世界のプロレス探検隊

WWEAEW新日本インディ他、国内外問わずプロレスのマッチレビューを行っています。

AEW Review 2022 "次は東京ドーム? 禁断の扉2?" ジ・エリート対ユナイテッド・エンパイア/ブライアン対ガルシア 3本勝負他

AEW Dynamite #150 8/17/2022
3本勝負
ブライアン・ダニエルソン対ダニエル・ガルシア

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 因縁が続くグラップラー対決だけあり、足関節の奪い合いからシュートスタイルの攻防で始まった1本目。お互いに決死の覚悟で厳しく攻め立てる。ブライアンは、ロメロスペシャルの状態で首筋にエルボーを叩き込む荒技を繰り出せば、ガルシアも一歩を引かずに打撃と関節技で反撃。

 飛び切りの鋭さを持ったキラーモードでありながら一つ一つの攻防もそれに伴うダメージ表現も秀逸。これまで築いてきたストーリーを更にこの試合で増幅する形で展開。ガルシアロック改めドラゴンスレイヤーで仕留めるかと思いきや、腕決め式ドラゴンスリーパーという新技を用意したガルシアが見事1本目を奪取。

 グロッキー状態のブライアンをよそに、憎々しげに挑発を続けながら甚振るガルシア。すぐ反撃に行かせず、前回の試合でターニングポイントとなった剥き出しの場外床へのDDTまで再び流血に追い込む状態にまで窮地に追い込んだ後で、隙を突いた丸め込みでタイに戻す丁寧な見せ方も素晴らしい2本目。

 全てが整った3本面では、蓄積されたダメージを強調する様なグロッキー表現は継続しつつも、得意技を次々と繰り出す最終決戦に相応しい展開に。玄人好み過ぎる内容なのと、2人だけの世界に入ったかの様な特異な空気感での攻防が続いた為、ある意味観客を置いてけぼりにした所はあったが、一つ一つの攻防の質は高くそして最高に厳しく、これぞタフマッチというべき死闘に仕上がっている。

 前回の試合に引き続き、0708年の全盛期ROHの試合内容を現代に甦らせたかの様な一戦となっており、今のこの2人にしか出来ない唯一無二の激戦でした。『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』の名に恥じない名勝負。
評価:****1/2

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AEW世界トリオス王者決定トーナメント1回戦
ジ・エリート(ケニー・オメガ、マット&ニック・ジャクソン)(w/MTナカザワ&ブランドン・カトラー)対ラ・ファクシオン・インゴベルナブレ(アンドラーデ・エル・イドロ、ルーシュ&ドラゴン・リー)(w/ホセ・ジ・アシスタント)

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 バックスのミステリーパートナーは大方の予想通りケニー・オメガ。ケニーはアンダーウェアとサポーター着用とコンディションが万全ではない悲壮感を煽りながらも、バックスと的確な連携を見せ、豪傑LFIに対峙。LFIもエリートに負けず劣らない連携力と個々の実力を誇っており、拮抗した戦いとなる。

 2段支配の特別バージョンから6人入り乱れた展開まで、テンポ良く隙のない構築を行う。ケニーの復帰試合にしてはこじんまりとしているのは気になるが、業界最高のトリオ対決に相応しいハイレベルな内容となりました。
 好勝負。
評価:****

全体評価:8.5

 

AEW Dynamite #151 8/24/2022
AEW世界王座統一戦
CMパンク(World)対ジョン・モクスリー(Interim)

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 ここ数週間は、ビンス・マクマホンではなく、CMパンクを巡る悪い噂がAEWを支配してしまった世界のプロレス界。HHH体制で内容が劇的に良化し、勢いに乗るWWEの反動から、良い流れでずっと来ていたサイクルが落ち着き、今まで表面化してこなかったボトルネックの部分が噴出し、そこに良い面は神がかるが、悪い部分も神がかっている良くも悪くも劇薬だったパンクの副作用が回ってきたのが今。

