STARDOM ALL STAR GRAND QUEENDOM 2025 4/27/2025
スペシャルシングルマッチ NO DQルール
鈴季すず対星来芽依
すずのおびただしい大流血と序盤の椅子使用以外は通常形式の内容といっても良いノーDQ戦。流血のインパクトとその後の攻防の普段通り感のギャップがあり過ぎるが故に、ノーDQ戦としてはインパクトを与えられず、流血はすずの欲求を満たす以上の効果をもたらせなかった。
しかし、そもそもこの2人のマッチアップは、凶器を使わずともハイレベル。彼女が持つサイコな面がハードコアに反映されなかったのは惜しかったが、別に無理してハードコアにする必要はないのではという印象を受けた。
スピーディーな攻防のラリーは魅力十分。総合すると中々良い試合レベルで、ミッドカードとして大会全体にアクセントを付ける意味では十分成功しており、合格点を挙げられる内容です。中々良い試合。
評価:***1/2
センダイガールズワールド選手権試合
橋本千紘(c)対舞華
ハードヒッター同士の重みのある攻防がメイン。軽量級の華やかでスピーディーな試合が多い中、このカードがあると非常にアクセントとなる。ただこの試合の重厚さはアクセントに留まらず、メインを張れるレベルの内容。
長期欠場を発表するほどのコンディションとは思えないほどパワフルな舞華と更に凌ぐ勢いのスーパーアスリート橋本。柔道とレスリングというバックボーンも生かしながら、全編通して迫力の肉弾戦を展開。両者の魅力が存分に発揮された一戦。
ビッグマッチのメインを張れるレベルのこのカードがこの位置にいることが今大会のラインナップの異常さを物語っており、ミッドカードに収まる訳はないだろうという両者の気迫が乗り移ったかの様な激闘でした。
好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4
IWGP女子選手権試合
岩谷麻優(c)対朱里
業界トップのストライカーである朱里をキラーモード解禁でねじ伏せていく岩谷というこれまでにない構図。まさかこの試合を以て団体を退団するとは到底思えないが、そうだからこそ団体とIWGPという重い看板を託すための鬼気迫る岩谷の猛攻が際立つ内容となっている。
岩谷×朱里であれば、朱里が攻め続けた後、岩谷がゾンビモードで脅威の粘りを見せる形が想像されるが、その確固たるベースの遥か上を行く鬼気迫る潰し合い。圧倒的強者である朱里が守勢に回ることに対して、違和感が全くなかった。岩谷は特別な選手だが、この試合における岩谷は特に際立っていた。
普通ならばこの試合が年間ベスト級の名勝負として話題に挙がるはずだが、この試合を消し去る程のビッグバンが後に控えているとは。ただ、この試合が影に隠れてしまうのは勿体無い。業界を背負い続けているトップスター2人による名勝負。全編通して完成度の高さに圧倒されました。
名勝負。
評価:****1/2
ワンダー・オブ・スターダム選手権試合
スターライト・キッド(c)対AZM
キッズレスラーから象徴格にのし上がった、団体が誇る生え抜き対決の数え歌。これまではハイスピード的な圧倒的なスピードで突っ走り、空中技や大技を使用した立体殺法で魅了する内容が見所だったが、その要素は残しながらも、スピードは少し抑え、脚攻め対腕攻めを軸に据えて、白ベルト、横浜アリーナのセミに耐え得る重厚さを意識した内容となっている。
単純なクオリティは過去の試合の方が素晴らしいかもしれないが、国内外を股にかけて活躍し、団体を背負うトップレスラーとなっている彼女らに今一番必要なことを見事に表現しているところが素晴らしい。
このスタイルにした時に、体格から来る迫力不足も課題になってしまうが、前述の部分破壊からのサブミッションを効果的に使いつつ、カナディアン・デストロイヤーやスパニッシュ・フライなどの体格の小ささを無効化出来る大技を積極的に使用し、埋めていくのも的確。
スターダムが彼女らを残して、人気者だがミッドカーダーだったところを、トップティア、そしてメインイベンター級に据える決断をしたことに対する最高の回答でしょう。文句無しに好勝負。
評価:****1/4
ワールド・オブ・スターダム選手権試合 完全決着敗者引退特別ルール
上谷沙弥(c)対中野たむ
まず、試合に至るストーリーメイク、試合以外のところでのプロモーションの数々、そして入場時の演出の格好良さ。演者の努力だけでなく、団体が資金を惜しまなかったその手厚いサポート。惜しみなくこの瞬間のために持てる力を結集し、出し尽くしたからこそ、ただでさえ特別な名勝負となったこの試合が、歴史に残る神試合に昇華したといっても良いでしょう。
グラウンドの攻防、エプロンへの投げ、場外戦からのチェーン使用とこれまでの手合わせで見せた攻防やスポットをテンポ良く繰り出していく序盤。スタートから重厚さを出すためにスローにしたり、過激に寄りすぎたりすることはありがちだが、無理に変化を加えず、積み上げて来たもので勝負。それで十二分に魅せる自信があるからこそ出来る選択。それが実に嵌っていた。
その上、アリーナの花道を使う攻防も上手く織り交ぜ、その場に合ったスケールアップも出来ており、ずっとハードな内容には違いないが、様々なアクセントが効いているので、胸焼けをすることはない。
断崖式フランケンを皮切りに垂直落下系の攻撃を連発。上谷にしか出来ない攻防を惜しみなく放つことでアリーナのスケールに負けないインパクトを与える。イヨ・スカイを超えるかもしれない身体能力を持ち、ヒール前から十分トップレスラーの実力と才能を持ち合わせていた上谷。ヒールターンもビジュアルの強さからすぐにブレイクスルーを遂げたものの、ヒールとしては未完成な上谷。その上谷に最後まで寄り添い、全てを投げ打ってでも支え続けたたむのフォローも光る内容。
終盤は、鋭角な首への投げ技連発の苛烈な攻防の連続。必殺級、掟破りも思い残す事がないように惜しみなく放っていく形。特別な内容だが、特別サプライズがある形でもない。それでも敗者引退マッチという最大級のチート設定があるからこそ、スリル感は何倍にも膨れ上がる。それでも敗者引退というシチュエーションに飲み込まれずに、等身大の内容で中盤まで高品質を叩き出し続けた事で、終盤は余程外さなければ何をやっても上手くいき、特別になる無敵モード。
完成度は高いけども未完成な部分もある。それを認め合い、憎みながらも愛し合い、互いに支え合って高みに上り詰めていく。アイドル経験があるこの2人の愛憎劇は、類稀なるアイドル性を放っており、全て魅力として昇華されている。クライマックスからフィニッシュまで激しくそして実に美しい。儚く幻想的なエンディングは、まさにトワイライト・ドリーム。
年間ベストマッチ最有力であり、年間ベスト大会最有力。2020年代を代表する抗争であり、名勝負。まさに後世にも語り継がれる一戦です。
5スターマッチ。MOTYC。
評価:*****
全体評価:10+