世界のプロレス探検隊

WWEAEW新日本インディ他、国内外問わずプロレスのマッチレビューを行っています。

WWE NXT UKレビュー 2021 ケイ・リー・レイ対里村明衣子Ⅱ/30分アイアンマン戦 ジョーダン・デヴリン対A-キッド他

WWE NXT UK #148 6/10/2021
WWE NXT UK女子王座戦
ケイ・リー・レイ(c)対里村明衣子

 前回敗れている里村が猛攻を仕掛けるスタート。リビングレジェンドというべき実力と実績に加え世界最高の貫禄で、相手を全て格下に追い込む圧倒感という持ち味がある中で、この試合においても、里村のリベンジマッチだからといって、変にKLRを格下にすることなく、里村と同格の絶対王者である点を損なわせずに、試合を進めたのは大正解。インディや日本でなら間違いなく里村が格上、KLRがローカルスターでアンダードッグという構図になるが、対等を崩さなかったのは英断。WWEだからこそマスターピースになり得たカードである。
 よりアスリート的で、とことんタフに削り合うジャパニーズテイストが軸としてありながらも、掟破りの必殺技の応酬や場外での投げ技を織り交ぜて、只、愚直なだけではない所は確実に示す。WWE在籍歴ではリードするKLRが上手く強弱を付けながら、表情面な受け表現でもアクセントを加えていた。

 得意技・必殺技が乱れ飛ぶ内容特盛りの激戦を締めくくったのは、究極奥義スコーピオ・ライジング。最高に画になる唯一無二のオリジナル・フィニッシャーはこういう時に強い。CMパンクのWWE王座在位434日を遥かに超える、在位649日長期政権を敷いていたKLRの王座交代劇に、リビングレジェンド里村の王座戴冠劇に相応しい好勝負。

 そしてNXT UK女子では当然歴代トップの試合、NXT含みWWEの女子の試合の中でもトップクラスの一戦でした。文句なしに好勝負。
評価:****1/4

 

WWE NXT UK #151 7/1/2021
ジョーダン・デヴリン対A-キッド

 2年前のOTTでも既に素晴らしい好勝負を残している両者。その時、既にトップ選手だったデヴリンはより洗練し、Aキッドは高い技術はそのままに、感情がストレートに出る様になっていて、超絶上手いけども、飄々としていて感情移入しにくいという課題を、WWE入りした事により、ちゃんとクリアしているのは評価したい。デヴリンはAキッドが引き立つ様に、攻撃を荒めに調整。そしてAキッドが美しい攻撃をやり返す。打ち出すべき持ち味と、ウィークポイントとなり得そうな点はフォローと上手く使い分けている上手さが光る。
 完璧に決まらなかったシークエンスもあるが、目まぐるしい攻防の連続には、思わずウットリしてしまう程。得意のAキッドの腕狙いに対し、デヴリンが鉄階段攻撃から脚狙いで畳み込むストーリーテリングも上手く出来ている。この次のアイアンマン戦でも思ったが、無観客なのが本当に惜しまれるテイクオーバー級の大熱戦でした。好勝負。
評価:****

 

WWE NXT UK #156 8/5/2021
30分アイアンマン・マッチ
ジョーダン・デヴリン対A-キッド

 テクニカルなレスリングに軽量級の軽快な動き、そしてライバル心を感じさせる荒々しくも鋭い攻防の数々が見所。前回から受け継がれているものもありつつ、前回に決め手となった脚攻めを引き継ぎ、Aキッドの関節地獄に対する切り札として選んだデヴリン。脚攻めからテキサスクローバー等に繋ぐ形は、Aキッドと比べても実にスムーズ。この脚攻めで1本奪えただけでなく、前半から中盤までをこれだけで消費する事が出来、この脚攻めで生まれた溜めが、後半の爆発に活きている。

 1本先取され、尚且つ脚を痛めたAキッドだが、鋭く美しいドロップキックやスープレックスで反撃。サブミッションの上手さは、インディ時代から折り紙付きだったが、打撃や投げの威力や見せ方が更に向上していて、ザック、カーラ、リッジウェイ等シュートスタイルの選手は多いものの、ザックと並ぶ程のレベルにかなり近づいている。ザックもキラーモードの時は、試合のボルテージもクオリティも一段二段上がる傾向にあるが、今回のAキッドもそれに近い勢いを放っていた。そこで直線的になり過ぎるのではなく、スコアがタイとなった中、デヴリンが、逃げて体力回復を図るといったアイアンマン戦ならではの仕掛けを入れていたので、良い緩急が付いていた。
 終盤は、Aキッドのサブミッション地獄に対し、何とか掻い潜ろうとするデヴリンだが、前回対戦では上手く決まらなかったデビル・インサイドへのカウンターとなるカナディアン・デストロイヤーが完璧に決まり、執拗な腕攻めの前に遂に屈服。一度、逃げで溜めを作ってからの怒涛のラッシュはまさに圧巻。軽量級のスピーディーな面とこの2人のテクニカルな面が詰まっていた。

 残り2分残しで、後は崩れ気味の不格好な攻防となってしまったが、残り2秒で決まるといった展開が多いこの形式において、あえて上手く行かない時間を作ったのは、偶然かもしれないが、リアリスティックなシーンであり、こういう締め方もあっても良いと思わせる。前回の良い所を受け継ぎつつ、伸ばすべきところはしっかり伸ばす。そしてアイアンマン戦らしい演出も、的確に組み込んでいて好感。

 正直、デヴリンは、スピーキングアウトがなければ、NXT UKとインディを繋ぐ真のエースとして、ウォルターがアメリカのNXTの割合が増えたとしても、NXT UKを支えていなければいけない存在なので、これ位やって貰わないと困る。OTTやPROGRESSで彼が見せてきたものは、言うまでもなく世界最高水準である。今回は、進化し続けているAキッドの力を借りながら、極上の作品を作り上げました。文句無しに好勝負。
評価:****1/4

全体評価:7.5+

 

WWE NXT UK #150 6/24/2021
#1コンテンダー・マッチ(NXT UK王座)-トリプル・スレット・マッチ
イリア・ドラグノフ対ジョー・コフィー対ランペイジ・ブラウン

 屈強なスーパーヘビーと、UK屈指のハードヒッターを揃えて、序盤からギア全開で、咆哮しながらリング内外構わずぶつかり続ければ面白くならない訳が無い。シングルなら厳しいコフィーもこの構図で、ランペイジとイリアの補佐があれば体格が非常に生きてくる。間違いなく彼のWWEでのベストワークでしょう。テクニカルなことを抜きにして、全編通して肉弾戦の連続で突っ走る。この3人が最高に活きる状況で、その期待通りの大爆発を見せてくれました。好勝負。

評価:****

 

WWE NXT UK #139 – Prelude 4/8/2021
WWE NXT UK王座戦
ウォルター(c)対ランペイジ・ブラウン

 UKシーンが誇るビッグマンのハードヒッティング対決。貪欲に相手の身体を砕き、気持ちを折りにかかる。シンプルだが対ウォルターにおいて、ストレートに戦えるのは、ランペイジかイリア位なので、狙い通り。WWEなので無駄な要素も削られていて、ビッグマン同士の武骨な肉弾戦一本で勝負出来ているのが何よりも良い。期待通りの激闘だが、期待していたよりも完成度が高かった。好勝負。
評価:****

全体評価:7