世界のプロレス探検隊

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AEW Full Gear 2021 Review ケニー対ハングマン/CMパンク対エディ・キングストン他 ~The ELITE STYLE~

AEW Full Gear 2021 11/13/2021

 

www.fite.tv

 

マクスウェル・ジェイコブ・フリードマン対ダービー・アリン(w/スティング)
 オープニングである点、団体を背負う若手対決である点を踏まえたレスリングマッチ。そこにMJFのヒールワークやアリンのハードバンプをアクセントとして加えながら、エプロンでのツームストーンやアリンならではのカウンター技を多数用意し、若手らしい独創性にも溢れている。

 スティングの助演やストーリー的な要素を組み込み、最後はチープショット一閃。彼らの良さが全て発揮された大激戦。クライマックスをオープニング仕様にしていなければ、名勝負クラスは容易に作り出せたでしょう。文句無しに好勝負。
評価:****1/4

 

AEW世界タッグ王座戦
ルチャ・ブラザーズ(c)(ペンタ・エル・セロ・ミエド&レイ・フェニックス)(w/アレックス・アブラハンテス)対FTR(ダックス・ハーウッド&キャッシュ・ウィーラー)(w/タリー・ブランチャード)

youtu.be 現代最高のトップタッグ対決再び。この試合も前の試合同様物凄く手が合っているかというとそうではないものの、一定のラインで合わせることは容易ではあり、合わないなら合わないなりに別の仕掛けとばかりに、古典的なスポットを入れたり、あえてベルト攻撃を中盤に入れたりとFTRがクラシカルと現代をミックスした試合運びを見せており、ルチャブロズもFTRのやりたい事を尊重しながら、自らの見せ場では最大風速で爆発して見せることで、ミスマッチさがかえって心地良くなっていく面白さがある試合。

  

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 フィニッシュはいまいち盛り上がりきらなかったが、FTRによるかつてのライバル、アメリカン・アルファのグランド・アンプリチュードを繰り出す細かい芸や、フェニックスの驚愕の動き連発も堪能出来る濃密な一戦でした。好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4

 

AEW世界王座エリミネーター・トーナメント決勝
“アメリカン・ドラゴン”ブライアン・ダニエルソン対ミロ
 この試合もレスリングベース。負傷しているミロの脚に狙いを付けるなど、このカードらしさがある中で、唯一異なる所は、WWEでは弱者として描かれがちだったブライアンは、今や無敗の強者として描かれており、ずっと強者であるミロ以上のレベル。

 となるとこれまで他をねじ伏せ続けてきたミロの強さは、これまで程活きて来ない。ブライアンはその辺りを調節して、ダウンベースの要素を強くして対応していたが、アンダーカードである点、この試合までの2戦がかなり盛り上がった点、玄人好みなテクニカルさはありつつもこの試合に関してはWWEスタイルが強く、戦前の期待値からは抑えられた試合となっていた。

 本当ならブライアン対モクスリーをするはずで、そのバックアップなので、ストーリーを描き切れなかった事も要因の一つでしょう。中々良い試合。
評価:***1/2

 

フォールズ・カウント・エニウェアマッチ
スーパークリック(アダム・コール、マット&ニック・ジャクソン)(w/ブランドン・カトラー&MTナカザワ)対ジュラシック・エクスプレス(ジャングル・ボーイ&ルチャサウルス)&クリスチャン・ケイジ
 このカードでハードコアとなれば、PWG的な激しくも楽しいハードコア戦となり、そこにアリーナの客席やステージを活用するメジャーにしか出来ない演出を加えていく安定の試合内容。WWEには出来ないコールの流血は、特段必要性はなかったものの、テーブル葬も連発、ステージや花道での投げや攻防で激しさを生み出し、飛び道具ルチャサウルスの活躍もあり、トリオスマッチならではの演出も多数。

