世界のプロレス探検隊

WWEAEW新日本インディ他、国内外問わずプロレスのマッチレビューを行っています。

ROH Review 2021 トレイシー対デッペン他 ~瀕死状態! 新日本プロレスに捨てられたROHの明日を考える!~

ROH Wrestling #500 4/16/2021

 

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ROHピュア王座戦
ジョナサン・グレシャム(c)対ジェイ・リーサル
 The Foundationの同門対決であり、ROHが今出来る最高のカードの一つが500回放送記念にラインナップ。最高の技巧派対決だけあり、極上のレスリングの応酬は、ずっと見ることが出来る。前半はベーシックな腕の取り合いや押さえつけ合いで主導権の奪い合い。力の入れ方伝え方、攻撃に対する対応の豊富さ、全てを掌握した上でそのコントロールからどの切り返すか、そのコントロールをどう続けていくか。上手さと強さのバランスが絶妙。

 後半からはカッターなどの大技を織り交ぜながら、リーサルが各種関節技でロープブレイクを消費させて逃げ場をなくす、戦略的な攻めで絶体絶命のピンチに陥ったグレシャムだが、一瞬の固め技で、してやったりの大逆転。ROHの意地を見た好勝負ではあるものの、これはミッドカードでこそ光る玄人好みの内容なので、これがメインにならない様な活躍をメインイベンター達はしなければいけない。

 とはいえ、トップ王座が、メキシコでは大物でも、アメリカでは人気がある訳ではないルーシュなので、グレシャムが頑張るしかない。新日本を見過ぎた結果、ロスターのバランスの悪さが深刻化している。好勝負。
評価:****

 

ジェイ・ブリスコ対マーク・ブリスコ
 TV放送500回のメインは、ブリスコ兄弟対決。とはいえテーマはないので、軽い攻防に終始。それでもブリスコズなので、荒々しい攻撃から強引に椅子やテーブルを入れて形にはしているが、結局カウントアウトで終わり、普通に健闘を讃えあうという何も生まれない形で終了。

 無観客である以上新しい息吹は生まれにくいのは事実だが、AEWインパクトNWA新日本軍団やLUを掘り起こした独自路線のMLWを見ていると、いかにROHが波に取り残されているかがわかる。ただ、ブリスコズは、団体の象徴でもコントロパーシャルな波を起こせる力は持っていないのが悲しい。やはりマーティを失ったのが運の尽きだったか。平均レベル。
評価:***

全体評価:7+

 

ROH Wrestling #502 4/30/2021

 

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バンディード対フラミータ
 

 無観客、バンディードはCMLL離脱に新日本参戦の道が断たれつつある中で、やる気もへったくれもないとは思うが、それでも世界最高のハイフライングを見せてくれるのは素晴らしい。ルチャドールの中では、真面目でストイックな方なのだろう。

 しかしこの試合が、ヒールターンの予兆を示すフラミータのそのターンを確定させる試合とあり、序盤は良かったが、試合が進むにつれて、次第に緩さが目立ち、試合の質は落ちていく。グラッジ・マッチだから、モップで殴ってDQにならないという謎理論。反則に対して緩い新日本及び日本マットを意識したのかもしれないが、その行為から生まれるものが何もない中で、それはさせるべきではない。インディやハウスショーならまだしもTVマッチなら尚更。無観客+ルチャドール+本国以外のTVマッチはやはり才能を持て余してしまう。

 フラミータのヒールは楽しみだが、立ち位置がルーシュ軍団と被っていて、しかもヒールというかルードスタイルは、バンディードやホラスにしか通用しない中で今後どうしていくのかは、悪い意味で期待。個人的にはWCWがミステリオやフービーをヒールにした様なワクワク感はある。平均的良試合。これが評価:****1/4だなんて、オブザーバーさん適当に見過ぎか、他のバンディードとフラミータの試合を見たことがないのかどちらなのでしょうか。
評価:***1/4

 

