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IWTV 100 Review "年間ベスト大会候補!" ウィーラー・ユータ対ダニエル・ガルシア/オレンジ・キャシディ参戦

IWTV 100 8/8/2021

iwtv.live


IWTVインディペンデント・レスリング王座戦#1コンテンダー-ラダー・マッチ
マーカス・マザーズ対オースチン・ルーク対GGエヴァーソン対リード・ウォーカー対ライアン・レッドフィールド対スティーヴ・サンダーズ


 H2Oのスクール卒業生によるラダー・マッチ。このメンバーでオープニングということで、ラダーを使ったスポットフェスト。古き良き東海岸インディ00年代スタイル。あんこ型や動きが良いメンバー等同じスタイルに偏っていない人選なのも良い。スピード感があり、スポットも上々。

 そして橋渡しにしたラダーへの、ラダー天辺からのスーパープレックスは、超弩級の衝撃。その衝撃冷めやらぬ中で締めたのも良い選択。ボロが出る前に、良い状態のまままとめたのは賢明でした。平均的良試合。
評価:***1/4

 

ジグソー、ハロウィケッド&ウルトラマンティス・ブラック対RALY(アレキサンダー・ジェームズ、ローガン・イーストン・ラルー&リチャード・ホリデイ)

 ウィーラー・ユータ率いるRALYと、オリジナルCHIKARA軍の対決。ウルトラマンティス・ブラックがいるだけで、この試合は価値があり、大勝利なのだが、ハロウィケッドにジグソーが、流石の動きを見せるので、やはり盛り上がる。

 RALYも実力者揃いなので、堅実に試合を作ってくれて、そのお膳立てを受け、CHIKARA軍が爆発。軽めの試合ではあるが、この試合だけで米インディファンは堪らないものがある。最後はRALYが、3人でのオリジナル3Dを見舞い、豪快にフィニッシュ。
平均的良試合。
評価:***1/4

 

マット・マコウスキ対ケビン・クー
 スポットフェストにトリオスマッチと来た後は、シュートスタイルで鋭く締めていく流れ。鋭いテイクダウンにカウンター式の膝を見舞った入り、マコウスキの身体能力を活かした大技に苦戦したクーだが、盟友エリック・スティーブンスから譲り受けたCHOO! CHOO! クローズラインで反撃。マコウスキはキャリアの少なさを感じさせない程高い身体能力、技術と独創性を持っている完成度の高い選手だが、出来過ぎるが故に、シュートスタイルの選手に必要とされるわかりやすい鋭さ、熱さが少し足りていない所があり、そこが思ったよりもステージを上げられていない要因と感じる。

 しかし、この試合では、その部分をクーが埋めていて、テクニックの高さを超えた熱い削り合いに昇華させていて、最後もデメトリアス・ジョンソンオマージュの、カオス・セオリー・ジャーマンからのフライング・アームバーと衝撃の幕引き。クーの熱量があったからこそ、この衝撃のフィニッシュが生まれたといっても良いでしょう。

 数年前までマット・リドルという最強最高の天才がいたからこそ、この凄いマコウスキでさえも霞んでいる所はあるものの、リドルの鋭さを少しでも出せれば、リドルにない体格やテクニックもあるので、マコウスキは瞬く間に世界的スターとなるでしょう。好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4

 

オレンジ・キャシディ&クリス・スタットランダー対リー・モリアーティ&トリッシュ・アドラ

 IWTV元王者3人が夢の競演。キャシディとスタットランダーのAEW組に留まらず、モリアーティはMLW、アドラはROHと大小はあるものの、それぞれ活躍の場をメジャー団体に広げている。基本的には同性対決とはなるものの、それでも普段観る事が出来ないマッチメイクとあって、新鮮さがある。

 モリアーティ対キャシディのマッチメイクも多くはなかったが、コミカルはそこそこに、ストレートな攻防で魅せていて、インディファンには堪らない内容となっていた。キャラクターはあるにせよ、キャシディにすっかり大物らしさが備わっていたのが感慨深い。平均的良試合。
評価:***1/4

 

ノーDQマッチ
ジョン・ウェイン・マードック対ウォーホース


 テクニカルな試合、ハードヒット、ゲストマッチと続いて、メインの前にハードコアと最高の配置。そしてそこにジョン・ウェイン・マードックを持ってくる人選と、そこにマードックが入れるようになった事が感慨深い。ウォーホースもタフマッチは得意だが、完全にマードックの土俵。ウォーホースの猛攻を受け切ったマードックが、ドアに画鋲で返り討ち。観客参加型の場外戦、相手を立てる試合構築、そして大技と凶器で仕留めるマードックの上手さが光る乱戦でした。平均より上。
評価:***

 

IWTVインディペンデント・レスリング世界王座戦
ウィーラー・ユータ(c)(w/ローガン・イーストン・ラルー)対ダニエル・ガルシア(w/ケビン・ブラックウッド)