 最後は、クリスチャンがジャングル・ボーイにワンマン・コンチェアトを継承する形でフィニッシュ。基本的にエジクリとオートンなどの関係者位しか使ってない特別な攻撃であり、これは今後ジャングル・ボーイの今後のキャリアでもキーポイントとなる伝承だと思うので、目に焼き付けておきたい。好勝負。

評価:****

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AEW女子世界王座戦
Dr.ブリット・ベイカーD.M.D(c)(w/レベル&ジェイミー・ヘイター)対タイ・コンティ
 コンティが攻めダルマとなり、ベイカーは受けながらものらりくらりと反撃する形。存在感ではベイカーだが、物量勝負になるとまだ厳しい部分がある。受け重視にした結果、コンティの良さが際立ってはいるものの、疲れ切った会場の雰囲気を持って行けるだけのストーリー性と実力はまだなく、PPVの一戦としては普通に合格点なのだが、上がり切った今のプロレス業界の女子王座戦におけるハードルを越えるには、まだまだレベルアップと内容の安定化が必要である。コンティは、志田光と物凄く手が合った様に、日本向きの選手でもあるので、国際線が開いたら来日にも期待したいところ。

 平均的良試合。
評価:***1/4

 

CMパンク対エディ・キングストン

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 声無き声の代弁者?勝手にAEWの兄貴分を気取りやがって、嘘こくな。
 宣教師対悩めるキングの遺恨精算戦。パンクは短めだがインディ時代を思わせるトランクススタイル。それはインディ時代にも見えるが、UFC時代にも見える。更にパンクが試合中盤で使ったシナの5ナックルシャッフルへの得意のシークエンス。インディとメジャー、レスラーとMMAファイター、善と悪、色々な境界線をチラつかせることで人々を魅了してきたパンクならではのマインドゲームに、キングストンは試合前の裏拳に代表される様に真っ向勝負を挑む。

 

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 パンクが流血する程のラフファイトもあり、ハードコアではないハードコアファイトを繰り出していた。パンクがフェイスで、キングストンがヒールだが、双方に善も悪も感じられ、ファンも双方に歓声とブーイングを飛ばし、むしろフェイスのパンクに多くブーイングが飛ぶ状況を、「Summer of Punk 2011」の時のシナに自分を置き換えたとするならば、余りにもプロレス頭が高すぎる。あの時なら誰しもCMパンクになりたいものだが、そこでジョン・シナになる演出をするのがCMパンク当人というのが、感慨深い。「Summer of Punk 2011」のプロモにて「ジョン・シナは、ボストン・レッドソックスではない、ニューヨーク・ヤンキースだ」と言い放ったパンクが、ニューヨーク出身のキングストンにシバかれるのも堪らない。

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 試合時間が10分少々だったので、終盤に巻きが入っており、クライマックスは正直唐突。先のタッグ戦に時間を割くなら、この試合に後5分与えれば、名勝負は確実だった。それ程非の打ちどころが無いほど観る者を魅了していた一戦。血塗れになりながらもGTSで突き放すパンクに、瀕死になりながら中指を突き立てるキングストンという絵も見事に嵌っていただけに、唐突に終わらせたのは残念だった。限りなく好勝負に近い、好勝負に届かない良試合。

評価:***3/4

 

ミネアポリス・ストリート・ファイト
ジ・インナーサークル(クリス・ジェリコ、ジェイク・ヘイガー、サミー・ゲバラ、サンタナ&オルティズ)対メン・オブ・ザ・イヤー(スコーピオ・スカイ&イーサン・ペイジ)&アメリカン・トップ・チーム(ジュニオール・ドス・サントス、アンドレイ・アルロフスキー&ダン・ランバート)
 正直1番この試合にいて欲しいホルヘ・マスヴィダルはUFCの試合が控えている為参戦出来ず。ランバート、JDS、アルロフスキーとレスラー経験が乏しいメンバーが揃った為、MOTYの2人に大きく負担が掛かる形。ATT勢も攻防は行うものの、長くは持たない事が早々に露呈された為、早々に凶器を導入し、ハードコアへ。様々な凶器が飛び出すので、楽しめる。

