世界のプロレス探検隊

WWEAEW新日本インディ他、国内外問わずプロレスのマッチレビューを行っています。

AEW Review 2021-2022 "ハングマン”アダム・ペイジ対ブライアン・ダニエルソン 2 他 ~年間最高試合候補! 蘇りしナイジェルとの死闘~

AEW Rampage #3 8/27/2021
AEW世界タッグ王座戦エリミネーター・トーナメント決勝
ルチャ・ブラザーズ(ペンタ・エル・セロ・ミエド&レイ・フェニックス)(w/アレックス・アブラハンテス)対ジュラシック・エクスプレス(ジャングル・ボーイ&ルチャサウルス)(w/マルコ・スタント)

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 豪快かつトリッキーな連携を武器にする両タッグ。シングルの実力も高く、飛び道具も満載。バックスから拝借した様なスーパーキック・パーティや連携式カナディアン・デストロイヤーといったクレイジーなスポット連発で、怒涛の畳み掛け。近年のタッグのトレンドをこれでもかと織り込んだ見応え満点の好勝負。
評価:****


AEW Dynamite #118 1/5/2022
AEW世界王座戦
(60分フルタイムで決着がつかない場合は、ジャッジマンの判定で決着)
“ハングマン”アダム・ペイジ(c)対ブライアン・ダニエルソン

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前回、60分フルタイムドローという通常放送にはあり得ないレベルの試合をやってのけた2人の再戦。ブライアンが言うように、プロレスはコンバット・シアターである。これを体現しているのはこの試合も同じ。

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 フルタイムドローだったが、格上だったブライアンにもう少しで勝ち切れた自信を武器に、ヒールプレイでいなすブライアンを攻略し、得意技を次々決めて追い詰めるペイジ。ブライアンは、腕攻めの伏線を打つけども、ペイジの勢いは止められない。

 しかし、鉄階段への激突でペイジはおびただしい流血姿に。攻め時と見たブライアンが、相手をおちょくる様なヒールスタイルから一点、厳しく傷口を抉り、マウントポジションで痛めつけるキラーモードに転換。鬼神の様な表情で追い詰めるブライアンの表情と動きは流石の一言。ペイジもグッタリした受けでまずは応える。

 そこで手を緩めないブライアンだったが、ペイジは鉄柱攻撃で逆にブライアンを流血に追い込む。凄惨な試合となったこの時点で観客も引いている人と固唾を飲んで見守る人と二分していたが、ペースを落とす様なことはしないのが今のAEW。

 ペイジの流血が止まってきた所で、今度はブライアンがそれ以上の大流血。出血を止めようとしたスタッフを制止したのはWWEへのアンチテーゼでしょう。

 ペイジが勢いを吹き返し、場外でのデッド・アイやムーンサルト等とっておきの一撃も放っていくが、死んだふりをした所でブライアンの裏必殺スモールパッケージにトライアングル・チョーク、表必殺のルベル・ロックにニー・ストライク、今回は、鈴木みのるオマージュではなく、ジャッジマンであるジェリー・リンオマージュのクレイドル・パイルドライバーと手を尽くしてもペイジを倒せない。

 再三耐え切ったペイジが、一瞬の隙を突いて逆転し、約30分再三躱されていたバック・ショットを最後の最後に決めて勝利という美しすぎる結末は、その激闘を締め括るにこれしかない一撃である。序盤は、前回対戦の流れを汲んでいるとはいえ、大人しめでストーリーライクな試合になるかと思ったが、大流血で一転させ、キラーモードで一気に締めるのは、ブライアンが絶対王者だった往年のROHを彷彿とさせる試合展開。第二戦だからこそ最大限に光る一戦。滅多に流血なんてしないペイジを流血させることで一気に引き込ませた。

 

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 中盤のターニングポイントとなった鉄柱にぶち当てるスポット、終盤の印象的なシーンである頭突き合戦が、2006年のROH『United』ROH世界王座&ピュア王座統一戦、ブライアン・ダニエルソン対ナイジェル・マッギネスのセルフオマージュだったのも見逃せない。ペイジの必殺技バック・ショット・ラリアットが、かつてのライバル、ナイジェルの必殺技ジョー・ブリーカー・ラリアットと重なって見えて、この演出を選んだのなら、00年代からの米インディファンは感涙もの。

 


