世界のプロレス探検隊

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WWE NXT TakeOver: 36 Review コール対オライリー/ウォルター対イリア他 ~Adam Cole Bye Bye?~

WWE NXT TakeOver: 36 8/22/2021

ミリオンダラー王座戦(グライムスが負ければ、デビアスは、ナイトの召使いになる。)
LAナイト(c)対キャメロン・グライムス(w/テッド・デビアスSr.)

 CWF-MA時代の正統派ベビーフェイス、トレヴァー・リーの片鱗が見えた試合。ヒールが上手く、コメディ力も高い選手なので、そうは見えにくいが、スキルフルで熱い試合も大得意。対戦相手のナイトがオーソドックスな選手ということもあり、直球の内容でも勝負出来たのは強い。ナイトもこれで終わりだろうという様な大技をこれでもかと投入するも、寸の所で耐え続けるグライムス。

 試合を完全に軌道に乗せた所で、デビアスを絡めた展開。これをオープニングだからとサッと行うのではなく、じっくりとミリオンダラー・ドリームを巡るシーンを入れた後、満を辞してのケイブ・インで豪快なフィニッシュ。

 ナイトの様なキャラクターは立っているけど、オーソドックスなスタイルの選手は、やる事を決められるWWEスタイルの方が合っていて、足りない所はグライムスが補って余りある活躍を見せカバー。
 ナイトのキャリアベストであり、グライムスもWWEではベストでしょう。イーライ・ドレイク対トレヴァー・リーでここまでの試合が作れるとは感慨深い。テイクオーバー抜擢に応える激戦でした。好勝負。
評価:****

 

NXT女子王座戦
ラクエル・ゴンザレス(c)対ダコタ・カイ

 ラクエルのパワーとカイの機動力+ハードバンプを活かした内容。ラクエルのパワーが今まででも1番活きた試合。豪快かつ強引な投げ技の数々は、ラクエルに求められる1番のスペック。動ける上に怪力。先に昇格したリアとの差別化を図れる可能性も出てきた。

 カイが上手くタクトを握り、酷いやられ様ではあったが、最後まで勝ちを見せる強さも見せていて、手に汗握るスリリングな展開となっていた。ラクエルがドミネイターとしてはまだ荒削り過ぎる点、カイが、ティーガン・ノックスとの抗争に比べると、ヒール度が弱かった点と、惜しい点もあり、好勝負には届かないけれども、元パートナー同士の特別な試合とはなりました。好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4

 

NXT UK王座戦
ウォルター(c)対イリア・ドラグノフ
 堅いグラウンド、猛威を振るうウォルターのドミネイト、それでも高い牙城を突破しにかかるモスクワの竜巻。NXT UKでは大激戦の末に破れたとはいえ、ヨーロッパで1番ウォルターを倒している男たちイリアは、やられても立ち上がり続ける。そしてそれを折りに行くウォルターのせめぎ合い。

 以前に比べると打撃でねじ伏せる、チョップやビッグブートの割合が減っていて、弱攻撃でも他を寄せ付けないインパクトを生んでいた時代を考えると纏まってはいるけれども、良い方向に考えれば、メジャー仕様に洗練されたということ。昨年の試合やWXW、PROGRESSの時と比較すると、もっと激しく尖ったハードヒッティングが出来ていたと思うけれども、そこまで追っていない人からすれば、とんでもないタフマッチと驚愕するのは無理もない。ウォルター対イリアは、世界中どこのマットでもショーをスティール出来る最強のカードなので、その計り知れない威力が猛威を振るった。

 トルペト・モスクワ連発でも決まらない、ウォルターの必殺技攻勢でも決まらない限界突破の後は、イリアがなりふり構わずエルボーとスリーパーで潰しに行く形。難攻不落のウォルターだからこそ、エキセントリックなハードヒッター、イリアだからこそ最高に画になるシーンの連続に、目も心も奪われていく。

