない。只、わかりやすくインディ・ガイだったコールの姿はもうない。

 ある意味かつてのコールの姿にも見えるJBは、JBらしく、コールにはない動きのキレや完成度、アンダードッグ性を示し、究極のベビーフェイスらしい姿を見せて貢献。フィニッシュこそダーティな要素があったが、それ以外はクリーンな大熱戦。NXTで進化を遂げたコールがAEWにそのままの状態でやってきたと思えば、恐ろしいものはない。メインイベンターの貫禄を見せた。好勝負。
評価:****

 

AEW TNT王座戦
ミロ(c)対サミー・ゲバラ(w/フエゴ・デル・ソル)

 今大会は、ブロディ・リーの地元ニューヨーク州ロチェスターでの大会とあり、サミーは、ブロディ・リーオマージュのコスチューム。しかし、一切感傷的にさせてくれないのが、究極のドミネイター・ミロ。サミーをおもちゃの様に投げ飛ばし、憎々しげに強さを誇示。投げ飛ばされる事でサミーの身体能力が活きる展開なのも良く、ミロはミロで最高に強さをアピール出来る。ヒールアピールとドミネイター・アピールを両立させ、客席からの「We Want Lana! No, We don't!」チャントにも応える余裕もある。

 コテンパンにやられ続けたサミーだが、劣勢を覆すだけの1発があるのがサミー。その場飛びのスパニッシュフライや、鉄柱越えのトペ・コンヒーロで一気に形勢を逆転出来るのが強い。TVプロレスとしてもライブプロレスとしても優秀な内容。構図としてはECWのライノ対スペル・クレイジー的ドミネイター対軽量級ハイフライヤー。その良さはありつつ、試合内容を格段に上げた形。終盤の一進一退の攻防も見事に嵌っており、ドミネイトだけではなく、ミロの表現力の高さが存分に発揮されているのもポイント。

 イラついたミロがターンバックルを剥がした所に、逆に打ち付けて、そこにセコンドに付いて、散々ミロに甚振られてきた親友フエゴ・デル・ソルの得意技トルネードDDTを持っていくチョイスも的確。必殺技をこれでも叩き込み、ミロの価値も損なわない、サミーの価値はとことん上げる。極上の王座交代劇をブロディの地元での特別な大会のメインというPPV級のプレッシャーがかかる大舞台でやってのけたのは感嘆の一言。

 大舞台をこれでもかと経験してきたミロの経験とキャリアハイを叩き続ける実力の高さが、サミーの爆発力と交わり、そこに親友フエゴを絡めたストーリーも合わさり生まれた好勝負。ストーリーメイクの大事さを思わされる一戦。ミロは、インパクトレスリングでエディ・エドワーズと好勝負を繰り広げ続けていた時期のボビー・ラシュリーを彷彿とさせる技巧派ドミネイターのトップスターとして君臨。今やレスナーよりもレスナー的な魅力も放っている。期間や防衛回数は決して長くも多くもないけれども、この前のエディ・キングストン戦、そしてこの試合といい、彼もメインイベンターの器である事を示した政権でした。好勝負。

評価:****

全体評価:8

 

AEW Dark #103 8/17/2021
ダンテ・マーティン対リー・モリアーティ
 

 地元ピッツバーグということとネームバリューはダンテ以上なので、ダンテよりも大きい歓声を受けたモリアーティ。動けば最高の才能を見せるダンテ。ハイフライングは世界最高クラスだが、それ以外はまだまだなので、モリアーティがタクトを握りつつ調整。腕攻めが得意なので、大会場のスケール感はまだまだ出せない所はあるけれども、技術の高さは発揮していた。唐突な丸め込みフィニッシュだったが、単なるスカッシュではなく、時間を与えたのは、AEWからのメッセージでもあるだろう。平均より上。
評価:***

 

AEW Dark: Elevation #29 9/20/2021
ソニー・キス対ジョーイ・ジャネラ(w/ケイラ・ロッシ)
 

 Dark戦線とはいえ、AEWの中で最もホットな抗争の一つである元バッド・ロマンス対決。2人の地元ニュージャージーでの激突ということで、序盤からフルスロットル。ソニーのビッグダイブに、ジョーイのアクシデンタルな流血で一気に心を奪われ、その後もロッシを上手く活用したジョーイの支配と、ソニーの爆発。ジョーイのハードパンプとエグい攻撃連発と久しぶりに持ち味が存分に出た戦いぶりに対し、ソニーも必死に食らい付くので、地元ニュージャージーのファンは堪らない。最後は丸め込みフィニッシュだが、まだまだ抗争を続けて欲しくなる程の熱量でした。

 既に本戦に出せる内容なので、決着戦はDarkではなく、DynamiteかRampageで盛大に行って欲しい。ロッシはセコンドとして抜群の存在感を放っていて、身体能力の高さはモンスター級。ジョーイのコンビが非常に嵌まっている。ここでヒールターンをさせて、おちゃらけ度を減らしたのは正解。自らもソニーもロッシも活かしていて、まさにWIN-WIN。ジョーイが復調傾向なのは本当に嬉しい限り。中々良い試合。

評価:***1/2

 

AEW Dynamite #105 10/6/2021
AEW世界王座#1コンテンダー-カジノ・ラダーマッチ
PAC対アンドラーデ・エル・イドロ対マット・ハーディ対オレンジ・キャシディ対ジョン・モクスリー対ランス・アーチャー対ジョーカー(“ハングマン”アダム・ペイジ)

 PAC→キャシディ→アンドラーデ→マットとアーチャー→モクスリーと因縁のある選手を上手く競わせながら、素早いスポット回しと凶器攻撃で進めていく形。キャシディがChikaraのトップテクニコを長らく務めていただけあるテクニックで、トップルチャドールのアンドラーデと完璧に渡り切っていた凄さもあり、PACは脳震盪を追いながらもハードバンプ役で貢献。中盤はアーチャーの見事なドミネイトで中締めした後、待ってましたのジョーカーであるハングマンが登場。
 フィリーを拠点としていた団体であるCZWやChikaraで活躍していたモクスリーやキャシディにもブーイングが飛び、歓声が一切ない状態という未だかつて無い異常事態を巻き起こしたハングマンの人気ぶり。ラダー上からのデッド・アイでのテーブル葬を繰り出し、ラダーやテーブルへの投げで過激度を上げ、ハングマンのライバルとしてモクスリーやキャシディを配置し、スリル感を演出した後は、ハングマンがキッチリ勝利しハッピーエンド。

 団体1番のトップベビーフェイスに押し上げたプランニングとストーリー作りの大勝利。ハングマン復活祭りとなった試合だが、その為に脇役として切れるカードが余りにも豪華過ぎて、しかもそのカードが脇役に徹してハングマンの帰還に華を添えた。ストーリー作りがいかにプロレスリングにおいて重要かを示した一戦でした。好勝負。
評価:****