世界のプロレス探検隊

WWEAEW新日本インディ他、国内外問わずプロレスのマッチレビューを行っています。

東京女子プロレス GRAND PRINCESS '22 山下実優対中島翔子/マジラビ対白昼夢/伊藤麻希対荒井優希他

東京女子プロレス GRAND PRINCESS '22 3/19/2022

 

朱崇花対上福ゆき

youtu.be この2人からは特別入場ゾーンに突入。映像を使った上福と、「鬼滅の刃」アニメ版の主題歌、Aimer「残響散歌」に乗り、ダンサーと共にダンスを披露した朱崇花の親友対決。実力差は歴然。チャレンジマッチに過ぎないけれども、上福のアグレッシブな面が芽を出しつつあり、それが見えただけでも価値あり。そして朱崇花には、早くトップレスラーを当てたいところ。平均より上。
評価:***

 

天満のどか対愛野ユキ

 この試合は、音楽ユニットangelaによる爆れつシスターズの入場曲「BAKURETSU POWER」生演奏で入場。しかし、姉妹が一緒にステージに上がり、一緒に入場し、当然一緒に戦い、別れる時は別々と、プロレスリングには今まであり得なかったそれらの画を描けたのが全て。

 試合は、ミッドカードということでエモーショナルな演出を行うのにも限界があったものの、等身大の2人の対戦で、変に気を衒う事がなかった為、かえって良い部分が出ていた。あくまでも2人並んでこそ姉妹と、無理に遺恨を作らなくても素晴らしいものが作れると教えてくれる東女を体現した内容。中々良い試合。
評価:***1/2

 

NEO美威獅鬼軍(沙希様、メイ・サン=ミッシェル、マーサ&ユキオ・サン=ローラン)(w/清水愛、KANNA、世志琥様、操&アズサ・クリスティ)対ラム会長、小橋マリカ、らく&原宿ぽむ)

 ラム会長とらくがまるでマフィアのボスとお姫様の様な演出の入場を行ったのに対し、NEO美威獅鬼軍/美威獅鬼軍も歴代メンバーが勢ぞろいをした両国初進出ならではの特別バージョンの入場。これだけでこの大会を観る価値がある。2022年の 「AEW Revolution 2022」でのCMパンクの入場に匹敵するレベル。まさにレッスルマニア級。

 試合もコミカル要素満載でいながら、卒業を控える小橋と沙希様の短いながらも熱い攻防、美軍に存在感のみで立ち向かえる唯一の存在ラム会長とコミカルで片付けられない見事な8タッグ。中休みの位置付けだが、この面白さこそがこの素晴らしい名大会の充実度を象徴している。中々良い試合。
評価:***1/2

 

志田光対乃蒼ヒカリ

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 AEW所属、元AEW女子世界王者、最長在位記録保持者志田光が日本プロレスマットに復帰。 日本にいる時は一切縁のなかった、AEWと協力関係を敷く東京女子マットに参戦という注目が集まる試合。

 乃蒼が東京女子の中では注目のライジングスターだが、世界を極めし志田の前では無に帰る。全米のTVスターは、常にカメラを意識し、表情豊かに試合を進める。乃蒼も得意としているハードコアにも難なく対応。乃蒼が得意としているといっても、志田もタフマッチが大得意で、アジャコングを筆頭に並み居る強敵との対戦を経て今の地位を手にしている。

 東京女子という基本的には鎖国制を敷いている団体にいるので、ルートは異なるはずだが、乃蒼が目指すべきルートの先にいる志田との対戦は今後の乃蒼のキャリアに影響を与えるであろう。今回に関してはレスラーとしても浮き彫りとなっている実力差実績差をそのまま表した様な突き放した内容。

 魂のスリーカウントもカタナも使わず、Darkなどでスカッシュ用に使うファルコン・アローで切って捨てた。翌日のアイスリボンでの試合とは異なり、わかりやすく志田光の格を守った一戦でした。平均より上。
評価:***

 