 シカゴのALL OUTに合わせての大復帰となるはずが、その2週間前にわざわざワークの負傷から秒殺劇を打たなければいけない程のバタバタ具合。今まではパンクがコントロール出来る相手ばかりだったが、パンクは「いつもユニットの3番手」と揶揄したが、同じくWWEAEWの頂点を極めた正真正銘プロレス業界のトップドッグであるモクスリーであれば、パンクが完全にはコントロール出来る相手ではない。実績も腕っ節もある狂犬はMJFやハングマンの様には上手くは行かない。WWEが築いてきた管理プロレスのアンチテーゼとしてレスラーにクリエイティブ権を多く与えてきたAEW。その綻びが見えてきている今、トニー・カーンはこの事態とCMパンクをコントロール出来るのか。 

 コーディ離脱に次ぐ正念場が到来。とはいえまだ出来て3年の団体なので、十分凄くて、温かく見守るべきなのは理解しつつも、理想郷であるNXTを潰された逆襲に燃えるWWE、ハンターとショーンのDXによる反撃に付いていかなければいけない。
評価:なし

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AEW世界トリオス王者決定トーナメント1回戦
デス・トライアングル(PAC、レイ・フェニックス&ペンタ・エル・セロ・ミエド)(w/アレックス・アブラハンテス)対ユナイテッド・エンパイア(ウィル・オスプレイ、カイル・フレッチャー&マーク・デイヴィス)

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 安定したトリオの攻防とオスプレイ×フェニックス、オスプレイ×PACの大空中戦に度肝を抜かれる事でこの評価ではあるが、オージー・オープンの認知度が低く、キャラクターがある訳ではないので、単なるオスプレイの子分という立ち位置。実力はこの舞台に出てくるに値する選手で、連携合体技も豊富、個々もUKとオーストラリアトップの実力があるが、ヒールポジションが邪魔して発揮出来ず。オスプレイが攻め手受け手全てを担っていたのが印象的。

 上記の組み合わせによる個々の爆発力は凄まじかったが、トリオの攻防ではスペクタクル度を余り出せないまま、キップ・セイビアンの介入などもあり、正直ウィル・オスプレイのアピールマッチに留まった一戦。

 そしてオスプレイとオージー・オープンを使う事、このスポットを与えることに異論はないが、ケニー・オメガ復帰戦以上となる25分の長尺は必要ない。15分で良くて、その間に干しているイーサン・ペイジの試合や女子の試合やプロモも入れられる。オスプレイは世界最高のレスラーの1人で、ケニー戦は絶対に見たいドリームマッチだが、オスプレイで全米の視聴率や話題を生み出せるまでには行っていない。

 この緊急事態に不満が噴出している自らの団体のロスターの出番を削り倒す前にする事はあるはず。はっきり言って新日本とメルツァーのレートに気を使い過ぎ。

 好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4

 

AEW Dynamite #151 8/31/2022
AEW世界トリオス王者決定トーナメント準決勝
ジ・エリート(ケニー・オメガ、マット&ニック・ジャクソン)(w/MTナカザワ&ブランドン・カトラー)対ユナイテッド・エンパイア(ウィル・オスプレイ、カイル・フレッチャー&マーク・デイヴィス)

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 前週の舌戦そのままに乱戦ベースでスタート。乱戦から場外ダイブを経て上手く落ち着かせるのはお手の物。PWGなどでも戦っていることから、ケニー対オスプレイを最初から見せていく形なので、溜めてからの爆発ということはないが、エリートが熟練の連携で支配する序盤に始まり、オスプレイが大活躍する狙い通りの展開。

 オージーオープンも得意の連携を連発し、マーク・デイヴィスが持ち前のパワーを見せる展開も用意されているが、対になる相手がバックスなので、もう少し活躍する時間を与えても良かった。タッグとしても個々としてもそれに見合う実力は備えている為に惜しかった。それによりオスプレイがケニーと対になるエース格なのに、受けに受けていた所は歪になっていた。

 

 もう一つは中盤の転調のやり方が弱く、このクラスならばもう少し溜めは作れたはず。バックスの連携、個々の爆発力で試合を作ってしまい、ケニー対オスプレイはそこそこに抑えながらも、オスプレイも類稀なる実力を発揮し、PWGでの試合のオマージュなど見せ場は十分作っており、来たるケニー対オスプレイのシングルの種蒔きとしては合格でしょう。
 好勝負。
評価:****

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