 とはいえ、後述もするけれども、クロス対ジョーのメインが控えている中で、スリーパーで締めるのはもう一つ。この試合単体で言うならば、激闘を締め括るに相応しいフィニッシュだが、大会全体を考えると疑問符は残る。例えるなら、レスナーがメインで、その前にミッドカードで、キース・リーがF5で締める様なものである。ウォルターもそれをわかっていたか、ギリギリまでスリーパーを使わなかったけれども、クロスだけならまだしも、ジョーの復活祭でもあるので、それならエルボーでKO、トルペト・モスクワ3連発で幕の方が良かった。
 しかし、観戦者がMOTYといいたくなる気持ちは理解出来るほどの完成度なのは間違いない。圧倒的な内容。

 UK王座をイリアを受け渡し、ウォルターが遂にUSに本格進出か。レスナーが相手だと、スカッシュで終わるので別に見たくはないが、ジョー戦は勿論のこと、サッチャーやリドルとの再戦、マッキンタイア、シェイマス、ベイラー辺りのメインロスターのヨーロッパ勢とのドリームマッチは、是非行って欲しい。名勝負。
評価:****1/2

 

3本勝負
(1本目:通常形式。2本目:ストリート・ファイト。3本目:スティール・ケージ)
アダム・コール対カイル・オライリー


1本目は通常形式。セミという位置、散々ハードコアもしてきた抗争ということで、一進一退の攻防を軽めにまとめて、2本目へ。
 2本目はストリート・ファイト。各種凶器を交えながらテンポ良く。ライバル性を示すシーンやコールの彼女、現AEW世界女子王者、ブリット・ベイカーの必殺技ロック・ジョーを繰り出す等、ニヤリとさせる攻防があり、チェーンでの殴り合いに立てた椅子への投げで過激度と、オライリーのダメージ値を上げて幕。タイとなり、最後は金網戦へ。

 オライリーの決死の反撃を凌ぐコール。オライリーのハードな打撃は、金網戦の世界観に合っていて、手錠を持ち出し、さあここからフィナーレというところで唐突に終わってしまったのは惜しまれる。それなら手錠は必要なかったと思われても仕方がない。上手い死闘という評価を超えるまではいかなかった。とはいえここまで限界突破の死闘続きなので、いくら死闘をしても霞む状況だったのは事実。クールダウンは欲しかった。中々良い試合。
評価:***1/2

 

NXT王座戦
キャリオン・クロス(c)対サモア・ジョー
 格闘スタイルの両者なので、親和性がある為、印象としては手が合う。技も似た様な技を使うので、見せ場も上手く作れる。久々の現役復帰となったジョーは、コンディションが良好で全く問題なし。見応えはあった良試合だったものの、メインとしては正直あっさり目。

 クロスが一軍ロスター入りをしてしまっていて、ベルトを渡す事が見えすぎていた点、そして何よりもウォルター対イリアが、似た様なハードヒッティングスタイルで年間ベスト級の試合を繰り広げて、しかも決まり手がスリーパー。スリーパーがフィニッシャーのクロスとジョーの試合の前に、スリーパーがフィニッシャーではないイリアがスリーパーで決めてしまったら、メインが霞むに決まっている。1番WWEが嫌がる大会構成をしてしまうとは、正直ガッカリ。一軍を喰う勢いだった時代のNXTではそういったことはあり得なかったが、それが起きてしまった事は、転換期、リビルドの時間がやってきたと思わざるを得ない。

 ジョーが壁となり、クオリティを保ちつつ、若手を更に登用する流れかもしれない。しかし、NXTのメインロスターはベテランが多いので、難しい舵取りを迫られ、結局中身が余り変わらなかったという事もあり得るでしょう。サプライズもなく、ジョーがストレートで勝ってしまい、呆気に取られながら放送終了。中々良い試合。
評価:***1/2

全体評価:9