世界のプロレス探検隊

WWEAEW新日本インディ他、国内外問わずプロレスのマッチレビューを行っています。

WWE Extreme Rules 2021 Review ベッキー対ビアンカ/レインズ対"デーモン"ベイラー他

WWE Extreme Rules 2021 9/26/2021
     

WWE Smackdownタッグ王座戦
ウーソズ(c)(ジェイ&ジミー・ウーソ)対ストリート・プロフェッツ(アンジェロ・ドーキンス&モンテズ・フォード)

 ウーソズは安定した働きぶり。ジェイがシングルレスラーとして覚醒した事は反映せず、良くも悪くも兄弟タッグとしての姿を優先させている。よって相手の働き具合に左右されてくるが、今回はSPがキャリアベスト級の働き。

 直前のSDで、レインズ軍にリンチされ、テーブル葬で腹部を負傷する設定を付けたフォードが、攻めでは伸びやかなムーブを決め、受けでは、見事な痛み表現で試合に入り込ませる役を担う。この試合におけるフォードの見事な立ち振る舞いと、ダメージ設定が抜群の相乗効果を生み出す。そして凸凹タッグの強みを生かし、ドーキンスがクリーンハウス役を担って終盤へ。

 終盤は、SPがEVOLVEやNXTで磨いた連携技を多数披露。ウーソズのスーパーキック押しとの相性も抜群。ニアフォールにカットを注ぎ込み、鉄柱越えトペコンで大爆発。ありがちなダーティー・フィニッシュではなく、クリーンフォールではあったが、SPの格が落ちる事はなく、むしろ地位を確立出来る程の活躍でした。

 残念だったのは、観客の盛り上がりが、余りにも死んでいるので、もっと何倍も盛り上がるべき試合だったこと。EVOLVEでインディファンの反感を喰らいながら、様々なインディ選手達と切磋琢磨させた甲斐があったと思わせる活躍でした。  

 好勝負。
評価:****

 

WWE RAW女子王座戦
シャーロット・フレアー(c)対アレクサ・ブリス
 オハイオのハーレイ・クインからすっかりオハイオのラム会長となったアレクサが地元凱旋で大一番に挑む。AEWにそろそろ出てくるかもしれないプレイ・ワイアットの魂を吸い上げたものの、怪奇派ギミックマッチに別れを告げ、女王シャーロットの力を借り、レスラーとしての姿を見せたのが今回の試合。

 アレクサはどうしても小柄である点が、試合の幅を狭めており、それを打開するにはサーシャ程上手くするしかないのがネック。今回もシャーロットの補佐がかなり効いており、中盤はリバース・ゴリースペシャルに、ムーンサルトムーンサルト、スクールボーイからのシットダウン・パワーボムとフィアンセのアンドラーデスペシャル、しかもラ・ソンブラ要素強めと愛に突き進むシャーロットの独壇場ではあったが、終盤は、一進一退の攻防とアレクサの唯一無二の才能である表現力が上手く交わり、尻上がりに試合は良化。

 シャーロットが徹底的にヒール役になり、体格差が活きる様な攻防が多かったのも試合が良くなった要因。最後は人形リリーを上手く絡めて幕。試合後の一幕まで、攻防面とストーリーを見事に織り交ぜた良試合でした。記憶する限りではアレクサのシングルベストとなる一戦です。中々良い試合。
評価:***1/2

 

WWE US王座戦-トリプル・スレットマッチ
ダミアン・プリースト(c)対シェイマス対ジェフ・ハーディ
 売り出し中のプリーストが、WWEの重鎮2人の、何故WWEに長年居られるか、ジェフに関しては何故いつまでもどのマットでも求められる存在なのか、圧倒的な人気、華、それを支えるコンディションが光り、シェイマスはヒールとして試合をうまく回しながら、アピールで焚き付けて、攻防も見事に締める。今年の好調を依然としてキープ。

 2人がここまで冴え渡ると、プリーストでなくても、トップロスター以外誰が出ても苦しい。見事な働きぶりでした。ジェフを入れた決断が見事に嵌った一戦でした。

 中々良い試合。
評価:***1/2

 

