世界のプロレス探検隊

WWEAEW新日本インディ他、国内外問わずプロレスのマッチレビューを行っています。

AEW Review 2022 MJF対ウィーラー・ユータ/オレンジ・キャシディ対PAC他 ~ポストエリート・エラ始動~

AEW Dynamite #156 9/28/2022
ROH世界王座戦
クリス・ジェリコ(c)対バンディード

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 ジェリコの元ROH王者を倒していくストーリー。根絶やしにするといいつつ、ROHの運用を軌道に乗せる為の動きと、ジェリコの肩に掛かる期待は大きい。

 バンディードというレスラーとしては最上級の身体能力と実力を誇る凄腕だが、英語はほぼ喋れず、マスクマンであるとROHを窮地から救う様なカリスマ性はなく、前体制のROHの負のスパイラルを加速させてしまった選手でもある。

 TVプロレスでは1番扱いにくい選手なのだが、今回は試合運びをジェリコがコントロールし、老体に鞭を打ち、バンディードの凄技もとことん受けていく展開。バンディードは全力で持ち技を放ち、ジェリコはのらりくらりとした試合運びで応戦。51歳が受ける量ではないレベルの攻撃を受け続け、介入なしで仕留める強さも示す。

 バンディードの評価が上がるのも頷けるが、ジェリコの懐の深さが全開となった好勝負。
評価:****

 

AEW Dynamite #157 – Anniversary 10/5/2022
マクスウェル・ジェイコブ・フリードマン対ウィーラー・ユータ

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 若手ライジングスターは今やポストエリート期の旗手としてトップスターへ。ユータがAEWに辿り着くこととなるカードをこのタイミングで実現。メキメキと成長を続けるユータと肉体改造を成功させ、トップに相応しいルックスも手にしたMJF。

 試合で目指したいビジョンの共有、アクション面での手の合い方共に最高レベルで、スイングし切っている。もう小悪党嫌味キャラは必要としないレベルにまで到達したけれど、慣れ親しんだBad Boyであり続けたい思いが漏れ出している。

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 一方のユータは、BCCの偉大なるメンター達の元、殻を破って躍進を続けている。実績も人気も勝っているのはMJFだけれども、ある意味ユータの方がMJFが求める姿になっているジレンマ。MJFを捨てる事がMJFが正真正銘団体と業界の顔になる為の最終関門。有無を言わさぬエリート中のエリートだが、CZWやBeyondなどインディの叩き上げだからこそ、セルフプロデュースしたものを壊せない難しさ。MJFはフェイスターンし、活躍していくことが最後の課題でしょう。

 ユータが喰らい付く試合ではあるが、MJFが実は試されていた試合でもある。試合内容を超えたストーリーテリング。サミー・ゲバラとアンドラーデの小競り合いというしょうもないバックステージヒートに埋められた事に憤りを覚える程美しい試合内容と関係性。

 この試合を観れば、エリートやパンクがいなくてもAEWは安泰。後は少しの時間を偉大なる先輩達が繋ぐだけという所。試合後ユータを襲ったのが、若手トッププロスペクトのリー・モリアーティである点も細かなポイントながら今後のストーリーを発展させる要因になり得る事も伝えたい。

 文句無しに好勝負。
評価:****1/4

 

AEW Dynamite #158 10/12/2022
“Daddy Ass”ビリー・ガン対スワーブ・ストリックランド

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 WWE RAWのDX25周年の後に行われており、Suck It!関連の攻防も多く飛び出た試合。ビリーがベストシェイプをキープし、リングを大きく使うTVスターらしい試合運びをすれば、ストリックランドは、体格に劣る側の崩し方を巧妙に実現。部分破壊を軸にヒールプレイも画になる。

 いつカメラを向けても最高の映り方をしているのがストリックランド。単なる繋ぎの試合とはいえ、両者の実力を実感出来る試合。平均レベル。
評価:***


ROH世界王座戦
“ライオンハート”クリス・ジェリコ(c)(w/アンジェロ・パーカー&マット・メナード)対ブライアン・ダニエルソン

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 カナダ開催とありジェリコに声援が飛ぶ展開もあり、ヒール的な立ち振る舞いは控えめでアクション重視。対する黒ベースのタイツで絶対王者であり象徴であったROH時代を彷彿とさせるブライアンもそれに乗っかり、厳しい攻めを展開。

 シンプルに振り切ってもそれに応じた試合展開にシフト出来る両者の巧さが光る。最後はガルシア絡みとなったものの、いかなる状況でもその状況に合わせた試合を作り上げる匠の技。ベテランの技術に酔いしれる一戦です。
 好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4

 

AEWオール・アトランティック王座戦
PAC(c)対オレンジ・キャシディ

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 PACがキャシディ殺法を真似したり、場外でのファルコン・アローに入場口でのツームストーンで突き刺すなどヒールモードでキャシディを圧倒。ストーリーをある程度築き上げた事で、序盤のセットアップをショートカット出来たのはかなり功を奏していた。

 その後もPACの猛攻により大苦戦するも、劣勢であればあるほど燃え上がる火蟻モードを解禁。燃え上がる炎の様にキレキレの攻撃でPACを追い込む。この抗争のキーとなっていたハンマーを巡る展開も見事に回収出来ており、助演のダンハウゼンにレフェリーのプライスも役者ぶりを発揮。最高の勧善懲悪により、最高の王座戴冠シーンを演出。

 特段長い試合でも長い抗争でもないけれども、それに匹敵する内容の濃さがあり、印象的な名シーンとなりました。AEWに必要なものは、バックステージやTwitterでの罵り合い殴り合いではなく、WWEにも新日本にも描けない新たな可能性と王道のプロレスをミックスする事。まさにこれだ!と言いたくなる激闘でした。

 好勝負。
評価:****

全体評価:8