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新日本プロレス WRESTLE GRAND SLAM in TOKYO DOME Review ~ロビー・イーグルス悲願の初戴冠!~

新日本プロレス WRESTLE GRAND SLAM in TOKYO DOME 7/25/2021

IWGP Jr.タッグ選手権試合
BULLET CLUB(c)(エル・ファンタズモ&石森太二)対メガ・コーチズ(田口隆祐&ロッキー・ロメロ)
 コメディと軽量級ムーブとタッグの連携を適度に織り交ぜた内容。小大会のメインならまだしも、ビッグマッチのオープニングで、20分を行う内容かどうかはともかく、会場を温めるには申し分ない内容。ファンタズモのサドンデスを巡るストーリーテリングも各々が達者なので、形になっていたのも良かった。まあまあ良い試合。
評価:***1/2

 

IWGP Jr.ヘビー級選手権試合
エル・デスペラード(c)対ロビー・イーグルス

 脚攻めを得意とする両者。ジュニアらしい飛び技はあるものの、前日に椅子で破壊したロビーの脚攻めを的確に攻め立てるデスペラードと、返す刀でロン・ミラー・スペシャルの布石を打つロビー。攻めに関しては、ドラゴンスクリュー辺りを効果的に活用してエグく見せながら、執拗に搾り上げる。

 受けに関しては、ドームという大会場仕様に、表情や受け表現はデフォルメさせて、わかりやすく痛みを伝え、攻防の途中にも、脚を痛め追撃出来ないというシーンを細かく入れて、最後まで脚攻めをキーとして試合を作り上げていた。その間の投げ技や打撃もアクセントとして効いていた。

 ハイフライング偏重、垂直落下等の危険技偏重になりがちだったジュニア戦線において、サブミッションを重視する試合内容を選択したデスペラード。派手ではないけれども、ルードのキャラやラフ殺法というこれまでのセルフプロデュースの蓄積も効果的に映っていて、またこの試合では同じく脚攻めを得意としつつ、レスラーとしても完成度の高いロビーを迎えて、最高の作品を作り上げることが出来た。デスペラードにとっては、危険技偏重で、自らのキャリアを狭めながら戦うスタイルを取るライバル高橋ヒロムに、見せつける様な試合でもありました。
 そしてロビーは悲願の初戴冠。コロナ禍でオーストラリアに居ざるを得ない状況下でも、ずっと好調をキープしていたロビーの、高いプロフェッショナル精神が、この試合で身を結んだ格好となった。ライバルオスプレイ抜きで栄冠を掴んだのは本当に素晴らしい。好勝負。

評価:****

 

オカダ・カズチカ対ジェフ・コブ(w/グレート・オーカーン)
 基本軸としてはコブがオカダをドミネイト。その一方で、ダメージを負いながら何とか反撃していく形。特に変わった内容はないものの、獰猛なルックスはコブに合っていて、攻防面は高値安定。コブの怪物性を示し続けた上で、何とかオカダが勝ちを拾う。王座戦ではないので、オカダの強さを示す必要は余りない、いつものパターン。

 コブを主軸に据えるなら、オーカーンをバイプレイヤー役に設定するのは悪くない。UK色を強めるならザックを軍団長として入れたい所ではあるが。オカダはオカダで、もう日本ではやり切ってしまったので、後はキャラチェンジするタイミングをどうするか。現状維持を何年も続けていれば、いくら世界最高のレスラーでも飽きられてしまう。試合としては素晴らしい試合を量産し続けても、停滞している様に映るのは、それが要因だろう。好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4

 

IWGPタッグ選手権試合
ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン(c)(内藤哲也&SANADA)対デンジャラス・テッカーズ(タイチ&ザック・セイバーJr.)(w/あべみほ)
 シングルのトッププレイヤーによる組み合わせ×4が一度に楽しめる内容。実際に攻防としては、流石トップというべきハイレベルな攻防の連続であるものの、長い。ただ長い。彼らなら後10分削っても問題ないが、思考停止しているがごとく30分超えを行うのは、誰も得していない。折角の極上の攻防の数々が、薄まってしまう。ジュニアの様にスピーディーにやれ!無駄を省け!というのではなく、たまにあるからロングマッチは良いのであって、何年も毎月毎月どのシチュエーションでロングマッチをされると流石に食あたりを起こす。個々のレベルが高くて、見応えがあるからこそ、構造的欠陥を早く対処して欲しい所。中々良い試合。
評価:***1/2

 

IWGP世界ヘビー級選手権試合
鷹木信悟(c)対棚橋弘至
 攻の鷹木に、受けの棚橋。鷹木の力技に、十八番の脚攻めで反撃する棚橋。ここぞの飯伏ムーブや鷹木用のヘッドバッドと、全てを飲み込んできたエース、団体の、いや日本プロレスのアイコンの恐ろしさ、狡さが全開。これぞ棚橋といいたくなる千両役者ぶりを如何なく見せつけると、その棚橋を沈める強引な姿を見せた鷹木も、らしさ全開。序盤〜終盤までの構築も完璧。一つ一つの技やスポットの配置も完璧。東京ドームに相応しいスケール感についても言うこと無し。

 セミと違い、こういう試合であれば、何分しようが全く価値が落ちない。ロングマッチというカードは、TPOが重要。例え試合後に何をしようとも、価値が落ちるものではない最高級の名勝負。あれくらいでコントロパーシャルにはならないとは思うけれども、コントロパーシャルなバッドエンドをする位でないと、メインの凄さを超えるエンディングを演出出来ないでしょう。文句無しに名勝負。
評価:****3/4

 

最後に一つ注文を付けるなら、5試合中4/5で、脚攻めがメインとなる試合は多すぎる。脚攻めは理に適っていて、その中でも各種ドラゴンスクリューは確かに便利な技ではあるが、全員やるのは流石にやり過ぎ。スーパーキックやカッター以上に使い過ぎなのは、流石に考え直す必要があるでしょう。

全体評価:9