世界のプロレス探検隊

WWEAEW新日本インディ他、国内外問わずプロレスのマッチレビューを行っています。

WWE Fastlane 2021 Review レインズ対ブライアン他 ~This is AMERICAN F'N DRAGON~

 WWE Fastlane 2021 3/21/2021

 

セス・ローリンズ対中邑真輔
 抗争中のセザーロに向けた無言のアピールというべき、クリス・ヒーローの後頭部へのエルボーにロウキーの後頭部へのニールキックと超細かいアピールではあったが、技を増やすしかやる事がないセスが、型を崩しながら荒々しく試合を進める展開。

 スカッシュではないが、中邑の存在価値は見えない内容。期待値は高かったが、結局やる事がないセスのプロモーションマッチ。平均レベル。
評価:***

 

ノー・ホールズ・バードマッチ
ドリュー・マッキンタイア対シェイマス
 大親友の抗争は、RAWでの一戦が好評だったことにより、ラシュリーとの抗争のセットアップを押し退けてPPVにラインナップ。シェイマスもいつまで出来るかというもある為、何としてでも今やっておきたかったという所だろう。
 試合はこれまでの試合同様、ハードコア×武骨なヘビーヒッターのタフファイトが軸。凶器も全力で叩き込むスティッフさが見所。WWEらしさとWWEらしくなさを共存させるシェイマス主導のハードな展開に、マッキンタイアも持ち前の対応力の高さで応戦。会場を広く使った攻防から実況席破壊もあり楽しめる内容。

 もっと出来る可能性は感じたが、あくまでもサイドストーリーなので、これだけやってくれれば文句無し。煽りプロモの感動的な内容から試合まで、特別なカードに相応しい内容には仕上がっている。好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4

 

WWEユニバーサル王座戦(SPエンフォーサー:エッジ)
ローマン・レインズ(c)(w/ポール・ヘイマン)対ダニエル・ブライアン
 先般のケビン・オーウェンスとの抗争と異なる所は、アンダードッグとしてズタボロになりながら、何とか食い下がるオーウェンスをレインズがあの手この手で潰す形。それはそれで素晴らしい抗争ではあったが、WMが控える中で、正直オーウェンスの勝ちは見えなかった。ハードコアはオーウェンスの土俵ではあるが、レインズもタフマッチは得意なので、利を感じなかった所もある。
 しかし今回のカードは、圧倒される展開はあるにしても、レスリングマスター、ブライアンの領域にレインズがあえて踏み込む形である。レインズが、おれはレスリングも出来るスーパー・スターだとファンや団体、ビンス達に示す意味合いもあるけれども、この極悪ヒールレインズに対して、対等な形に持っていくブライアンの凄さが格別。

 関節技での一本を狙い続けるブライアンと、対処しながら圧力を強めるレインズの主導権争いが、絶妙にスリリング。実力は言うまでもないが、バックステージにおいても発言力がある両雄の対決だからこそ、試合展開以上の予想出来ないヒリヒリ感がひしひしと伝わってくる。レスリングベースの内容という事で、近年ではシナ対パンクまで遡らないとここまではなかった位である。シネマティック・マッチや今のブロック・レスナーにこれは出来ない。
 この手に汗握る主導権の奪い合いがあった上で、終盤はレフェリー失神からスペシャル・エンフォーサーであるエッジにジェイ・ウーソを絡めたコテコテのエンタメ的展開からのチープ・フィニッシュなのも素晴らしい。これはAEWにも他にも出来ない、これぞWWEという内容。スタイルクラッシュ+大きいスケール感という点でも他を寄せ付けない。ブライアンだからでもあるが、2003〜2005年辺りのWWEを彷彿とさせるレスリング×エンタメの融合を成功させた一戦である。
 事前収録ではないエッジに不安があるから、結果的にWMの王座戦は、ブライアンを入れた3ウェイとなったが、ここに違和感なく入れるインディからの叩き上げは今現在他にはいない。一度は頂点を極めてもミッドカードに終わる事も多く、何なら怪我で引退してしまったブライアンが、もう一度第二次YESムーブメント+シューターとしての他にない鋭さ、そしてバックステージでの力を引っ提げて、WMに返り咲くというのは恐ろしく凄まじい事である。

 この試合、このストーリーは、人気者ダニエル・ブライアンとしてだけでなく、インディからの叩き上げであり、プロレスリングの申し子アメリカン・ドラゴン、ブライアン・ダニエルソンの復活を高らかに宣言するものである。今のローマン・レインズをも押し除ける位の絶対的エース的存在感を示したのは感嘆の一言。名勝負。
評価:****1/2

 

 

全体評価:8+