更にジャッジマンが、インディ~ROH時代の戦友でもあるジェリー・リン、ブライアンが、初めてWWEで、当時の世界ヘビー級王座を戴冠した際の関係者である”ビッグ・ショー”ポール・ワイト、マーク・ヘンリーとブライアンに所縁のあるメンバーであるのも憎い演出。

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 その様なブライアンの歴史要素満載の内容だが、ペイジもハードコアではない流血戦に上手く対応しており、ストーリーにあやかった人気とブライアンにはない豪快な攻撃が非常に映える。過去のオマージュと経験を、現在進行形のプロレスに絶妙に反映させ、TVプロレスとライブプロレスの良い所取りも果たす。両者の良い所を余す事なく注ぎ込んだ激闘。新年最初から年間ベスト最有力候補の一戦でした。5スターマッチ。
評価:*****

 

AEW TBS初代王者決定トーナメント決勝
ジェイド・カーギル(w/”スマート”マーク・スターリング)対ルビー・ソーホー

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 現世に降り立ったX-Men最強の戦士ストームの化身、ジェイド・カーギルがその体躯とカリスマ性を武器に、腕達者ルビーを翻弄するこの試合。やはり存在感は他を寄せ付けない。

 しかし、プロレスはそれだけでは務まらない部分があるので、試合構築はルビーが担当。悪戦苦闘はしながらもベテランの腕で上手く試合を成立。ジェイドのお子さんが観客席で見守るという負けるわけがないシチュエーションに追い込みすぎたのはドラマ性を削ぐ要因となる。ロサとメルセデスのストーリーも入れるなど忙しなく、ジェイドのStrong Womanらしさを活かすには、スターリングも下手に介入出来ないので、試合の幅が狭まる。

 ジェイドは、キャリア1年未満で色々な縛りがある中では本当に良くやっているけれども、トップレベルに送り出すには、上手い選手とのこういう試合を続けるしかないだろう。順調に育てば、ビアンカ・ブレアー、いやシャーロット・フレアー級の反則的な存在になり得るはずなので、じっくり焦らずに行きたい。平均より上。
評価:***

 

AEW世界タッグ王座戦
ルチャ・ブラザーズ(c)(ペンタ・エル・セロ・ミエド&レイ・フェニックス)(w/アレックス・アブラハンテス)対ジュラシック・エクスプレス(ジャングル・ボーイ&ルチャサウルス)(w/クリスチャン・ケイジ)

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 始まりこそ4人が絡む変則的な立ち上がりだったが、ルチャ・ブロズがジャングル・ボーイをローンバトルに追い込む流れで中盤まで持っていく。控えを攻撃し、煽りもありとルチャ・ブロズのお得意のパターンなので安定はしているものの、スピードに乗った時のクオリティよりは少し劣る。

 ローンバトル終了後は、ルチャサウルスのクリーンハウスから4人入れ乱れての展開となり、両タッグの連携が決まり出す。JEもルチャ・ブロズに負けないだけの連携力を持つので、前回の対戦同様インパクト満点の攻防が続く。終盤には謎の暗転があり惑わせるものの、豪快な連携ですぐさま持ち直すのは流石の一言。

 そして満を辞しての場外テーブル葬を繰り出したものの、ここでフェニックスが負傷してしまうアクシデントが発生。それを見たのかすぐに終わらせることとなってしまったのは惜しまれる。クライマックスが惜しまれるけれども、王座交代劇には十分な内容は備わっている。好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4
全体評価:9

 

AEW Rampage #24 1/14/2022
AEW世界タッグ王座戦
ジュラシック・エクスプレス(c)(ジャングル・ボーイ&ルチャサウルス)(w/クリスチャン・ケイジ)対ダーク・オーダー(アレックス・レイノルズ&ジョン・シルバー)(w/イービル・ウノ&アナ・ジェイ)

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 わざわざ彼氏ジャングル・ボーイが対戦相手の時にアナ・ジェイをセコンドに付かせるのは謎だが、シルバーとレイノルズが熟練のタッグワークを見せると、JEは、ルチャザウルスの巨体を武器に反撃。JEのアピールマッチというよりは、シルバーとレイノルズの実力を示す内容であり、それが上手く嵌っている。

 ジャングル・ボーイは受け手になっても試合を円滑に進められる存在になっており、それもまた成長を感じさせるものである。また、長らくフューチャーされているシルバーの爆発力がJE相手でも炸裂するだけに留まらず、レイノルズとのビーバー・ボーイズとしても存在感を残した。ペイジとのストーリーが終わりつつある中で、この活躍は大きい。中々良い試合。
評価:***1/2