世界のプロレス探検隊

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アイスリボン リボンの騎士たち2021レビュー 藤本つかさ対星いぶき/アジュレボ対レネミー他

アイスリボン 「リボンの騎士たち2021」 9/18/2021

 

FantastICE選手権試合-チェーンアタックオンリーハードコアマッチ
山下りな(c)対テクラ
 チェーンを使った攻撃のみフォール、ギブアップの対象となるというチェーンデスマッチを更に難易度を上げた試合形式。地球上誰がやっても難しい試合形式。

 序盤、要領を掴むのに時間が掛かるものの、一通りチェーンを使う攻防を見せた後は、両者徐々に上手くチェーンを活かせるようになっていく。普通なら一通りチェーンを使うと他の凶器を使いたくなるものの、それを廃した縛りプレイ。それでも通常形式でも良い試合が作れる実力を持つ2人なので、上手く通常技とミックスさせるのは流石の一言。ハードコア、デスマッチ慣れしているデスマッチクイーン山下と、日本の中では男子含めてもトップクラスの魅せる力を持つレスラーであるテクラなので、勢いに乗れば、チェーンを自分たちのものしてしまうのは見事。惜しいのは、せっかくテクラは、金髪に染めたのだから、そこは流血で金髪を真っ赤に染め上げて欲しかった。

 デスマッチではなくハードコアならではの創意工夫が楽しめる一戦。このカードならTLCやストリート・ファイト等、アメリカでは日常茶飯事の形式だが、日本ではデスマッチの下位版となっているハードコア形式でも、素晴らしい内容にしてくれるのではないかと期待したくなる。2人のプロレスセンスの高さを堪能出来る良試合。
中々良い試合。
評価:***1/2

 

インターナショナルリボンタッグ選手権試合
アジュール・レボリューション(c)(世羅りさ&雪妃真矢)対Rebel&Enemy(ラム会長&尾崎妹加)
 アジュレボが余りにも強過ぎて上手すぎるのが再認識出来る試合。王者経験豊富な個々としても強く、個性もあり、タッグとしても他を寄せ付けない安定感がある。前半はほぼ世羅が出ていたが、それでも会長と尾崎をまとめて相手しても違和感がまるでなく、それでいて雪妃が絶妙な控えへの攻撃を見せる視野の広さを示す。合体技のバリエーションや精度が高く、加えて細かい連携も正確。試合の中でストーリーテリングも生み出せ、相手によって変化出来る。やっていることはまさにヤング・バックスと同じである。
 そんなアジュレボに飲み込まれるのは無理もないが、女子プロ界の最終兵器、リアルレインメーカー、ラム会長は、そのアジュレボの完成度を少し無効化出来る存在感を放ち、尾崎は持ち前のパワーファイトで薙ぎ倒す。タッグとしての完成度は差があったが、カットプレーで何とか粘り、個々の力で乗り越えていく終盤の展開は特に見応えあり。試合内容が尻上がりに良化していった。

 それでも粘るレネミー軍を突き放す事が出来るのもアジュレボの強さ。男子を入れてもここまで出来るタッグチームはいないので、メキシコだけじゃなく、アメリカに連れて行く必要がある。アイスリボンや日本女子の中では伝わっていても、世界的にはアジュレボの2人はやはり過小評価されている。好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4

 

ICEx∞選手権試合
藤本つかさ(c)対星いぶき
 伝説的チョップ合戦となった小橋建太対佐々木健介の一戦を再現し、超える程のチョップ合戦を作り上げるのが、この試合のテーマ。確かにいぶきのチョップは、女子の中では鋭く、真っ赤になった藤本の胸が壮絶さを物語る。

 チョップは試合を作る為、軸に据える事が出来る武器だが、別に小橋対健介を持ってきて、ハードルをとことん上げる事はしなくても良かった。体格や迫力で圧倒的な差があるので、数は打っても比較にはならない。マウントポジションからのチョップ連発は、数稼ぎとは言え蛇足だった。
 チョップ合戦に関しては、良し悪しが出たものの、チョップ以外の攻防が素晴らしかったのがこの試合。団体のボスにして象徴、そして絶対王者藤本による若手スターいぶきを引き上げる試合運び、的確な攻撃は安定の高品質。対するいぶきも後楽園のメイン抜擢に応える見事な戦いぶりを見せたのは大きな収穫。身体能力も一定の高さがあり、ハードなチョップという万能な武器も持ち合わせていて、関節技の使い方、魅せ方も上手く、オリジナルムーブもありと、能力、センスの高さを上手く出せる武器が備わっているのが強い。藤本の作るベースに確実に付いて行っていたのは収穫。
 チョップは良くも悪くも印象的だが、それを抜いても後楽園メインに相応しい激戦となっており、いぶきがこのままの成長曲線を描けば、数年後にはメインイベンターとして君臨する可能性もあるだろう。好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4

 

全体評価:8