世界のプロレス探検隊

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PROGRESS Wrestling Chapter 142 & Return Of The Fly Review クリス・ブルックス対キッド・ライコス/CDK対ライコス・ジム他

PROGRESS Wrestling Chapter 142: The Deadly Viper Tour - Codename: California Mountain Snake 9/25/2022(配信日は、10/8/2022)
カラマリ・ドランケン・キングス(クリス・ブルックス&高梨将弘)対ライコス・ジム(キッド・ライコス&キッド・ライコス2)

 クリスの新旧パートナー対決ということで、高梨に敵意が向くかと思いきや、ストーリー通りクリス対ライコスの前哨戦的な内容に。主役の2人はラフを交えながら激しく火花を散らす。

 ただタッグマッチの連携の華やかさを崩す様な試合展開にはせず、高梨とライコス2もテクニカルかつ軽快な動きと持ち味を示すシーンが多くあり、最終的には両タッグの連携力を競い合う展開で19分。長めの尺でじっくりと今の実力を示し合う。

 クリスとライコスの一騎打ちに期待を持たせるのみならず、CDKとライコス・ジムそれぞれのタッグ目当てで観た人にも、両チームの高い実力をアピールするショーケースとなった一戦。

 好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4

 

PROGRESSタッグ王座戦
サンシャイン・マシーン(c)(TKクーパー&チャック・マンボ)対ヴァイオレンス・イズ・フォーエヴァー(ドミニク・ギャリーニ&ケビン・クー)
 PROGRESSとRevProのUKトップインディでタッグ2冠王に輝くSMとUSとカナダのインディーシーンで数々のタッグ王者に輝く2組の激突。戦い慣れていない間柄でリズムが取りづらい印象を受けるも、個々の実力でカバー。

 半ば強引とはいえ、連携技合体技を打ち合うシーンに持っていき、そしてファストペースの試合展開に仕上げる事で、崩れそうな所を上手く持たせる形にする。粗が目立ったかつてなら崩れてしまう所が崩れずに勢いを持続させる事が出来たのは、成長の証。

 トップインディで活躍している証がここにある。その合体技自体は、独創性に溢れ、インパクトもありと見応え十分。期待値には届かせる事が出来た。

 中々良い試合。
評価:***1/2

全体評価:7

 

PROGRESS Wrestling Return Of The Fly 9/27/2022(配信日は10/15/2022)
オージー・オープン(カイル・フレッチャー&マーク・デイヴィス)対ヴァイオレンス・イズ・フォーエヴァー(ドミニク・ギャリーニ&ケビン・クー)

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 USでも戦っている両タッグ。AOがUEのヒール色を出さなかった為、フェイス対決の様な形に。場外戦や同時サブミッションの様なファンなシーンが多く、期待通りにはならなかった。クライマックスは帳尻を合わせてきたが、このカードは、NJPW STRONGやRevPro辺りで観る方が良い試合になるかもしれません。

 平均レベル。
評価:***

 

ノーDQマッチ
クリス・ブルックス(w/高梨将弘)対キッド・ライコス(w/キッド・ライコス2)

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 運命のCCK対決。FUCK CCKとドアに書いて、戦闘モードで登場し、奇襲をかけたライコス。小悪党ライコスがラフを交えコントロールしにかかるものの、待っていたのは日本仕込み、クリスのハードなチョップ。ハードコア大得意のクリスがラフでも凌駕し、ライコスは一転劣勢に。マスクを引き裂かれ、鉄柱への投げで流血。そこからクリスの支配ターンが続く。

 ここまで実にテンポ良く紡いでいき、場外戦での受けっぷりも上々。一進一退のシーンとドミネイトのシーンのバランスが良く、凶器出す必要がない程の密度。クリスがまるでウォルターなのではないかという程ハードなチョップを繰り出していたのが序盤では印象的。(ウォルターオマージュのコーナーでの拷問式踏み付けも披露。ウォルターはシャーデンフロイデのメンバーでもありました。)

 クリスの厳しすぎる攻めにライコスへの応援ムードが漂う。悪態をついていたライコスはアンダードッグとして支持される立場となり、クリスがフェイス、ライコスがヒールから両者に声援が飛ぶ形となり、クリスが葛西純戦の時の親友エル・デスペラードの様に、流血ライコスのマスクを完全に引き裂いてからは、クリスがヒール、ライコスがフェイスと、スムーズにダブルターンをやってのける。それも一気にダブルターンをするのではなく、徐々にグラデーションを付けていくのも巧妙。試合における絶妙なストーリーテリングが、まず試合のクオリティを倍増させる。

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 次にロングマッチの作り方。かつてのIWA-MSでのクリス・ヒーロー対CMパンクのTLマッチの様に、前半はラフを交えつつも、凶器を使わない内容で十分過ぎるほどの土台を築き上げ、後半からは満を辞してラダーやゴミ箱といった凶器を使っていく展開。ハードコアらしいテンポの良さから疲労度ダメージが蓄積されていく中で、終盤は画鋲デスマッチの様相に。(画鋲の入っていた袋はシャーデンフロイデのロゴ入り)クレイジーなスポットも多く、しっかりと過激ながらも実に丁寧な作り方で、特別感を印象付ける。

 そして3つ目は、この2人の歴史総決算と言う様な特別な攻防、技セット。クリスが前述のウォルターオマージュ、チョコプロの同僚でもあった水森由菜の得意技であるランニング式アラバマスラム、所属するDDTのレジェンドHARASHIMAの必殺技蒼魔刀を繰り出せば、ライコスはドリュー・パーカーの様に頭を撃ち抜くモーションからのスワントーンを繰り出す。

 

 

 それに留まらず、クライマックスは散乱する画鋲への投げをこれでもかと放ち、高梨とライコス2の介入を絡めた後に待っていた美し過ぎるフィニッシュ。葛西対デスペオマージュに留まらず、それを飛び越えた劇的な死闘。

 作品としての内容の濃さ、お互いのレスラーとしての成長、アクション面の充実と褒める要素があり過ぎる内容を、特別な大親友兼袂を分ったパートナーの再会という劇的なストーリーで包み込んだら鬼に金棒。クリスの復活祭と思ったら蓋を開ければライコスの為の試合でもあった。

 2022年を代表する試合でもあり、両者のキャリアベスト。ライコスは度重なる大怪我に引退からの復活。クリスは久々のUKマット帰還。逆にもう日本でしか会えないかもしれなかった中での激突。2人の関係性、歴史が詰まった試合。

 NXT UKの誕生、Speaking Out、コロナウイルスと瀕死の状態を何とか繋いできたUKインディシーンに贈られた最高の贈り物。これを待っていた。MOTYの一つに挙げられるのも必然でしょう。文句無しに名勝負。

評価:****3/4

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全体評価:8