世界のプロレス探検隊

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WWE NXT Heatwave 2024 Review "女子版リコシェ×オスプレイ?" ケラーニ対ソル・ルカ/オバ・フェミ対ウェス・リー他

WWE NXT Heatwave 2024 7/7/2024

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WWE NXTノース・アメリカン王座戦
オバ・フェミ(c)対ウェス・リー

 


 ナイジェリアの怪物オバ・フェミが怪力の限りを尽くし、軽量級のウェスをおもちゃ扱い。F5の要領で放り投げるシーン。ウォードロウやコブ辺りも使うけども、受け手のウェスのキレも相まってメガスポットに昇華。

 ウェスの身体能力とダメージ表現がオバ・フェミの魅力を最大限引き出している。やられっ放しではなく、ウェスも深傷を負いながらも反撃し続けるところに評価の高さを覗かせる。オバ・フェミはオバ・フェミで、怪物になり切れる才能、身体能力の高さ、ドミネイターとしてのセンスを持っており、アフリカ版レスナーにもなり得そうな存在であることを示した。
 粗さがあるのがかえってリアリティを生み出しており、管理プロレスとの境界線を上手くぼやかしている。NXTにしか出来ない好勝負を見事に生み出しました。

 好勝負。
評価:****

 

WWE NXT女子ノース・アメリカン王座戦
ケラーニ・ジョーダン(c)対ソル・ルカ

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 女子版リコシェ対オスプレイと評された類稀なる身体能力を駆使した、演舞要素が高く、とにかく華やかな試合内容。これをWWE PC生え抜きのキャリア3年以内の2人で作り上げてしまう恐ろしさ。リコシェ対オスプレイよりは、流石に精度は劣るものの、しっかりと作り上げてきた攻防の数々は魅力的。

 ハイフライングが得意な女子選手、アスリートタイプは決して多くはなくとも存在しているが、総合的な完成度を高める方向に向かうので、この様な粗さもなんのその派手さ、華麗さに振り切った試合は、中々生まれなかった。同タイプが2人揃うことはなかったのも要因。その中で同タイプを2人揃えて、身体能力の限りを尽くす攻防を披露する。これもNXTだからこそ生まれた一戦であり、これほどまでの素材を集められないインディや他団体では中々作れない一戦でもある。

 インディを超える独創性もあり、特にソル・ルカのスプリングボード450°式クローズラインはスプリングボード450°スプラッシュの使い手であるAJスタイルズも驚いたであろう代物。メインロスターで活躍するにはまだまだ学ぶことは多いが、確実に業界へ衝撃を与えた驚愕の試合。

 それでいてWWEらしく試合としてまとまっているのでクオリティも好勝負レベルに到達出来る。そして何よりも女子北米王座を新設した意味が早くも表れたのが非常に大きい。

 好勝負。
評価:****

 

WWE NXTタッグ王座戦
ネイサン・フレイザー&アクシアム(c)対チェイスU(アンドレ・チェイス&デューク・ハドソン)(w/ライリー・オズボーン&ティア・ヘイル)
 このカードでこの評価になるとは思わない。結果と内容を残し続けているフレイザー&アクシアムはまだしも、元タッグ王者とはいえキャラクターの印象が強いチェイスUが、まさかこの内容を残すとは。

 この試合の立役者は、大柄な体格を活かして暴れ回るだけでなく、動ける所も見せつけて大活躍したハドソン。決して強くないからこそ応援したくなるチェイスとの凸凹コンビが遂に最高の形で嵌ったのがこの試合。
 後はまるでルチャ・ブラザーズの試合を見ているような、つまりAEWを見ている様な既視感がある攻防を連続してボリュームアップ。このメンバーでもとにかく間を埋めて攻防やスポットを注ぎ込む。この方法論ならこれくらい作れるんだぞというアピールと挑発。良い意味でWWEのイヤらしさが表れた試合。その結果チェイスUのキャリアベストマッチが爆誕しました。
 文句無しに好勝負。
評価:****1/4

 

WWE NXT女子王座戦
ロクサーン・ペレズ(c)対ローラ・ヴァイス
元Bellatorの元MMAファイター、ローラの回転系打撃と各種チョークを凌ぎ切るロクサーン。ローラをオーバーさせる目的の試合だけあり、ロクサーンの必殺技ポップロックスをこれでもかと返していく展開。

 ローラも可能性は感じるが、MMAスタイルとWWEスタイルのミックスの難しさはあり、安定感と刹那的インパクトをどう両立していくか、ポテンシャルを出し切るためには相手も選ぶ。上にはシェイナやソーニャという似たタイプの選手もいるだけに、どの様な成長曲線を描いていくかは注目。

 この試合に関しては、ヒールのロクサーンのハイレベルな試合運びが試合を支配。ローラの様な特徴の強いスタイルの相手にも臆さず、相手をサポートしながら試合を掌握。アグレッシブな魅力で体格の小ささもカバーしている。全てロクサーンの掌で踊らされていた一戦でした。
 平均的良試合。
評価:***1/4

 

WWE NXT王座戦-フェイタル・4ウェイマッチ
トリック・ウィリアムズ(c)対ジャヴォーン・エヴァンス対ショーン・スピアーズ対イーサン・ペイジ

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 メジャー経験豊富なカナダ人ベテランヒール2人と新進気鋭の黒人ベビーフェイス2人の4ウェイ。中盤まではTHE WWEスタイルというような複数人が絡む攻防がメイン。

 決して手が合うとはいえないメンバーによる4ウェイスポットなので、精度は落ちるものの、何とか踏みとどまり、エヴァンスの超絶ハイフライングで場の空気を変えていき、試合を軌道に乗せる。

 エヴァンスの動きが凄すぎてトリックが霞んでしまうのは惜しかったが、スピアーズのチェアマンギミック、小悪党イーサン、そして必殺級の大技乱れ打ちにバリケード破壊などスポットを矢継ぎ早に注ぎ込んでいき、呆気に取られるフィニッシュまでフルスロットルで駆け抜けた一戦。

 このカードでこの試合内容を残せるのも管理プロレスの賜物ではあるが、個々の特性や新鋭の潜在能力が的確に試合に反映されているからこそここまでのものになっているので、良い様に捉えるべきでしょう。
 好勝負。
評価:****

全体評価:9.5+