世界のプロレス探検隊

WWEAEW新日本インディ他、国内外問わずプロレスのマッチレビューを行っています。

"Best Bout Machine" ”スピードボール"マイク・ベイリー試合集 vsKENTA、マット・リドル、キース・リー他


Wrestling Revolver Season Finale 12/3/2022

KENTA対”スピードボール”マイク・ベイリー

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 史上最悪の乱入者、BULLET CLUBの一員として活躍するKENTA。新日本ではハードヒットは一要素だけ、後はWWE仕込みのヒールワークで試合を作り上げるスタイル。しかし、この試合では00年代世界最高Jr.戦士、世界最凶ストライカーであるNOAH時代のKENTAが、今年のMVP候補最有力のベイリーに導かれる様にハードヒットの刀を解禁。

 体格的にも近く、蹴り使いでもあるベイリーは、実力を出し切るには打ってつけの相手。WWE/新日本的ヒールワークはロングマッチを上手く回す為の潤滑油として残しつつも、その後は飛び切りのハードヒットの連発とベイリーのハイフライングが中心。やられてもやられても立ち上がるベイリーのアンダードッグ性が、年に1回ザック戦でしか出さない、立ち上がる相手を立ち上がれなくなるまでしばき倒す、往年のKENTAがこの試合では全開となっている。

 KENTAの適性はやはりJr.級であり、新日本は全力を出す場ではないのかと勘繰ってしまうものの、気分転換で参戦した米インディで近年では確実にトップの活躍を目に出来るとは感慨深い。そのKENTAを引き出したベイリーの素晴らしさがあってこそなのは言うまでもなく、今年のMVPに相応しい活躍。

 ただ、まさかKENTAの全力を引き出したのが、他でもなくベイリーになるのは夢にも思わなかった。世界を震撼させたノアの方舟がここに降臨。KENTAはまだまだ錆びていない。年間ベストの1つに上げたくなる名勝負でした。名勝負。
評価:****1/2

 

We Are Wrestling (WAW) Welcome to the Bronx 11/4/2022
ジャナイ・カイ対”スピードボール・マイク・ベイリー

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 同じテコンドーをバッグボーンに持つ両者のドリームマッチ。冒頭はテコンドーの華麗な足技を披露し、この試合のテーマを示した後は、ジャナイがベイリーに挑むチャレンジマッチである事を再提示。

 ジャナイの持てる全てを出し尽くすかの様なキャリアの中でもベストパフォーマンスを、全て受け止めた上で、必殺技を一切使わず、執拗なボストンクラブで返していくベイリーらしくない厳しく突き放す展開。

 得意の打撃を中心に据え、1発倒す覚悟のジャナイは、アンダードッグとして素晴らしい働きを見せ、それをコントロールし、リードしていくベイリーの安定感は、ジャナイの健闘を凌駕していく。手は合うだろうという予想を遥かに超える内容となっていったが、厳しいベイリーという新しい姿も新鮮。何回でも観たくなるテコンドー出身レスラー対決の激闘でした。好勝負。
評価:****

 

RevPro Ten Year Anniversary Night 2 8/21/2022
“スピードボール”マイク・ベイリー対レオン・スレーター

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 こちらもチャレンジマッチではあるものの、PROGRESSの竹下戦よりは攻撃パートが多く割り振りされており、自由度も高く、持ち前の身体能力を活かした攻撃をアピール出来る。ベイリーの直線的なファイトスタイルとスレーターの若さ溢れるファイトスタイルが上手く相乗効果を生み出している。

 会場は広く使い、攻防は美しく激しく、17歳でベイリーにここまで付いていける選手は中々いない。身体能力を使い続けるだけではなく、動かなくて良い所を理解する力もあり、試合運びに対する伸びしろもかなり高そうなのは期待。

 豪快なハイフライングを武器にあわやというシーンも作ったものの、最後はベイリーが押し切る展開。どんな試合も素晴らしいものに出来る無敵状態のベイリーとはいえ、スレーターがポテンシャルを十二分に発揮した熱戦でした。好勝負。
評価:****

 

OTT Third Anniversary Show – Dublin 17/10/7
マット・リドル対”スピードボール”マイク・ベイリー

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 テコンドー対MMAの異種格闘技戦再び。MMAの雰囲気を感じさせる攻防を行った後、そのままシームレスにカナディアン・デストロイヤー合戦に持っていく独創性。意表を突いた攻防で度肝を抜いた後、そのままベイリーの場外ダイブから場外戦へ。そこでも激しい蹴りの応酬と観客席でのぶら下がり式三角絞めという求められているハードヒットと自由度の高い攻防を織り交ぜた作り。

