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PWA Black Label Back In Black Label Review オージー・オープン復活/トロイ対ロビー他

PWA Black Label Back In Black Label 2/12/2021

 

▷ PWA: Back In Black Label - Official PPV Replay - FITE

※今大会はFITE TVから購入可能です!

Pro Wrestling Australia | Top Shelf Pro Wrestling (団体のHP)


PWWA王座戦
ジェシカ・トロイ(c)対ロビー・イーグルス

元々は女子のベルトだった同王座。初代王者ケリー・スケーター、現在WWEで活躍するビリー・ケイことジェシー・マッケイ、ダコタ・カイことイーヴィー、そしてマディソン・イーグルスも巻いていたベルトに、男子も挑めることになったことで、そこにオーストラリアマット史上最高傑作の一人、ロビー・イーグルスが挑戦するのは、ドラマチックな展開だろう。PPVのオープニングには申し分ないカード。

挑戦者のロビーだが、実力実績では王者トロイに勝るので、トロイがロビーに挑んでいく形。女子にガンガン攻めさせる展開ではなく、ロビーが優位に進め、トロイがダメージを上手く表現しながらも、何とか耐えて決死の反撃を試みる展開は、単純明快でロビーの価値を落とさずに、トロイを上げる事が出来る最善の選択。トロイも狙い通りに役割を遂行し、それを広げる事が出来るのだから素晴らしい。現在オーストラリアマットにおいて、トップを張っている選手はやはり違う。質も量も高い一進一退の攻防は続く一方で、トロイの大健闘に追い込まれたロビーはなりふり構わず対抗。脚を痛めつけつつも、スーパー・ドラゴンばりのサイコ・ドライバーを突き刺す無慈悲さを見せる。

それすらも耐えて、クライマックスというところで、トロイのタッグパートナーであるチャーリー・エヴァンスがロビーを襲いDQ。まさにチープ・フィニッシュという結末は残念だが、チャーリーは、トロイにまでも襲い掛かりなんとヒールターン。

まだまだ国際線は中々開かない中で、注目の抗争開戦となりそうなのは楽しみではある。この素晴らしい試合を犠牲にした意味を、今後示して欲しい。
フィニッシュは残念でも、それまでの試合はオープニングには勿体無い位気合の入った激闘になっていて、確実に観て損はない試合です。好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4

 

オージー・オープン(カイル・フレッチャー&マーク・デイヴィス)対ジェネレーション・ナウ(マティー・ウォールバーグ&リッキー・サウス)


GNのオープン・チャレンジに名乗りを上げたのは、なんとオージー・オープン!
マーク・デイヴィスの長期欠場が明けて、遂に復活。日本にもFCP興行に来日し、オージー・オープンとしてもシャーデンフロイデとしてもUKシーンで天下を取った、非WWEAEWの中では最高クラスのタッグが復帰とあって、上がらない訳はない。

デイヴィスが欠場明けなので、受けるシーン、組み立てのパートはフレッチャーの割合が多め。只元々フレッチャーが受けて、デイヴィスが爆発し、多彩な連携で締めるのが黄金パターンなので違和感はなし。途中脚を気にするシーンもあったデイヴィスではあるが、長期欠場明けとは思えないほど仕上がってはいた。

対するGN。才気溢れる注目株同士のタッグではあるが、流石にオージー・オープン相手では分が悪く、劣勢のシーンも多かったが、もう終わりかという所でも何とか耐え凌ぎ、反撃シーンでは劣る事なく確実に決めて来る。サウスはルセフやヘナーレの様なスタイルで、タフなアスリートタイプ。攻防面以外の所は、ウォールバーグが生意気でヘタレなキャラクターと、いざという時の爆発力と鋭さでアクセントを加えていたのが印象的。そしてスイッチが入った時のウォールバーグの鋭さは、やはり只者ではない。

この健闘があったことにより、単なるオージー・オープン復帰試合で終わらずに、内容の詰まった試合に仕上がった。誤爆等で今後のストーリーを紡ぎつつ、オージー・オープンが各種得意の連携をこれでもかと決めていく、出し惜しみなしの展開も胸が熱くなる演出。タッグ王座戦でこれがメインでもおかしくない程の熱戦。

好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4

 

PWAタッグ王座戦-ラダー・マッチ
ヴェロシティーズ(c)(パリス・デ・シルバ&ジュード・ロンドン)対MKプラス・ウルトラ(カイ・ドレイク&マイケル・スペンサー)


激戦続きのPPVのメインは、軽量級タッグ同士のラダー・マッチ。PWGにも参戦していたヴェロシティーズは、インディマニアの中では少し知れ渡っている存在の、注目のハイフライヤーコンビ。

遺恨渦巻くカードらしく、同時トペで華々しくスタート。そこから軽量級タッグらしく目まぐるしく攻防を紡いでいく一方で、その延長線上でラダーや椅子といった凶器を導入する形。ありふれた展開を一捻りして繰り出し、全てインパクト十分。オリジナリティに溢れ、インディの中でも中々小さい体格を補って余りある形で見せていくのは良く考えられている。テンポは良く、ラダーを登る意識は忘れず、それでいて破天荒さハードさも備えている。軽量級タッグのラダー・マッチとして、中盤まではかなり理想的な展開である。

スポットフェストになりかけそうな所で、スペンサーが一呼吸置いたのは特に効果的。ちょっとした溜めやアピールといった彼の効かせたアクセントが、この試合では最大限の効果を発揮していた。場外テーブル葬を放った所までは名勝負コースだったが、中盤〜終盤、椅子攻撃を連発したシーンは、椅子の底が抜けまくる不運やそもそも椅子攻撃が上手くないなど、トーンダウンしてしまったものの、ズルズル行きかける所で切り替えて、ラダーからの投げでカバーしたのもクレバー。

軽量級タッグの試合で、ダメージを表す為にスローになるのは、仕方がないとはいえマイナスになっていく中で、何とか踏ん張り、ラダーからのテーブル葬に加え、ラダーからのスーパーダイブ炸裂で良い印象で終えたのも見事。

メジャーのスケール感やストーリー性はなく、体格のハンデがあり、介入者等の補助もない中で、自らの持てる力と凶器をフルに使い、過激化やムーブばかりに走らず完走したのは賞賛に値する。両チームとも見事な仕事ぶりでした。2021年を代表出来る必見の好勝負。

内容的に、2000年代後半にチーチ&クラウディ、ノーススター・エクスプレス、ダン&マルコス辺りがChikaraやUWA Hardcore等でやっていた軽量級タッグの現代版という雰囲気も漂っているのも、個人的には嬉しく感じた要素でした。文句無しに好勝負。
評価:****1/4

 

総評:この大会自体も素晴らしい上に今後のストーリーも期待させる上質な大会でした。オーストラリアマットのファンは勿論、US、UK、日本のファンもマストバイ!

 

全体評価:9