インターナショナル・プリンセス選手権試合
伊藤麻希(c)対荒井優希

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 荒井のデビュー戦の相手伊藤との再戦は、ステージを共に上げたタイミングで。互いの成長が見える試合展開、肉薄するも結局は突き放す、でも強さだけでスターになった訳ではない伊藤の、存在感や実力で凌駕しつつも相手を受け入れ、相手を押し上げ、それで突き放す。キャリアや大舞台を考慮すると、単純なドミネイトではない、難しい方の試合展開を選び、それに応えた両者には賛辞を送りたい。

 荒井の最大の武器である表情作り、表現力を1番活かせる方法で試合を進めていたのが特に印象的。普通に良いだけの試合を超えて、印象に残る試合を作り上げるという自らが課したミッションを遂行。キャリアの限界値を超えた良試合でした。

 好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4

 

プリンセスタッグ選手権試合
マジカルシュガーラビッツ(坂崎ユカ&瑞希)(c)対白昼夢(辰巳リカ&渡辺未詩)
 

 

 メインを抑え、今大会のMatch of The Dayとなったのはタッグ王座戦。それぞれ神輿とトロッコに乗り登場したキュートなアイドルレスラーズが、権利者だけでなく、控えも含めて試合に巻き込み、初めから最後まで高い完成度を誇る試合構築力を示し、そこに高い運動量と独創性で魅了し続ける激戦を作り上げるものだから、他のレスラーはたまったものではない。現在でいえば、ヤング・バックスやFTRクラスが行う様な世界最高レベルの内容。

 連携や合体技だけでもオリジナリティ溢れるところに、ここでも渡辺の2人まとめてのボディスラムにジャイアントスイング、瑞希の秘技渦飴というチェンジオブペースが図れる特別な技を持ち、昨年の辰巳の王座奪取の時を思い起こす様な、坂崎と辰巳の東女オリジナル同士のエモーショナルな激突と名勝負になる特別な要素満載。

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 男子も女子も日本プロレス界は、とにかく長時間マッチで国内外に勝負しようとし続けているが、濃密な内容を20分以内に収め、それでも内容過多にならず絶妙なバランスでまとまっているのもこの試合の恐ろしさ。同じ様にやっても出来ないレベル。タッグの魅力が最大限に組み込まれており、性別や国を超えて、万人が凄い楽しいと思う内容。 AEWのPPVにこのパッケージで持っていき、恐らくチェックしているであろうWWEと世界中のプロレスファンを驚かせたくなる。一昨年行われたヤング・バックス対ハングマン・ペイジ&ケニー・オメガに匹敵する内容。

 今年を代表する名勝負は勿論のこと、団体史、女子プロレス史に残る歴史的な一戦。女子タッグの最先端はここにある。名勝負。
評価:****1/2

 

プリンセス・オブ・プリンセス選手権試合

山下実優(c)対中島翔子

 

 山下の無慈悲な蹴りの数々により、失神レベルにグロッキーにされた中島だったが、何とか踏ん張り、強大な敵を倒していく様はまるでレイ・ミステリオを彷彿とさせる。体格差や迫力の差は連続攻撃で埋めていく。

 中島も既に団体の象徴ではあるものの、小柄な体格でトップになり、真のエースとなる為には、どうあるべきかという難題に真摯に取り組んだ結果、山下には描けないアンダードッグ性とスピーディーかつトリッキーな攻撃を織り交ぜ、ボリュームアップしていくスタイルの一つの完成形を作り上げる事が出来た。

 互いを理解し切っている同期の両者らしい良さを引き出しあった激闘。最後はあっさり目だったが、強さを売りにしている選手が陥落する時らしい呆気なさは、そういうスタイルなので、特にマイナスに響くものではない。

 脳震盪を起こしてKO負けでもおかしくなかった中島だったが、山下の攻めながら回復を待つフォローにも助けられ、本来見せたい激戦模様を演じ切る事が出来、感動のフィナーレを飾るに相応しい好勝負を作ることに成功した。

 セミが異常なだけで、普通なら団体年間ベスト級の激戦です。文句なしに好勝負。
評価:****1/4

youtu.be

 

全体評価:10