 試合前に、アメリカのプロレス雑誌でお馴染みPro Wrestling illustratedが、同王座を世界王座として認定するというプチ・サプライズでスタート。一方でガルシアは、C4、ESW、Limitless Wrestling 3本のベルトを持参し、4冠を目指す為にアピール。

 緊張感溢れるを雰囲気を崩したのは、冒頭のガルシアのパイルドライバー。フィニッシャーを最初に持って来るパターンの入りで王座交代の機運を高めていき、冒頭10分は、ガルシアが厳しく攻め立てる形を取る。以前からこれ位の技術は持っていたが、以前と比べると、緩急を身に付けており、一つ一つの行為に説得力を持たせている。ユータのお株を奪うような複雑怪奇なストレッチ技も披露し、まずはユータを翻弄。置きに行った冒頭ではなく、攻めに行った冒頭なので好感が持てる。
この10分はかなりハイレベルであった。

 中々主導権を渡さなかったガルシアだが、隙を突いたバックドロップから腕攻めに繋いだユータが形勢逆転。体力を回復させ、ペースを落ち着かせながらも、部分破壊は継続と堅実な攻めを見せるユータ。ヒールとしてのアピールは忘れない所、痛み表現を細かくしながらも、隙を見せるとガルシアがすぐ反撃する所も良い。ずっと動いてずっとハードでやり続ける事は不可能だが、出来る限りのハードワークは続けつつ、一つ一つの行為に意味を持たせている繊細さが素晴らしい。

 20分過ぎからは、場外戦に移行。それもただ場外戦に行くのではなく、ユータが、張り手でガルシアを怒らせてから、場外戦に移行。時間も上手く使いながらも、時間を使った展開だなと思わせないちょっとした工夫も良い。場外戦が終わってからは、じっくりとユータが支配することで、ガルシアの腕のダメージは深刻だと印象付ける形で、ドラマ性も強めていき、30分経過。

 この支配ターンで明確にガルシアをベビーフェイスとして確立させて、後半に臨んでいく。スローペースにはなっているものの、試合時間やダメージをしっかりと反映させており、動きの鋭さは残っているので、全く問題なし。大技も解禁しながら終盤へのセットアップを続ける。40分経過でも築いた軸がブレる攻防はなく、ネタが切れたと思わせないのもこの試合の凄い所。己の技術のみで作り上げながらも、グラウンドが軸の試合にありがちな没個性な試合では決してない。
 45分経過。ラスト15分は、より消耗戦の様相が色濃くなる中での、最後の力を尽くした攻防となる。掟破りや介入、テーブルスポット、垂直落下連発などいくらでも楽に盛り上がりを産める手段はあるけれども、それを選ばずに、これまで積み上げた世界観を維持する事を選ぶ。この拘りは最後の爆発を生み出す。尖って奇を衒う事もなく、ストレートな一進一退によるニアフォール、サブミッションで、スローペースで溜めたエネルギーをスパーク。その爆発の中にも、ユータに痛めつけられた腕をロックすれば勝てるけども、痛みでロック出来ないから後一歩及ばなかったと伏線回収をわかりやすく正確に完遂。24歳と22歳の一戦と思えない程成熟度の高い内容。初期ROHを彷彿とさせる大激闘。

 技術面、世界観に関しては既に触れたが、会場が見ると高温で、試合開始から汗が吹き出す程の環境下で、高品質の60分フルタイムは天晴れ。
(前の試合で、スタットランダーやアドラも熱いと手で仰ぐ素振りをしていた。)

両者共にAEW Dynamiteデビューを遂げたタイミングで、もっと名前を売る必要があり、単に良い試合をするだけでは意味がない、団体ではなくIWTV提供のAEW等のスターが出場している中で、用意された王座戦、60分フルタイムを、このクオリティでやってのけるとは感嘆の一言。高すぎる期待値を更に超えてきた名勝負。

 インディファンは勿論の事、世界がウィーラー・ユータとダニエル・ガルシアの名前を知る事になるだろう。単なるベストフレンズの子分でも、単なる2.0の子分ではない。世界有数の若き凄腕レスラーという事を最高の形でアピール出来た。明るい未来しかない一戦でした。
評価:****1/2

  

 試合後1戦目でIWTV王座どこでも挑戦権を手にしたマーカス・マザーズがキャッシュインをしようとするも、A Very Good Professional Wrestlerが排除し、ユータに挑戦表明。マコウスキやアドラが現れるも、最後に挑戦表明したのが、ジョン・ウェイン・マードック。
 ウィーラー・ユータ対ジョン・ウェイン・マードック。IWTV世界王者とICWアメリカンデスマッチ初代王者の激突は是非観たい所。マードックの挑戦アピールで締めるセンスも、最高に嬉しい演出でした。

 テクニカルな試合、ハードヒッティング、ハイフライング、ハードコア、女子、メジャースター、新進気鋭の若手から大ベテランのChikara勢、選り取り見取りの盛大なお祭り。メンバーのバラエティ性とクオリティも備わっていて、オールドファン、新規ファン、AEWのファンも楽しめる素晴らしい大会。年間ベスト興行候補の名大会です。

全体評価:10