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東京女子プロレス(TJPW) WRESTLE PRINCESS Ⅱ Review 山下実優対伊藤麻希他 ~滲んだオレンジ~

東京女子プロレス WRESTLE PRINCESS Ⅱ 10/9/2021

 

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VENYU(朱崇花&上福ゆき)対角田奈穂&小橋マリカ

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 VENYUは、上福のテーマだけではなく、Billie Eilish 『Bad Guy』→Lady Gaga『Telephone feat. Beyoncé』というDIVAメドレーともいうべき入場テーマで登場。気合の入った入場だけではなく、東女初登場となった朱崇花が、チート過ぎる実力を発揮。ハンディキャップ戦でも良い位の差を見せつける展開に、角田&小橋が執拗に食らいつき、アンダーカードとは思えない白熱の試合となりました。他団体の兼ね合いがあるとはいえ、朱崇花はシングルでもタッグでももっと登場して欲しい。

 上福も朱崇花につられて、長身を活かしたムーブで貢献。フィニッシャーのフェイマサーを、シザーズキックの要素も取り入れた形に改良していて、非常に見栄えが良くなっていた。平均的良試合。
評価:***1/4

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ツインカム・モンスター(里歩&中島翔子)対鈴芽&遠藤有栖
 この試合もチャレンジマッチ。格差を打ち出すTMに何とか食らいつく若手コンビ。中島と里歩の厳しい攻撃にも耐えうる耐久力と俊敏さを持つ2人だからこそ選ばれたのでしょう。抜擢に見合った活躍を見せていた。

 今後もミッドカード戦線で活躍し、トップどころに食い込みたい若手組が耐えるだけではなく、連携もしっかり決め、肉薄していたのは印象的。東女らしい軽量級の目まぐるしい攻防に、TW特に里歩の貫禄が際立った一戦。まあまあ良い試合。
評価:***1/2

 

プリンセスタッグ選手権試合
NEO美威獅鬼軍(c)(沙希様&メイ・サン=ミッシェル)対マジカルシュガーラビッツ(坂崎ユカ&瑞希)

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 特別版の入場からNEO美威獅鬼軍のギミックをフル活用した試合内容。コミカルな入りからヒールプレイに繋げつつ、コミカルとシリアスをミックスさせた試合展開にマジラビを巻き込み、気づいたら手に汗握る接戦模様になっている。

 NEO美威獅鬼軍らしい空間を掌握する試合展開に、マジラビといえどもたじたじ。目まぐるしさはあるものの、ポイントゲッターである坂崎のシリアス、キラーモードが発動出来ない中、瑞希が大奮闘。坂崎が入りづらい展開でも、シングルプレイヤーとしても躍進を続けている瑞希が、坂崎を補佐に回しても遜色ない活躍を見せた。

 NEO美威獅鬼軍も沙希様は補佐に回り、メイ・サンがメインとなる形で進めるが、ギミックを上手く使った試合運びを見せるだけではなく、エルボーの打ち合いで熱くしたり、これは市ヶ谷?と思わせる様な丸め込みの応酬でスリリングさを打ち出したりと、まるで出所が同じなのかと勘繰ってしまう程、瑞希と手の合った一進一退の攻防を演じ完走。単なるクオリティ以上に楽しめるエンタメ性に溢れた一戦。

 そしてこの試合は、是非クリスとアッキの英語コメンタリーでも観て欲しい。皆が可愛いと絶賛するメイ・サンに対して世界一厳しい反応を見せるクリスは必見。トレー攻撃をDQだと言い放ったり、別人だと思うが、思わずメイと言ってしまい、メイ・サンと訂正したりと、この2人にしか出せないコメンタリーとなっています。色んな意味で市ヶ谷要素満載の熱戦。個人的には今大会のベストバウト。中々良い試合。
評価:***1/2

 

プリンセス・オブ・プリンセス選手権試合
山下実優(c)対伊藤麻希

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 「あの日誓い合った約束はもう忘れても構わない。最後くらい格好つけたい。」
これは煽りVに使用された赤い公園『オレンジ』の歌詞の一部分。
昨年急逝した津野米咲が残した名曲に、ピッタリなシチュエーションのプロレスの試合が組まれるとは。そしてこの曲を使用した映像班には、最大級の賛辞を贈りたい。世界中通しても今年ベスト級の煽りV。
 タッグチーム「121000000」のパートナーでありながら、プリンセスカップを勝ち抜き、王座に挑戦する事となり、今年の1.4後楽園ホール大会の雪辱も晴らしたい伊藤。今年のWMのビアンカ・ブレアーを彷彿とさせる程、試合前には珍しく感極まった表情を見せた伊藤。ようやくここまで来た、さあ行くぞと成長した姿を見せる伊藤を待っていたのは、高い高い山下の壁。

 ビッグマッチのメインイベンターとして、団体の絶対的エースとして、普段の何倍にも厳しい攻めを打ち続け、伊藤をドミネイト。伊藤もヘッドバット連打や得意の逆エビ固めバリエーションで応戦するも、8割は山下が強烈な攻めを繰り出し、伊藤が耐え続ける形。山下は圧倒的な攻、伊藤は攻撃ベースの構築が向上したとはいえ、耐え姿からの反撃で魅せる受けタイプの選手。手は合っていて、両者の持ち味は出ているものの、AEWでも活躍し、プリンセスカップでは人気だけではなく、内容も残し、実力で上がってきた今の伊藤に対しては、余りにも山下が攻めダルマになりすぎていて、歪さが強く残る内容。

 ビッグマッチらしくストーリーを反映させ、ドラマ性を強くする意図は感じ取れるが、丸め込みやカウンター技を見せ、より勝機がある事を示すことが出来て、更に手に汗握る試合となった可能性があるだろう。

 試合後も感情が溢れ出した両者、この試合に賭ける熱い思いは痛い程伝わった。年間最大のビッグマッチのメインイベント、以前に好勝負を残し、その時よりも関係性が深まった間柄。色々なプレッシャーと背景が、歯車を少し狂わせた。合格点は十分あげられるけれども、世界でも有数の実力を持つ彼女達、そして以前の試合の素晴らしさを踏まえると、殆ど山下の強さしか印象に残らなかったと言われても仕方がない内容。とはいえ、煽りVの完成度を含め、心揺さぶられるエモーショナルな良試合には違いない。中々良い試合。
評価:***1/2

 

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全体評価:8.5+