世界のプロレス探検隊

WWEAEW新日本インディ他、国内外問わずプロレスのマッチレビューを行っています。

東京女子プロレス YES! WONDERLAND 2021 Review 辰巳リカ対山下実優/"AEWvsSKE"伊藤麻希対荒井優希

東京女子プロレス

YES! WONDERLAND 2021~僕らはまだ夢の途中~ 5/4/2021

 

荒井優希デビュー戦

渡辺未詩&荒井優希対伊藤麻希&遠藤有栖
 

 SKE48荒井優希のデビュー戦。豆腐プロレスは抜きにして、遂に48グループのアイドルまでプロレスラーになるとは、時代の移り変わりが激しすぎる上、アイドル業も生き残りが大変だなと感じつつも、プロレスラーにおいてアイドル業で培ったものは、生かすセンスが少しでもあれば、そのリターンは計り知れない。この試合のメンバーはそれを体現していて、特にWWEとAEWの契約選手ではない日本人女子プロレスラーにおいて、今現在世界一の人気者となり、実力も備えてきた先人伊藤麻希の存在がいるというのは大きいだろう。レスラー、アスリートとしての努力とスーパースターになるための戦略、これを学んでほしい所。

 アイドルとしては超格上(といってもLinQも名が通ったグループだが)で、スタートラインが違うとはいえ、基本的に”持たざる者のジャンル”であるプロレスリングの世界においては、SKE48の看板が足枷にもなる。既に並の新人は勿論、男女問わず10年20年選手でも出来ない、観る者の印象に残る様な表情の作り方をしていたので好感。後は続ける意思があるかどうか。
 試合としては、チャレンジマッチである事を抜きにしても面白い。伊藤がリードし、"和製ジョーダン・グレイス"ともいうべき渡辺が、WWEのセザーロばりの高速ジャイアント・スイングを放ち、遠藤もそつのない試合運びを見せていてと、アンダーカードとしては十分すぎる意味のある試合となっていた。平均より上。
評価:***

 

プリンセス・オブ・プリンセス王座次期挑戦者決定3WAYマッチ
坂崎ユカ対中島翔子対瑞希
 マジカルシュガーラビッツとみらクりあんずが入り混じった3ウェイ。パートナーが絡むだけあり、お互いの事をよく理解している事をあえて示す3ウェイを展開。スピード感、3人が絡み続ける形は往年のTNAやUSインディ式。AJ対ダニエルズ対ジョーとまでは言い過ぎだが、東女においては質も格もそれに匹敵するのは事実。連鎖サブミッションや同時攻撃に丸め込みの応酬と3ウェイに求められる要素もしっかり抑えている。ずっと見ていられる心地良い時間が流れていた3ウェイでした。中々良い試合。
評価:***1/2

 

プリンセス・オブ・プリンセス選手権試合
辰巳リカ(c)対山下実優
 王者辰巳が、まだ一回も挑戦者山下に勝利がないというストーリーを最大限に活かした内容。ストライカー山下のアレイスター・ブラックばりの蹴りが火を吹く中、坂崎ユカや伊藤麻希を倒す要因となった脚攻めやヒップアタックで山下を押さえにかかるも、山下の圧倒的な力はそれをも飲み込むという流れを、絶妙なアクションで描いていく形。強さ、攻めの山下と懸命さ、耐えの辰巳、どちらも違うベクトルで洗練されていて、間違った選択をしないのが素晴らしい。スピード感はあり、試合時間も長くはない中で、王座戦の重厚さ、中身も凝縮しているのが素晴らしい。

 余談だが、日本では30分、40分、60分試合をビッグマッチのメインイベントで毎回するのが美徳とされているけれども、15分〜20分の中に内容を詰め込む形の試合が全世界で、PPVで一番金を取れる。日本人のプロレスファンとして、海外のファンにお勧めする日本の団体として、まず東女を挙げたくなる。他にはない個性やキャラクター、キュートな面に胡座を書かないプロレスとしての内容の素晴らしさに激しさ。文句の付けようがない。

 王者辰巳の懸命な耐え姿と決死の追い込みを、無慈悲に蹴り倒す山下の圧倒的な強さ。見せたい画を試合全体通して描く事が出来ていた。王者辰巳も決して長くはない王者期間であったけれども、前王者坂崎に劣らない実のある王者ロードを築いていた。彼女の躍進が、また一つ団体の価値を押し上げる。文句無しに好勝負。
評価:****1/4

 

全体評価:8