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Impact Wrestling Emergence 2022 Review MOTY有力候補! ジョシュ・アレキサンダー対アレックス・シェリー他

Impact Wrestling Emergence 2022 8/12/2022

 

www.fite.tv


Impact Xディビジョン王座戦
“スピードボール”マイク・ベイリー(c)対ジャック・エヴァンス

 


 昨年のジョシュ・アレキサンダー、今年のマイク・ベイリー。いつどこでどんな相手でも好勝負を作り出せる存在。2022年のMVP候補最有力が、ロッキー・ロメロに続き、また異なるタイプ曲者ジャック・エヴァンスを相手に見応えある試合を作り上げたのがこの一戦。

 エヴァンスに合わせてロープワークやハイフライングを多めにする構築が上手く嵌まっただけでなく、エヴァンスも王座挑戦に気合が入っており、高難易度のハイフライングのみならず、蹴りのバリエーションでも応戦。何といっても一つ一つの動きに遊びがなく、この試合で存在感を示そうという気概を感じられる立ち振る舞いが随所に見られた。
 ただエヴァンスなので、どうしても点が線になり切れない部分も出てきてしまうけれども、そこをベイリーが上手く繋ぎ止めてフォロー。この辺りのフォローはベイリーにとっては容易い仕事でしょう。エヴァンスをキャリーしながら盤石の仕事振りで完勝。今のベイリーの無双状態を表した試合の一つです。

 中々良い試合。
評価:***1/2

 

ヴァイオレント・バイ・デザイン(エリック・ヤング&ディーナー)(w/ジョー・ドーリング)対KUSHIDA&クリス・セイビン

 アンダーカードで期待値は低く、クシダの顔見せかと思いきや、コスチュームを同じ色で揃えたクシダとセイビンは、簡単に呼吸を合わせており、このタッグでの面白さも見出していた。

 対するスコット・ダモールの教え子集団、2022年版チームカナダのVBDも見事な連携を決め、KUSHIDAセイビンに劣らないものを見せ、試合内容を良化させていく。特にリーダーであるEYの安定感はなんだかんだで頼もしく、風格を醸し出している。動きもパワフルで安定しているので、攻防面でもポイントを稼げる。

 クライマックスでは、MCMGとタイム・スプリッターズを彷彿とさせる憎い演出もありと期待以上の良試合となりました。

 中々良い試合。
評価:***1/2

 

バンディード対レイ・ホルス


 AAAといいながらこちらもROHに捨てられた格好の両人。バンディードは全くお声が掛からないのが不思議な位だが、実力はトップレベルにある事を証明したのがこの試合。演舞的な展開から堅実にコントロールしつつ、場外ダイブに独創的なカウンター、バンディードの怪力と見せ場満載。

 ホルスの十八番であるスイングDDT絡みのシーンも的確に決まっておりと難なく高い実力を発揮した見事なショーケースマッチ。焦って性急にし過ぎるところもなく落ち着いていたところは、アメリカンプロレス、TVプロレスにも対応出来る両者だからこそ。 

 ただこの2人がこれ位朝飯前にやれる事は周知の事実。まずは軽くジャブといったところでしょう。枠に限りがあるとはいえ、特にバンディードはいつ契約を結んでもおかしくない存在ではあります。
 好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4

 

ノーDQマッチ
サミ・キャラハン対スティーヴ・マクリン

 第二試合で組まれていたが、乱闘を続けた結果試合開始せず。その後も乱闘を続け、見かねたダモールがムースを排除しノーDQで仕切り直しさせたこの試合。激しい因縁を表した乱戦。

 恐らくこれで決着戦にはならない、繋ぎの位置だとは思うけれども、ハードコアの達人サミが変わらずの狂人っぷりで試合を作り、対するマクリンも流血を乗り越え、タフマッチへの耐性を示す。ヒールワークも的確。

 サミによるサブゥー式椅子投げで顔面を撃ち抜くなどハードコア要素はあったが、手数は決して多くなく、過激度は高くない中で、表情作りやアジテーション力でボルテージを高めていた格好。大会の中締めとしては申し分ない乱戦でした。

 中々良い試合。
評価:***1/2

 

Impactノックアウツ王座戦
ジョーディン・グレイス(c)対ミア・イム

 

 フェイス対決ということでシンプルな腕試し。実力者ミアにジョーディンも長所の怪力とパワフルさで応戦。ゴツゴツとした打撃は、インディアンデスロック状態での張り手合戦もあり熾烈。一進一退の展開で、一つ一つの攻防も的確。

 好勝負級にはならなかったが、当たり前の様にセミ合格レベルの良試合を作り出す事は凄い事。存在感を示し、価値を上げた試合でした。クリーンに敗れたミアは短期契約。果たして次はどう動くのか。

 そして試合後現れたインパクトでは無敗をキープするマーシャ・スラモヴィッチが遂に王者ジョーディンに照準を絞る。マーシャへの長期計画が、遂にビッグプッシュとして形に表れた瞬間でした。

 好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4

 

Impact世界王座戦
ジョシュ・アレキサンダー(c)対アレックス・シェリー

 


 体格差を打ち消す様な老獪なテクニックで翻弄するシェリー。シェリーの変幻自在のグラウンドテクニックは高品質だが、対するジョシュもグラウンドで反撃するだけのテクニックも持っていて、尚且つ受け手としてもシェリーの攻撃の威力を増幅させる様なダメージ表現を演出。技術だけではなく、醸し出す雰囲気、ビッグマッチに相応しい空気感の演出も含め、2人のレスラー能力の高さが存分に表れた前半。

 中盤へはシェリーが必殺のボーダー・シティ・ストレッチの伏線を張る腕攻めを行いつつ、並行して動きを止める脚攻めを行う隙の無い攻撃を繰り出す。劣勢に立ちつつも、ジョシュも持ち前のタフさから少しずつ反撃はするので、緊張感を逃さない展開にしているのは見事。まさに一進一退が続く中で、必殺級を解禁しながら終盤へ。

 そのままニアフォールにする形、トランディションする形、切り返しに行く形とそれぞれの使い方が絶妙。試合を通してだが、シェリー7ジョシュ3と言う様な攻撃の配分が絶妙に効いている。体格差があるのと、BFGを控え、さすがにここで王者交代はないだろうという中でこれ位の方がスリル感を持続させる事が出来る。

 テクニックバトルに加え、打撃や関節技で気持ちを折りにいく魅せ方も秀逸。アンクルロック対ボーダー・シティ・ストレッチを巡る攻防から派生しシャープ・シューターやスライスブレッドのカウンターで、ジョシュの旧必殺技である奥の手のコークスクリュー・ツームストーンに移行する流れはまさに芸術。

 これぞプロレスリング。クラシック。プロレス史に名を残すテクニカルレスラーが織り成す逸品。2022年を代表する名勝負です。
 文句無しに名勝負。
評価:****3/4

 

全体評価:10