世界のプロレス探検隊

WWEAEW新日本インディ他、国内外問わずプロレスのマッチレビューを行っています。

ROH Supercard Of Honor 2023 Review クラウディオ・カスタニョーリ対エディ・キングストン/ヴィキンゴ対コマンデル他

ROH Supercard Of Honor 2023 3/31/2023

 


AAAメガ王座戦
イホ・デル・ヴィキンゴ(c)対コマンデル

 プロレスリングの最先端はここにある。ルチャリブレが世界に誇る最高のハイフライヤー2人による大空中戦。序盤こそ手堅くレスリングで土台を作っていったが、一度ギアを上げるとそこからは考えもつかない様な凄技の応酬。既存の飛び技のレベルを何段階も押し上げた超人的な動きの数々。

 ある程度わかっていても超えてくる。それも2人とも超えてくる。オスプレイ対リコシェの際のベイダーの様に、反対意見が出てきてもおかしくはないスポットフェストではあるものの、ここまで想像を遥かに超えるムーブ、攻防を連発すれば、もう脱帽するしかない。この試合に照準を合わしてきたのだろう、彼らの中でもこれまでの1番を出しており、カウンターや動きのキレも歴代ベストといえるもの。

 Don't think feel.。必ず観れば目を奪われる。口が開いたままになる。

 驚愕の好勝負でした。
評価:****1/4

ROH世界TV王座戦
サモア・ジョー(c)対マーク・ブリスコ

 


 亡くなった実兄ジェイの魂を受け継ぎ、シングルレスラーとして戦いを続けるマークに対し、ROHの象徴として初期から共に戦ってきた男ジョーが、鬼神の如く厳しい攻めと挑発を交えたヒールプレイで高い壁となる。

 ダービー戦の様な過激なドミネイトではないものの、1発の重みはいつも以上。加齢を円熟味に変え、持ち前の鋭さも必要な展開ならば常時出せる様になっている。マークの得意なスーサイドなスポットを配置。

 シングルレスラーとしては兄ジェイ程特別な選手ではないマークだが、ジェイの死という要素は彼にドラマ性を纏わせる。派手で過度な演出はないものの、背景とジョーの重厚な試合構築により、特別な試合に押し上げることとなった。

 最後はあっさり目だが、ミッドカードなのでこれくらいに抑えるのも理解出来る。本人達としてもROHとしても組んだ意義が大きい試合でした。
 好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4

 

 

ROH世界タッグ新王者決定戦-Reach for the skyラダー・マッチ
ルチャ・ブラザーズ(ペンタ・エル・セロ・ミエド&レイ・フェニックス)(w/アレックス・アブラハンテス)対オージー・オープン(カイル・フレッチャー&マーク・デイヴィス)対ザ・キングダム(マイク・ベネット&マット・テイヴェン)(w/マリア・カネリス-ベネット)対トップ・フライト(ダンテ&ダリウス・マーティン)対ラ・ファクシオン・インゴベルナブレ(ルーシュ&ドラリスティコ)(w/ホセ・ジ・アシスタント)

 多人数は多人数でもタッグなので、とにかく人が多く、テキパキとスポットを回していかないといくら時間があっても足らない状況だが、TFを除けばベテランばかりなので、試合構築もスポット回しも散らからず、主役と脇役のスイッチ切り替えが上手いので、色んな状況にも対応出来る。

 連鎖ダイブにラダーを使った攻防を次々と投入。ラダーを使う攻防のバリエーションも用意していて、尚且つ、基本的に凶器攻撃がラダー縛りになりがちだが、椅子やテーブルも少し交え、特段凶器がなくとも魅せる事が出来るメンバーの強みも発揮。

 キングダムの流血やトップ・フライトのハードバンプなど積極的に自己主張して、それが独りよがりにならず歯車として回っているのが良い。

 そして最後は、特大のテーブルスポット。喰らった選手の負傷は心配だが、命を賭けるに相応しいシーンであることには違いない。ブリスコズ追悼ラダー・マッチという重みに潰されず、各チームが存在感を示した好勝負。
評価:****

