世界のプロレス探検隊

WWEAEW新日本インディ他、国内外問わずプロレスのマッチレビューを行っています。

AEW×新日本プロレス Forbidden Door 2024 Review スワーブ・ストリックランド対ウィル・オスプレイ他

AEW/新日本プロレス(NJPW) Forbidden Door 2024 - Zero Hour 6/30/2024
ミスティコ&ルチャ・ブラザーズ(レイ・フェニックス&ペンタ・エル・セロ・ミエド)(w/アレックス・アブラハンテス)対ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン(高橋ヒロム、辻陽太&ティタン)

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 ミスティコとルチャブロズが久しぶりに合体。1番禁断の扉感を感じるカードだが、このマッチメイクに呼応したルチャブロズ、特にフェニックスが過去最高クラスにキレキレ。全ての動きがいつもより数段上。となるとルチャブロズとしての連携も格段に上がってくる。

 ミスティコに花を持たせつつも、1番フェニックスが持っていった試合。LIJはこうなると黒子になってしまうが、ルチャリブレのエキスパートメンバーを揃えただけあり、黄金トリオの相手役として申し分ない活躍を披露。試合構築面でも安定化に大きく貢献。

 願わくばもっとヒロム対フェニックスのマッチアップが見たかった。ただ、この試合の序盤と、クライマックスにかけての怒涛のラッシュは圧倒的。十分アレナメヒコのメインを張れる好内容でした。

 好勝負。
評価:****

 

AEW/新日本プロレス(NJPW) Forbidden Door 2024 6/30/2024

 

ジ・エリート(オカダ・カズチカ、マシュー&ニコラス・ジャクソン)対棚橋弘至&ジ・アクレイムド(マックス・キャスター&アンソニー・ボーウェンス)
 キャスターの長尺フリースタイルラップからスタートし、ヒールのオカダ対棚橋という新しい画を見せることをメインとして、人気者アクレイムドと悪党エリート軍の悪さが色を添える形。アンダーカードではあるが、意味のある試合でした。
 平均的良試合。
評価:***1/4

 

オーエン・ハート・ファウンデーション・メンズ・トーナメント 2024 準々決勝
ブライアン・ダニエルソン対鷹木信悟

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 DRAGON GATE USA『Enter The Dragon 2010』での一戦以来となる激突。鷹木が相手ということでハードヒッティングに絞った形の構築に、引退ロードを彩るブライアンのダメージの蓄積、満身創痍状態からの復活を印象づける演出を織り交ぜる。ブライアンの的確な演技もあり、TVプロレスとしてのストーリーテリングはそれで補完。

 その他は鷹木と熟練の肉弾戦を展開。緩急自在のブライアンと難なく対応し切る鷹木。その上、絶妙なタイミングで決めるサブミッションと押さえるべきポイントを一切外さない。まさにメインイベント級の大熱戦でした。好勝負。
評価:****

 

AEW女子世界王座戦
“タイムレス”トニー・ストーム(c)(w/ルーサー&マライア・メイ)対白川未奈

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 マライア・メイを巡る三角関係ストーリーが、見事に嵌ったこのカード。トニーのタイムレスギミックに劣らないキャラクター性を日本人の白川が打ち出せていることは脅威。英語が喋れるのが強く、その上芸能人経験をフルに活かしたアピール力がアメリカンプロレスにベストマッチ。

 試合をする前から十分印象に残るストーリーだったが、試合は試合で、トニーのクラシカルなナックルや美しいフィッシャーマンSHといった試合構築もタイムレスなものに対し、白川は得意の脚攻めを使用。既に疲弊してきている観客にはリアクションを大きく得られなかったが、1番得意な方法論として的確な脚攻めで試合を作ったのは正解。

 このカード、このストーリーラインでかつ、ミッドカードで出来る最善の選択肢であった。トニーのストロングな面も解禁し、白川の大技攻勢とマッチしており、場所次第では倍のリアクションを得られた可能性もある。試合内容としても胸を張るべき、王座戦として合格点を得られる良試合でした。

 中々良い試合。
評価:***1/2

 

 

 

ザック・セイバーJr.対オレンジ・キャシディ

 


 全く異なるスタイルのプロレスリングエリートによる芸術作品がこの試合。硬軟自在の変幻スタイルは、ミッドカードの中でも異質の輝きを放っており、また大会全体のアクセントにもなる。

 ただ変化球の中に、豪速球も織り混ざっているのがこの試合。ストレートな技巧でも難なく魅了出来る。ザックのサブミッションに対して、オレンジもキャラクターを活かしたり、あえて無視したりと使い分けながら技術で返していく上手さを示し、ザックにエリートであると言わしめるところを披露。

 日本のファンにもオレンジが既に単なる色物ではない実力者であることを改めて示すことに成功した好勝負でした。
評価:****

 

AEW TNT王座新王者決定戦-ラダー・マッチ
KONOSUKE TAKESHITA対リオ・ラッシュ対ダンテ・マーティン対マーク・ブリスコ対エル・ファンタズモ対”スケープゴート”ジャック・ペリー