 それが全く互いを邪魔する事なく、混ざり合っているのだから恐ろしい限り。その勢いを持ったまま終盤へ。終盤も打撃の応酬と互いの得意技を織り交ぜた展開。自由度が高かった内容から王道のハードヒッティングにいつの間にかスイッチしているのも凄まじい。WXWで戦った時のシューティング・スタイルを更に昇華して熱量の高いものに仕上げている。

 必殺級の技を返し合う展開だが、変にライバリティーを作り合う等の装飾もせず、その場にあった攻防を提示しているので、しつこさを一切感じないのも見事。時間もロングマッチではないが、互いの持ち味を凝縮した一戦となっている。

 ウォルターやキースらとのスーバーヘビー路線とはまた違う、相手がベイリーだからこそのソリッドな肉弾戦となっている。名勝負。
評価:****3/4

 

WCPW Pro Wrestling World Cup Quarter Final 17/8/24
プロレス・ワールドカップ準々決勝
ウィル・オスプレイ対スピードボール”マイク・ベイリー

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 かつて期待の若手時代にPWGで対戦した後、オスプレイは新日本へ、ベイリーはビザ問題からアメリカマットに参戦出来なくなり、接点がなくなったものの、遂に久々の再会。演舞的な攻防や難易度の高い華麗なハイフライングと昔からの魅力は更に精度を上げ、攻防のバリエーションや試合構築力とそれぞれの成長を見せつける様なハイレベルな攻防の応酬。

 ベイリーは足技に加えて投げ技も増やし、オスプレイは打撃の比重を増やしてあえてベイリーに向かって行く姿を表現。ラリアットでのダブルノックダウンの美しさは圧倒的。完成度の高い試合を締めくくる終盤は大技ラッシュ。ベイリーのスタンディングでのウルティマ・ウェポン等の隠し技連発を凌ぎ切ったオスプレイが粘り勝ち。

 互いにレスラーとしての完成度の高さを示し合った珠玉の一戦。本家ワールドカップでもここまでの内容は中々ない。新日本ファン、DDTファンにも是非見て欲しい名勝負。
評価:****1/2

 

OTT Homecoming - Dublin 18/2/3

キース・リー対”スピードボール”マイク・ベイリー

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 怪物対勇者。単純明快なシチュエーション。それを演じるのに最高の人材。怪力を誇示するキース、やられながらもコツコツ切り崩していくベイリー。スタイルも親和性があるので、互いの活かし方が手に取るようにわかるのか、滞りなく試合を面白くしていく。キースの打撃がウォルターと比べると劣るので、ハードヒットでは魅せる事は余り出来なかったが、その分重量級対軽量級という大枠に絞ることが出来る。

 そして後は得意の攻防やド派手な攻撃と受けを当て嵌めていけば問題なし。両者のスマートな試合運びとインパクトを生みだす技術と類稀なる身体能力が合わさった内容。分かり易さの中に成熟した両者の上手さが詰まっている。終盤の畳み掛けも素晴らしく、最高のテンションのまま試合を締める事が出来たのも高ポイント。
 充実の名勝負。
評価:****1/2

 

GCW/VXS Jimmy Lloyd's All Grown Up 2/17/2023

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“スピードボール”マイク・ベイリー対ミエド・エクストレモ
 デスマッチ/ハードコア部門のミエドがベイリーと対峙する異次元マッチ。ただ、ミエドも日本で修練を積んでいた選手。デスマッチだけではなく、レスリングも出来る所を示す。ベイリーがわかりやすくハードヒッティングで試合の基本軸を提示することにより、ミエドもラフを織り交ぜる、対ベイリーの定石通り脚攻めを行い、それもロメロスペシャルを徹底的に使うルチャドールらしさも賢明。客席でロメロ・スペシャルを再度行ったのはこの試合のハイライト。

 実直な攻めの数々に、時折繰り出すアクセント。ハードヒッター対デスマッチ/ハードコアファイターの良さも、その枠に囚われない良さも兼ね揃えており、想像を遥かに超える大熱戦となりました。日本人にとっては、このカードが素晴らしい内容になってくれたことは、倍嬉しい。
 好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4