世界のプロレス探検隊

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WWE SummerSlam 2021 Review ローマン・レインズ対ジョン・シナ/ベッキー・リンチ復帰

WWE SummerSlam 2021 8/21/2021

WWE RAWタッグ王座戦
AJスタイルズ&オモス(c)対RK-Bro(ランディ・オートン&リドル)
 ヘタレ感も出せて、強さも出せるリドルのキャラクターに、オートンが乗せられてしまう2021版ヘルノー、Xパック&ケイン的な凸凹タッグの魅力溢れる内容。オモスを引き立てつつ、要所はAJの上手さがキラリと光る。このメンバーなら短い時間でもオモスの良さも出せて、試合もしっかり盛り上げる。磐石のオープニングでした。

 平均的良試合。
評価:***1/4

 

WWE Smackdown女子王座戦
ビアンカ・ブレアー(c)対サーシャ・バンクス
→WWE Smackdown女子王座戦
ビアンカ・ブレアー(c)対ベッキー・リンチ

 ハウスショーに加え、昨日のSDまで姿を現さなかったサーシャが欠場。代打で現れたのがカーメラ。まさかサマースラムで、それで終わりはないと思ったら、登場したのは、ベッキー・リンチ!サプライズ登場の勢いそのまま、カーメラを排除した後、ビアンカを瞬殺!王座奪取という結末でした。

 確かにRRやWMを経て感動的な王座奪取、立派に王者として働いていた中でのこの結末は、女子革命、BLM的にもヘイトが集まるものだが、ベイリーの怪我、サーシャの出場不可という度重なるプラン変更で、サプライズを生める手段が限られていて、尚且つビアンカのベビーフェイスの賞味期限も近づいていた中で(ゴリ押しと言われてもおかしくない抜擢具合、本人も成り上がりというよりエリートタイプなので、活躍の反動でヘイトを買う可能性はあった)、この流れでヒールターンに向かうのであれば、ビアンカにとっては美味しくて、持ち味も出せる展開になるので、良い機会でしょう。処罰的なものではなく、ビアンカを更にスターにする為のチャンスであって欲しいです。

 

WWE RAW女子王座戦-トリプル・スレットマッチ
ニッキーA.S.H(c)対シャーロット・フレアー対リア・リプリー
 ヒールでもベビーフェイスでもない圧倒的な個のシャーロット。ニッキーはわかりやすいベビーフェイスだが、シャーロットもリアも2人ともヒールまではいかないダークヒーローという立ち位置で抗争を繰り広げてきた中で、明確な立ち位置が存在しないと、強さの権化シャーロットの存在感が全てを飲み込む。

 まだリアにはシャーロットに並ぶところまでは行っていないので、ただリアの存在感が霞むだけになっている。NXTでは女王でも、一軍では別の序列があるので、リアは我慢の時期。存在感はあり、動きも変わらず良いけれど、一軍でリアの成長を待てるかは不安材料。

 良くも悪くもひたすらシャーロットが目立つ展開の中、活躍していたのはニッキー。体格に勝る2人の受け手を担いながらも、元々愛される存在の上に、ヒーローギミックも支持を上げる作用を担っている。キャラクターだけではなく、元々凄腕の実力者だけあり、3ウェイの中でバランサーを担いながら、勝ちを見出せるレベルの的確な攻撃を見せていて、アンダードッグ以上の働きを見せた。NXTで行ったアスカとのラストウーマン戦に匹敵するグッドワークでした。中々良い試合。
評価:***1/2

 

エッジ対セス・ローリンズ

 エッジは、事前のプロモでも仄めかしていたThe Broodのテーマから現テーマのミックステーマで登場。これには心躍らせたファンも多いはず。未だ現役のギャングレルも喜んでいるでしょう。

 しかし、 試合前半はセスが優勢の展開。これ自体は悪くないものの、SDでお前を焼き尽くしてやると宣言して、The BroodのBloodbath/血の洗礼も浴びせた程の仕込み具合を考えると、ストーリーやプロモを回収出来ていないので今一つ。ラフな展開が一つくらいはあるべきでした。

 一転して後半は素晴らしい内容。雪崩式ネックブリーカーを転換点に、エッジの各種得意技攻勢、フォーリー戦を思わせる奈落式スピアーや妻であるベスのグランスラムに、セスはカウンター式ペディグリーと、持ち技奥の手も含めて大盤振る舞いの攻防は見応え十分。付加要素で特別なものはなかったが、セスがベースを作り、エッジが獰猛な表情芸とノスタルジックさを強く感じさせる攻撃で魅せる。この歳でここまで出来るのかという要素は、倍ぐらいの加点が付く要因。好勝負以上を付けるのも理解出来る。

 

 フィニッシュの隠し玉エッジュケーターから、クリップラー・クロスフェイスに移行し、最後は獰猛に絞め落としに行く姿は、今のエッジだからこそ相応しい画で、相手を焼き尽くすという宣言は、回収出来ている。

 ストーリーと前半の試合内容が合っていなかったので、この評価としたが、ビッグマッチにおいては、極端に外さなければ、序盤のクオリティなど特段気にする必要はないので、結果としては大成功といえる一戦でした。好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4

 

WWEユニバーサル王座戦
ローマン・レインズ(c)(w/ポール・ヘイマン)対ジョン・シナ

 新旧アイコン対決となったスーパーファイト。
 マテオ・ホブス対ジェイコブ・トレットではなくて、レインズ対シナ。

 序盤は、レインズのヒールワークとシナの丸め込み連続。ストーリーとプロモに乗っ取った形で、伏線回収はしているものの、この試合だけ見るファンは、ワイルドでもスピードがあるわけでもなく、スーサイドでもない攻防なので驚いたファンも多いでしょう。その後もレインズのヒールワーク対シナのダウンベースの試合運び。想定内ではあるが、可もなく不可もなく。シナがメインロスターならば、大きいスポットを一つ入れても良いが、そこまでは不可は掛けられないという事情もあるのか、レインズが尊大ヒールの振る舞いで乗り切る形となる。

 後半以降も続くシナの丸め込みは、シナが特段丸め込みに秀でているわけではないので、野暮ったかったが、得意のシークエンス、実況席破壊AAを含む大技連続であわや王座交代かというシーンとなると、他の試合にはないスーパーファイトならではの爆発力が光る。レインズが、ギロチンチョークを使える様になったのもアクセントとして効いており、この試合では、シナのブランクにより、ギロチンチョークを巡る攻防は少なかったが、前回の試合、シナがいた頃のレインズにはない点なので、景色を変える要素にはなっている。
 レインズが1年トップヒールとして団体を支えていたとはいえ、シナにブーイングが一切飛ばないのは、もうシナがハリウッドスター。大人気ピースメイカーとして見られているのが良く分かる試合。仕事は高レベルで遂行するプロフェッショナルな所を見せ、今受ける必要がないこの試合を良く受けたと感嘆するとはいえ、やはりレスラーとしてはやり切ったと思わせる箇所が随所にあり、最後も今のアイコンであるレインズに、真の意味で引導を渡したかの様な散り様。シネマティック・マッチだったブレイ・ワイアット戦以上に、プロレスラー・ジョン・シナの終わりが見えた試合でした。

 シナの方に目が行きがちな試合ではあるが、レインズは、フルタイムの現役レスラーとして、悪態を突きながら試合をしっかり作り、最後は俺がWWEだと宣言して締め括る。団体の象徴らしい叩き潰し方を見せました。来たるロック戦に向けて、次はまたも立ちはだかる猛獣退治。歓声は受けていたが、レスナーが老けすぎていて不安は残る。好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4


全体評価:7.5+