世界のプロレス探検隊

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Impact Wrestling Slammiversary 2021 Review ケニー・オメガ対サミ・キャラハン/ジェイ・ホワイト登場!

Impact Wrestling Slammiversary 2021 7/17/2021

 

www.fite.tv


Impact Wrestling Xディビジョン王座戦
ジョシュ・アレキサンダー(c)対クリス・ベイ対ロヒット・ラジュ対トレイ・ミゲル対ピーティ・ウィリアムス対エース・オースチン
 

 全員が入り乱れるめまぐるしい攻防から、連鎖場外ダイブまで持っていく。ベルトを取りに行く展開も細かく入れ、ラジュの道具を使わないとベルトを取れないという小ネタも良いアクセントになっている。そして一つ一つの攻防は、これだけの実力者を揃えると、アルティメットXに対する理解もあり、独創性も豊か。

 

 ロープにぶら下がったジョシュによるアンクル・ロックからの連鎖サブミッションに、ピーティによる元祖カナディアン・デストロイヤー3連発の最後はドゥームズデイ・デバイス式で度肝を抜けば、スパイダーバースのマイルズオマージュのコスチュームで登場したミゲルが、引退間近の吉野正人オマージュであるライトニング・スパイラルを決めるのは、日本のファンにとっては印象的。

 そして最後はAJの飛び付きベルト奪取オマージュ未遂という、昔懐かしのシーンを組み込んだお陰で、どうしても弱くなるフィニッシュを印象付けたのも絶妙。歴代上位に入るアルティメットX。素晴らしいオープニングでした。好勝負。
評価:****

 

 

W.モリッシー対エディ・エドワーズ
 無敗のモリッシーのドミネイトに絶体絶命のエドワーズが、何とか耐え凌ぐという形。モリッシーは、ハイパーアーマー設定はあるものの、エドワーズなら何とかしてくれるだろうという安心感がこの試合でも発揮され、想像よりも長い試合時間でも、モリッシーの巨体を存分に活かした上で、単なるスカッシュにさせない所は、見事。

 モリッシーもシングルプレイヤーとして、日に日に良くなっており、それを上手く操縦するのは、絶対に外さない、安定のエディ・エドワーズでした。平均的良試合。
評価:***1/4

 

グラッジ・マッチ
ムース対クリス・セイビン
 グラッジ・マッチということで、グラウンドは省略。ファストペースの入りから、ムースが体格差を活かして制圧。構図としてはモリッシー対エドワーズと同じではあるものの、ムースの方が、モリッシーよりもテクニカルである点を加味した試合展開となっていて、セイビンも機動力を活かす前に、ナックルや噛みつきで反撃するところは細かい。

 脚に度重なる大怪我を負った過去がある中で、ムース相手にスケールで勝負出来るのは流石セイビンと言いたくなる。最後は、ムースのドミネイトを振り切ったセイビンが丸め込みで逆転勝利。2人の上手さが光った熱戦でした。中々良い試合。
評価:***1/2

 

Impact Wrestling ノックアウツ王座戦
ディオナ・パラッツォ(c)対?(サンダー・ロサ)


 ディオナの相手はサンダー・ロサ。
 煽っていた所ではないにしても、NWAの契約選手かつAEWのレギュラー選手、そして折り紙付きの実力。ある意味この後出てくるミッキーよりも試合のクオリティを担保する意味では確実。素早いレスリング、ディオナの執拗な腕攻めに、ロサの的確な攻撃と実力者同士やはり手が合う。

 10分の短い試合であったが、このカードが更に素晴らしいものが作り出せるという確信を生む事には成功。この試合は、Beyond WrestlingかWarrior Wrestling辺りでとことんやるべきでしょう。中々良い試合。
評価:***1/2

 

試合後、ミッキー・ジェームズが登場。
自身がプロデューサーを務めるNWA主催の女子選手のみのPPV大会『NWA Empowerrr』にディオナを招待するも結局一悶着あり、ミッキーがディオナをKO。
AAA トリブレマニアでAAA女子王者ファビー・アパッチェとの2冠戦を控えるディオナに、更なるビッグマッチが待ち構えるかもしれない。


 ミッキーのインタビュー記事によれば、インパクト女子部門のプロデューサーであるゲイル・キムもそのNWAの女子選手のみのPPV大会『NWA Empowerrr』に、関与する可能性があるので、更なるインパクトの所属選手の登場があるかもしれない。

 

Impact Wrestling世界王座戦-ノーDQマッチ
ケニー・オメガ(c)対サミ・キャラハン


 サミの旧友モクスリーとの電流爆破を退け、インパクトの至宝を保持し続けるケニーと、そのインパクトの至宝を奪還すべく登場した、Mr.スラミバーサリー・サミ。

 ノーDQに変更された時点、このメインの開始時点で約1時間の放送時間が残っていた事で、これはとことんやってくれると思ったが、想像を遥かに超えるハードコア戦となる。

 一応ハードコアと称しているが、蛍光灯やガラスボードを使わないだけで、有刺鉄線に画鋲、フォークにピザカッターまで飛び出すデスマッチレベルの過激度はある。キング・オブ・デスマッチ、ジョン・モクスリーとニック・ファッキン・ゲイジよりもタフであると、サイラスいやドン・キャリスからコールされたケニーに対し、そのニック・ゲイジの看板凶器であるピザカッターで流血させる元CZWのサミ・キャラハン。このプロレス頭と演出力。その時点でこの試合は好勝負が決まった様なものだが、試合は止まってくれない。


 各種凶器が乱れ飛ぶ乱戦、両者共ハードコアマッチ・マスターだけに、みるみるうちに流血姿となり、凶器使いもお手の物。サミは観客を乗せながら、ケニーを制裁していくと、対するケニーは、冒頭はナックル主体、支配ターンになると得意技+凶器のハードコアモードで、その勢いを崩さない。やられる時のヘタレな顔と、やり返す時のぶっ飛び具合。中盤も非の打ち所がない。

 そして場外テーブルへの断崖式カクタス・スペシャル(カクタス・ジャック公認パイルドライバー)を皮切りに、終盤は一気にフルスロットル。

 

 ボード、有刺鉄線椅子への投げを繰り返し、過激にいったかと思えば、2018年スラミバーサリーのサミ対ペンタ戦を思わせるパウダー攻撃から、レフェリー複数人失神、幻のフィニッシュ。グッド・ブラザーズの介入には、セイビンとサミの長きに渡る仇敵エディ・エドワーズが助太刀。王座交代の機運が高まった後、ギャリスの介入で隙が生まれたサミに、度重なる画鋲葬で完全に粉砕したケニー。

 最初から最後まで勢いが落ちるシーンが一切ない大熱戦。先述のサミ対ペンタ戦と、2019年『AEW Full Gear 2019』のケニー対モクスリーを合わせた様な、ハードコアのエンタメ性とデスマッチの激しさを共存させた最高級のエクストリームマッチ。

 試合後のジェイ・ホワイトの登場で話題がそっちへ流れた感は否めないけれども、この試合は、長らく語り継がれるレベル。スラミバーサリー×ハードコア×サミ・キャラハンは絶対に外さない。

 そしてケニーもベストバウトマシーンの名に恥じない見事な働き。後に控えるアンドラーデ戦、ハングマン戦では出来ないぶっ飛んだクレイジーファイトを思う存分見せてくれました。

 GCWのコロン対アティカス、AEWのベイカー対ロサ、そしてこの試合と2021年のベストハードコア/デスマッチ3本はもう決まりでしょう。MOTY候補の名勝負です。

評価:****3/4

 

全体評価:9.5+