WWE Smackdown女子王座戦
ベッキー・リンチ(c)対ビアンカ・ブレアー
 ベッキーが真っ白のコスチュームを着用している事が、今のベッキーを理解する大きなヒント。ベビーフェイスでもヒールでもないとインタビューで宣言していた通り、絶対的ベビーフェイスのビアンカと相対しているからヒールパートを担当しているだけで、相手をおちょくるとはいえ、悪い事は特にしていない。何者にも媚びず、己を貫く。ニュートラルという意味での白。更に出産による長期欠場からの復帰という背景もあり、The MANというキャラクターを更に確立。今のベッキーは、アティチュードエラ以降一番ストーンコールド・スティーヴ・オースチンに近い存在となった。DTAの精神を体現している。

 それはファイトスタイルにも現れており、マンハンドルスラムを格上げしたとはいえ、ディスアーマーも腕固めなので地味ではある。他の技セットも地味な技が多いが、そのスター性、キャラクターで全く地味に見せない。同じ技も連発で打つ、状況を変えて打つ。変型を挟む。という細かな工夫も入れる事で調整している。オースチンもスタナー以外は派手な技は殆ど無かったことも共通している。
 その様な完全体ベッキーと相対するビアンカも、この1年、ベッキー含み4HWの3/4から猛烈な指導を受けた事により、格段に成長。シャーロットすら凌ぐ程の業界トップと言っても良い身体能力を誇るスター候補生だが、この試合では、類稀なる身体能力を見事に使い切っており、比類なき若手スターとして存在しており、実績人気に勝るベッキーに相対しても遜色ないレベルになっていた。

 上手さを求められる場面はベッキーが全て担当しし、確実な試合構築を行うので、ビアンカの爆発力が最高に発揮され、両者の良さが最大限に活きた内容でした。クライマックスにかけて、少しトーンが落ちかけた所で、サーシャが登場し、リングの2人を急襲し、DQフィニッシュ。

 サーシャクラスのカムバックはこれ位の場面でないと勿体ないですし、それに至る試合が素晴らしかったので満足。サーシャのカムバックで、ストーリーも発展出来るので、不透明決着でも問題はない。好勝負。
評価:****

 

WWEユニバーサル王座戦-エクストリーム・ルールズマッチ
ローマン・レインズ(c)(w/ポール・ヘイマン)対”ザ・デーモン”フィン・ベイラー

 デーモンバージョンのベイラーだが、あくまでも少し攻撃力を強めたハードコアモード位で、ハイパーアーマーを着ている訳ではない。
 レスリングもそこそこに、序盤から凶器攻撃や場外戦を導入し、凶器やスポットの出し入れをしながら、ボリュームを積み重ねていく。レインズ対デーモンの割には、特別な仕掛けが少なく、スケールが大きくはないものの、内容は堅実で重厚。観客の湧き方がイマイチなので、凡戦に見えがちではあるが、ハードコア戦らしく身体を張りながら、レインズの圧巻の支配力が冴え渡り、スター対決の空気感を作り出している。わざわざマスクを付けて場外戦を戦う小ネタも雰囲気作りに一役買っている。

 攻防を積み重ね、テーブル葬も複数入れ、上手くSDでの王座戦の伏線も回収した後は、十八番のウーソズの介入、実況席&バリケード破壊で畳みかける。デーモンらしい赤照明&復活演出、ニュージャック的入場テーマを流しながらの攻防で機運が高まるも、トップロープが外れるハプニングから逆転フィニッシュ。

 レスナー戦を控えるレインズが弱く見えない様に勝たせる一方で、最強モードのデーモンを負けさせる理由も同時に必要という、難しいミッションだったのは理解出来るが、折角の良い試合と素晴らしい大会が台無しなのは言うまでもない。この後こそレスナーが出てきて、レインズ軍を一掃する演出が欲しかった。

 AEWなんて気にしていないというのはわかるけども、今こういうのをすべきではなく、翌月もサウジ大会が控え、翌週にはドラフトも控える中、演者達の頑張りを無に返す事はして欲しくなかった。好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4

 

全体評価:9