 

 


 竹下やマーク中心の人体破壊系スポット、ダンテ中心のハイフライング。そして最終的にペリーの薄ら笑いが全てを持っていく。豪華メンバーによるハイスポット連発のラダー戦。歴代のラダー戦の中でも上位に来るスポットもありと見応え十分。ハードコア系の試合が少ない大会の中で、ハードコアの魅力とインパクトを残し切った。

 その中でも竹下のチートぶりと、マークの狂い咲きが印象的。レベルの高いメンバーが揃った中で、更にレベルの高さを示した活躍でした。好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4

 

AEW TBS王座戦&NJPW STRONG女子王座戦
メルセデス・モネ(TBS ch)対ステファニー・バッケル(STRONG ch)

 


 新日本の再戦。その試合で世に明らかになったバッケルの実力。モネが負傷欠場中は、バッケルが、モネが本来やっていくはずだった立場を担い、新日本、CMLL、スターダムで大暴れ。モネの負傷が癒えたこのタイミングしかないタイミングでの再戦となる。

 試合は、モネが鍛錬を続けているルチャリブレのテクニックを披露しながら、スターパワーを利用し、試合構築を行う一方、バッケルがモネのルチャリブレのテクニックを上回るテクニックを披露し、「真のスペルエストレージャは私よ」とばかりに存在感を示す。モネにはないパワフルさもバッケルの武器。

 会場のAEWファンには「クリエイティブ・コントロールを持つ女子最高額の契約を果たしたモネが、この試合で敗れる訳はないだろう」「所詮WWEへの踏み台くらいにしか思ってないでしょ?」と次第にブーイングが飛ばされる。なし崩し的にバッケルに声援が飛び出す不穏な雰囲気。

 バッケルもずっとルードとして戦っている選手なので、試合中にダブルターンが出来るほどの臨機応変な対応は出来ないまでも、試合内容の良さで何とか持ち直す。

 なんだかんだいってもAEWの他のロスターとは安定感が違うモネ。大舞台で外さないその技量は、ギャラに見合ったものを示していた。不穏な雰囲気にも無理に乗り切らずに、試合を全うするタフさもさすがWWEのメインイベンターである。

 そしてバッケルも技術面、フィジカル力、スター性に関してもモネに劣らない活躍を残しており、世界が、そしてWWEも放っておかないほどの可能性に満ちた存在であることを再提示。

 通常形式の試合、そしてPPVの女子の試合としては、確実にトップクラスの良試合でした。好勝負には届かないものの、その技術力、フィジカルの高さに魅了されます。
 好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4

 

 

IWGP世界ヘビー級選手権試合
ジョン・モクスリー(c)対内藤哲也
 NJPW US 4月大会『Windy City Riot 2024』の再戦だが、内藤に覇気が感じられない。コンディションが悪いのか、G1を控えて抑えているのか、AEW、提携団体?言っても新日本の大会じゃないだろ?しかもIWGPがメインじゃない?20分以下?どういう扱いだというのがそのまま試合に出てしまった結果。気怠さが全体に波及。 

 何とかモクスリーも形にしようとするものの、メインが控える手前、流血や凶器使用も難しくと八方塞がり。体裁は整えているが、長時間大会で疲弊した会場と相性は最悪。この様な形でモクスリー政権が終わってしまうのはまさに悲劇。

 ある意味直近のジョシュ・バーネット戦でモクスリーの素晴らしい活躍が堪能出来ていたことが救い。モクスリーが悪いからこの試合内容となってしまったという言い訳には出来ない。
 平均レベル。
評価:***

 

AEW世界王座戦
スワーブ・ストリックランド(c)(w/プリンス・ナナ)対ウィル・オスプレイ

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 親友対決となった王座戦。オスプレイがスワーブのためにメインを王座戦にするようにTKに持ちかけたという、オスプレイならやりそうだが、それをやっていたら全てにおいて失礼に思えるゴシップが流れる中(正直新日本への配慮だとは思うが)、身体能力の高さを遺憾無く発揮した序盤の高速演舞から、完成度の高すぎる美しくも激しい攻防の連続で会場を魅了。

 物凄い試合。物凄い攻防。メインイベントに相応しい素晴らしいものではあるが、長時間大会好勝負連発の疲弊した中では、インパクトが薄れるのはAEW PPVの慢性的な課題。そしてスワーブ×ハングマンの様な記憶に残り続けるものではなく、取ってつけたストーリーということで、素晴らしい試合内容だが、長らく記憶に残り続けるものではない。

 ただ、ケチを付けられる点はそれくらいで、演者ではなく団体全体、裏方の問題である。演者は実力を最大限発揮。美しい攻防の連続から、実況席に矢のように貫通させた驚愕のスワーブストンプ、ドンキャリス絡みの演出に、スワーブがほんの少しの格差を示す形となったドラマ性の強いクライマックスと全く以って隙の無い試合内容に圧倒される。期待を遥かに超えてくる驚愕の一戦でした。

 名勝負。
評価:****1/2

 

全体評価:9.5