世界のプロレス探検隊

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AEW Review 2021 ブライアン・ダニエルソン対エディ・キングストン他 ~The Original Best In The World~

AEW Rampage #12 10/29/2021

AEW世界王座エリミネーター・トーナメント準決勝
“アメリカン・ドラゴン”ブライアン・ダニエルソン対エディ・キングストン

youtu.be 歩んできた道は全く異なるものの、インディのレジェンドとして今やメジャーの大スターとなった両雄の再会。ROH vs CZWの決着戦となったCage of Deathで遭遇し、ブライアンがリングアナのジャスティン・ロバーツの首をネクタイで絞めてWWEをクビになった後のインディ復帰初戦のChikara『We Must Eat Michigan's Brain』では、(恐らく)シングル初対決を戦った間柄。とはいえ、互いに別のルートで別のライバルが多く、交わることは少なかった。

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 キングストンは、すっかりAEWでは若手の兄貴分、大会の締めのマイクを行うなど、門番的な存在となったが、今回仄めかしたヒールターンの影響もあったかもしれないけれども、まず出てきた時の表情が違う。殺しに行く目をしていた。その勢いのまま、2000年代のCZWで、クリス・ヒーローをボコボコにしていた頃の様なチョップを連発し、ブライアンの胸板は真っ赤。加えてその頃よりも格段に洗練されているので、無駄な行動は取らず、ハードヒッティングの良い部分だけ際立つ形。ブライアンもこれを待っていたという様に耐え忍びながら返す刀で打撃を見舞う打撃戦に。

 ブライアンもケニー戦やみのる戦よりも更に打撃の強さを上げて、キングストン仕様の試合運びをしていたのが印象的。これぞスティッフというハードヒット。厳しい打撃戦の中に、互いの得意な表現を持ち込み、ドラマ性を倍増させていた。

 また、キングストンは、怒りや憎しみを込めている時が1番光る。ベビーフェイスのキングストンも信頼がおけるが、やはりストリート魂全開で相手に噛み付く時が最高。それでいて弱った姿を見せる変化球も投げるキングストンらしさ抜群。コーディ戦、モクスリー戦やミロ戦を超えるレベルでキングストンの魅力大爆発。ブライアンもそれをわかっているかの様に、良さをこれでもかと引き出しに引き出していた。メジャー仕様にまとめてはいるものの、ベテランになった今でも若手には出来ない鋭さで、狂った00年代をトップレスラーとして生き抜いてきた彼らだからこそ出来る内容。

 クライマックスも劇的。小橋健太ばりのチョップ、川田利明ばりのストレッチ・プラムやジャンピングハイを決めるキングストンに対し、「俺もノアに出ていたぞ!」と言わんばかりのローリング・エルボーを見舞う。それは三沢光晴オマージュでもあり、当然キングストン最大の好敵手にして、ブライアンの好敵手でもあったクリス・ヒーローの得意技でもある。脚を痛めるそぶりを見せるなど、ダメージ表現を強くしていたキングストンもこれにはノーセルで、バックフィストを返す。そして観客のスタンディングオベーション。これは、AEWのベストモーメントの1つに挙がるでしょう。

 最後もブライアンの裏必殺技の1つ、トライアングル・チョークで、中指を立てて耐えるキングストンを締め落とし、最も美しい形で激勝。肉を切らせて骨を断つ様なハードヒッティング合戦に、シュートスタイルの要素も感じさせるグラウンド、鋭角なスープレックスと、両者が趣向するジャパニーズスタイル要素満載の内容。息を引き取ろうとしつつあるROHよりもROH要素の強いプロレスリングで、期待を更に超える大激戦。

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 AEW移籍後のブライアン・ダニエルソンは解き放たれた様なプロレスリングを見せ続け、プロレスの申し子、初代Best In The Worldとは何ぞやというものを示している。鎖を引きちぎった龍は、ダイヤモンドの王すらも噛みちぎる。両者の持ち味が最大限に現れた名勝負です。MOTY候補。文句無しに名勝負。
評価:****3/4

 

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ダンテ・マーティン(w/リオ・ラッシュ)対マット・サイダル
 リオ・ラッシュがダンテとサイダルの師弟関係を引き裂きにかかっている中での一戦だが、特にダーティな描写はなく、サイダルがダンテを徹底的に活かそうとする試合運びを見せ、ダンテは伸び伸び高い身体能力を示す展開。サイダルの老獪な試合運びとダンテの鳥人といいたくなる程の圧倒的な空中殺法が実物。試合を重ねる度に質が向上しているのも良い。中々良い試合。
評価:***1/2

 

トリック・オア・トリートマッチ
Dr.ブリット・ベイカーD.M.D(w/レベル&ジェイミー・ヘイター)対アバドン

youtu.be ハロウィンらしくゾンビレディアバドンをフューチャーしたストリート・ファイト。ゾンビキャラを徹底的に活かし、王者ベイカーが強さを見せても、アンデッドパワーで立ち上がるアバドン。ファンマッチとはいえ、王者ベイカー直々に画鋲受けまで見せるなどヌルさは一切なし。

 ダメージ無視過ぎる展開が続くけれども、ハロウィンでアバドンなら許せてしまう程の拘り方。ブライアン対キングストンを差し置いてのメインだったが、立派に務め上げた。平均的良試合。
評価:***1/4

 

全体評価:8.5+

 

AEW Rampage #9 10/8/2021
CMパンク対ダニエル・ガルシア(w/ジェフ・パーカー&マット・リー)
 パンクが希望する若手との対決シリーズ、次はガルシア。カモフラージュはしながらも、チャレンジマッチ的な内容が色濃い。ヒールのガルシアがリードする展開。技術の高いシューターらしさを見せながらも、メジャー団体のTVプロレス的ヒールらしくデフォルメした煽りも見せる。

 ガルシアの吸収力の高さが窺え、それをパンク相手にでも臆する事なく示せるのが素晴らしい。パンクはペプシ・ツイストとアナコンダ・バイスという引き出しを開ける位で、その他は一歩引いて、ガルシアを立てていた。それも含めて狙い通りの一戦。
 中々良い試合。
評価:***1/2

 

AEW Rampage #11 10/22/2021
PAC対アンドラーデ・エル・イドロ

youtu.be WWEを経由したハイフライヤー同士が巧みに緩急を織り交ぜながら、ギアを入れた時は他を寄せ付けない業界最高級の最大風速でぶっちぎる。業界最上級の身体能力と技のキレで魅了。攻防の一つ一つに酔いしれる。終盤にかけての怒涛の畳み掛けは圧巻。フィニッシュも美しく、前回よりも試合内容を格段に上げた熱戦でした。好勝負。
評価:****