世界のプロレス探検隊

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AEW Review 2023 "衝撃の金網戦"ケニー・オメガ対ジョン・モクスリー/クラウディオ対フェニックス他

AEW Dynamite #188 5/10/2023

 

www.fite.tv

 

 


ダブル・ジャパティマッチ
クラウディオ・カスタニョーリ対レイ・フェニックス(w/アレックス・アブラハンテス)

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 勝者が敗者の王座に挑戦出来る形式。
 ヒールなのでアピールを抑え、黙々とフェニックスを痛ぶるクラウディオだが、ルチャのテクニック、持ち前の怪力、ハイフライングは出来ないとはいえ、華麗な動きを見せ続けるフェニックスにも引けを取らない鋭い動きとレスラーとしての完成度を如何なく発揮。

 危険技を使うわけではないけども、互いの高いアスリート能力とそれをプロレスに落とし込めるそのセンスと技術により、高次元の熱戦に昇華。

 各々の能力や相性的には、間違いなく良い試合になるだろうと予想出来たが、その予想を裏切らない濃密な好勝負でした。好勝負。

評価:****

 

AEWインターナショナル王座戦
オレンジ・キャシディ(c)対ダニエル・ガルシア

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 ラップはラップでも、トラップを超えてドリルで入場し、踊りながら相手を挑発するガルシア。柴田勝頼のフォロワー時代が遠い昔の様な変貌っぷりではあるが、本来内にあるものを表現している為か、自分のものにしているのはガルシアの才能である。

 そしてサブミッションで追い詰める、強烈なバイルドライバーを撃ち込むといった鋭さは残した状態でもあるので、レスラーそのものの価値は落ちていない。

 対するオレンジは、手の負傷に加え、ガルシアに攻められた脚のダメージを情緒豊かに表現しつつ、全て完璧ではなかったが、得意技を崩しながら必死の思いで放つ。綺麗にしようとせず崩れかけた粗い状態のままで決めることで、ギリギリの戦いであることを表現した高等技術を使用。

 オレンジの懐深さを今回も堪能出来る一戦に仕上がっています。

 中々良い試合。
評価:***1/2

 

ノー・ホールズ・バードマッチ
アナ・ジェイ.A.S対ジュリア・ハート

 元親友同士。どうしてもルックスの美しさが先行してしまっていた原石2人が、狂乱ヒールと魔女というキャラクターを手に入れ、ハードコア戦を戦うのはプロレスしか出来ない魔法の掛け方である。

 これまで大舞台やハードコアの場数を踏んできたアナがジュリアをリードしていたのは、デビューから見ているファンにすれば感極まるシーン。レスラーとしてこの2人が順調に育つその過程を楽しめる一戦でした。

 そしてジュリアの入場は、それだけでお金が取れる素晴らしい演出です。

 平均レベル。
評価:***

 

スティール・ケージマッチ
ケニー・オメガ(w/ドン・キャリス)対ジョン・モクスリー

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 白熱するBCC対エリートの一大抗争。業界最上級のメンバーによるメガユニット抗争なのに、復讐に燃える炎上宣教師CMパンクの話題にかき消されているのは不憫だが、その中でも団体が誇るトップカードが実現。

 大将対決といいたいところだが、BCCの大将は、モクスリーの先に控える極悪龍ブライアン・ダニエルソン。実況席でもヒールとしての演技力は、群を抜いていた。
 クラウディオ&ユータとバックスが登場し乱闘を繰り広げる演出も導入し、団体抗争を煽っていく形からスタート。

 試合は、PPVとは異なり、時間制限もある為、『Full Gear 2019』の一戦の良いところを抽出したかの様なピュア・ヴァイオレンス。金網よりも有刺鉄線椅子を徹底的に活用した序盤から中盤。画鋲にガラスの破片でデスマッチテイストを導入し、終盤では金網破壊式VトリガーとTVプロレスらしい派手な演出も追加。

 デスマッチとエンターテイメントの間に立つ様な、バランスの取れた構築は見事。勿論ストーリーと演者のスターパワーで大幅に加点されているのも見逃す事は出来ない。 

 フィニッシュは、これぞ嫌われ者というべきドン・キャリスのダブルクロスから不穏なフィニッシュとなったが、それまでの内容で十分PPV級の好勝負には到達出来ている。ハードコア/デスマッチ方面にも強みを持つハードワーカーなスター同士の確実な死闘でした。

 好勝負。
評価:****

全体評価:8.5+