 別にこの位置なので、ファンマッチである事が1番の存在意義。そういう意味では超豪華で、MOTY、オルティズ&サンタナ、サミーが身体を張って締めてくれるので大外れにもならない。実際にジェフ・ハーディを彷彿とさせる様なスーパーダイブもあり、箸休めにしては十二分過ぎる特大スポットで、メインに向けて上手くリセットが出来る内容ではありました。平均レベル。
評価:***

 

AEW世界王座戦
ケニー・オメガ(c)(w/ドン・キャリス)対”ハングマン”アダム・ペイジ

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 今回も内容特盛だったPPVのメインは、宿命の元パートナー対決。紆余曲折はあったが、遂に辿り着いた中で、正直ここまでの大河ドラマ以上のストーリーを作り上げて、ペイジにベルトを渡さない選択肢はなく、更に約1年の在位期間を迎えるケニー政権もかなりやり切った状態である事もそれを後押ししており、後はどう渡すかという状態で迎えた本試合。

 ロックアップで始まったものの、早めに動きを加えて、アクションを多めにしていく流れ。オーソドックスなフェイスヒールではあるものの、この2人らしく攻防で試合のリズムを作る。技数を減らしたヒールスタイルも取り組んできたケニーがその姿を見せるかと思ったが、ヒール的な動きはするけども、これまでの試合と比べるとよりペイジを立てようとしていた印象が強い。

 ペイジはペイジで、流血こそしていたが、完璧なストーリーに比べると、フェイスとしての立ち振る舞いは弱い。成長し続けており、アクション面は素晴らしい。ただトップスターとしてはまだまだ未完全である。だがそれも含めてペイジである。その完成されていない姿が応援したくなる。それはこのペイジ復活ストーリーと上手くリンクしているので、立ち振る舞いの弱さは気にならない。それもパンクやアメドラ、コーディ辺りと比べてというだけである。

 その他興味深かった点としては、WWEを経験しているかそうではないかで、ビッグファイトにおけるテンポの速さがやはり違う点。この試合は、パンクやアメドラ、クリスチャン辺りと比べると2〜3拍は早い。彼ら的には溜めを作っているとはいえ、それでも早く見える。WWEがいかにじっくり重厚感を意識した作りをしているかが良くわかる試合内容である。だからといって悪い訳では勿論なく、豪快かつ丁寧に一つ一つの攻防を紡いでいる。この試合がいかに大切かはひしひしと伝わってくる。

 スケールとスピード、ハードである点を大事に試合を作っていき、垂直落下系の技も多く飛び出し、得意技必殺技も大盤振る舞い。エプロンでの攻撃や場外テーブル葬、ニアフォール連発、レフェリー失神に掟破りとこれでもかと演出を加えていく。アメリカンプロレスはベースだが、10年代のPWGとニュージャパンスタイル、あえてこう呼ぶべきか「Elite Style」の総決算の一つともいえる試合でした。

 バックスが登場するも介入せずに、ペイジが押し切るというストーリー性も帯びたフィニッシュで歓喜の瞬間を迎えた。元WWEがかなり加入して、団体もロスターも常に変化していく中で、これがAEWオリジナルだと言わんばかりの直球な内容。

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 COVID ERA〜AFTER COVID ERAを団体も国境も越え縦横無尽に駆け巡ったプロレス史に残る政権の最後の大仕事を完璧にやり遂げたケニー、このストーリー、この試合が一生を左右する事となるその重圧を跳ね退けて、未来を切り開いたペイジ。ROH〜新日本〜AEWと数年に渡る超大作ストーリーの締めくくり、そして新たな幕開けを告げるマイルストーン。素晴らしいメインイベントでした。名勝負。
評価:****1/2

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全体評価:10