 


ROHピュア王座戦
ウィーラー・ユータ(c)対柴田勝頼
 絶対にユータは嬉しいに違いないマッチメイク。数年前までは単なる一若手だったユータが柴田を王者として迎え撃つまでに到達した事実は感慨深い。激しい攻防や打撃よりもグラウンドテクニックで魅せるピュア・ルールならこいつしかいないだろうという抜擢。

 柴田を立てながらも、技術があるからこその返し、ピュア・ルールならではの攻撃を見せ、同時にヒールとしての働きも試合の重要なアクセントになっており、狙い通りの内容となっている。スタイルは共通点しかないので、安定感も高い。

 王者交代となったが、病み上がりとはいえ格上柴田にユータが存在感を示した試合でした。中々良い試合。
評価:***1/2

 

ROH世界王座戦
クラウディオ・カスタニョーリ(c)対エディ・キングストン

youtu.be

 


 お前は俺が見てきた中で最も才能を無駄遣いしている。お前とは若いころに出会った。お前は目に炎を宿した男だった。その炎をつかみ取ることだってできたのに、お前は自己憐憫に耽っては全部台無しにしてきた、何度もだ!

 これはクラウディオが、プロモでエディに言い放った言葉。確かに後一歩のところでいつも届かない。スターになる道が見えているのに、いやもう歩んでいるのに、自分から横道に逸れてしまう。こちらが観ていてももどかしい。でもその人間臭さが、プロレスファンという世間からは傍に追いやられるジャンルを応援する者を惹きつける。それがエディ・キングストンたる所以。

 才能を無駄遣いしているわけではないが、吊り下げられているブラスリングを掴み取る事が出来たのに、掴めなかった所はその言葉を放ったクラウディオも同じである。
素晴らしい試合を数多く残し、トップに立つべき存在として必ず名前が上がっていたが、ビンセント・ケネディ・マクマホンのお眼鏡には敵わず、タッグ屋、US・IC王座戦線グループから上には行けず、団体を去る事となった。

 自身のWWE時代を今のエディに重ねている。かつてのルームメイトであり、長い付き合いだからこそその言葉を伝えられる。

 そんな神からの才能を預かったけれども、メジャープロレスでトップに立つには回り道をしてきた両雄は、2011年3月13日 CHIKARA Pro『Creatures From The Tar Swamp』以来12年ぶりの対決。

iwtv.live

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 わかりやすいメジャープロレスの流れをぶち壊し、ゴツゴツした打撃戦、場外床への投げ技と序盤から過酷な消耗戦となる。超人、強さの象徴であるクラウディオに、エディは得意のラフを交えたハードヒットスタイルで勝負。

 巧みなダメージ表現、生き様を示す様な色気は、ある意味何でも高次元で出来るクラウディオにない部分。互いが互いの足りない所を埋めていき、長所の威力を倍増させる。一定のエンターテイメント性は守りつつも、名レスラー2人によるプロレスリングの激しさ面白さを凝縮した内容。

 長い関係性の2人しか出来ない領域であり、円熟味を増した今だからこそ出来る試合。これはAEWではなく、ROHの世界観だからこそ生きる。

 強くて上手い完全体のクラウディオの存在を示した上で、プロレスファンの希望を具現化した様な存在であるエディがギリギリのところまで追い詰めていく展開は、嫌でも感情移入してしまう。その様なドラマチックな試合を完璧超人のクラウディオも出来るのだと再提示する試合でもある。まさに唯一無二の激闘。

 単品でも当然最高に楽しめる内容ではある。しかし、長く米インディから追い続けてきたファンに対するご褒美の様な試合でもある。最高のプロレスリングに極上のストーリーテリングが合わさる。在りし日のROHが甦った名勝負。
評価:****3/4

 

全体評価:10