ROH世界TV王座戦
トレイシー・ウィリアムス(c)対トニー・デッペン

 沈みゆくROHにおいて、ピュアルールという初期ROHの名物を復活させ、トップ戦線に躍り出たThe Foundation。その中で、タッグとTV王座の二冠という快挙を達成したトレイシー。対するはフリーながら新軍団VLNCE UNLTD(ヴァイオレンス・アンミリテッド)の一員として参戦しているデッペン。彼らがテクニカルで堅さもある、東海岸インディの雄だった初期ROHを彷彿とさせる試合を展開。それBeyond Wrestlingだよね?と言われるのは仕方ないかもしれないが、ナイジェル、ウォルターズ、カバナ、ダグらが、ピュア王座戦線で活躍していた時を思い出させる。

 ある意味団体としては、原点回帰したマッチメイクであり、インディ上がりの苦労人2人は、やる気を失いつつあるメインロスターに比べると、やる気に満ちていて、それが内容にも反映されている。玄人好みであるが、尻上がりに勢いも激しさも出て、熱戦に。契約選手ではないフリーのデッペンがまさかの王座戴冠というサプライズまで、全力で走り切った見応えある内容。中々良い試合。
評価:***1/2

 

簡単にROHの現在地をまとめると、
① AEW&インパクトレスリング連合軍に、新日本プロレスを奪われた状態。
② 新日本参戦が出来るから獲得出来たルーシュやドラゴン・リー、バンディードらは、素晴らしい選手だが、ジ・エリートの代わりに、アメリカで話題を作れるスターになれる選手ではないので、使い方に苦慮。CMLLとの関係性も崩れており、ルーシュはルーシュで行き場がない為、新団体の旗揚げで起死回生を狙うが、メキシコでは話題になっても、アメリカや日本のファンには響かない。
③ ルチャドール、職人、ラフファイターと実力者は揃っているものの、スターではないので、話題にならない。
④ 当初ヘッドブッカーとしてリング内外から団体の救済を担うはずのマーティ・スカールが、Speaking Outの問題で職を追われたことにより、新日本やAEWとの交渉役が不在。デリリアスがヘッドブッカーに戻るものの、元々新日本勢の話題性やジ・エリートのスターパワーに頼り切っていた為、放送を成立させるのがやっと。

 

実力者は揃っていても課題山積みのROHについて、私からの提言。

 

① AEW&インパクトレスリングのルートが厳しいなら、インディもしくはMLW辺りに目を向けて、交流の活性化を図る。独占契約を少し緩くし、フリーやインディの実力者をどんどん招く。(とはいえ、WWE・AEWの囲い込みが厳しい現状はあるので、現有戦力で勝負出来る形を模索する必要はある為、現実的にはMLWだろう。)
② マイク・ベネットやEC3等試合もやれてヒールが上手いWWE経験者をトップに据えて、特殊形式を連発する。ミッドカードには実力者を沢山あてがうことで、大会の質は確保。
③ 他の団体が取らないインディ・スターのニック・ゲイジやリッキー・シェイン・ペイジを招聘し、ハードコア・デスマッチ路線を強化。ケビン・スティーンの時代の様な形を取り、話題を作る。そうすればタフマッチが強いルーシュやPCO、ジェイ・ブリスコ辺りを有効活用出来る。ネクロ・ブッチャーを使いこなせた団体なので問題はない。
④ 日本路線が捨てきれないなら、ドラゲーやサイバーファイト勢との提携を結ぶ。
⑤ インディに毛の生えたレベルの女子部門なら、無理して続ける必要はなく、軌道に乗ったらやれば良い。やるなら元WWE、AEWからあぶれた選手を乱獲し、加えて日本の女子プロレス団体(スターダム、東女、仙女以外)と提携。
⑥ 目玉になる様なストーリーを作り、プロモや設備等リング外にも力を入れる。

⑦クリス・ヒーローの復帰。

個人的には③のゲイジやRSPの招聘は、現実的に切り札になり得ると思っている。後⑦も。本当はジョーやブライアンを呼べれば良いが、限りなく難しいだろう。

 

明日のROHの行方はいかに??