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GCW Homecoming 2021 Night1 Review "GCW&BJW2冠戦"アレックス・コロン対ドリュー・パーカー/"衝撃の結末"ニック・ゲイジ対マット・カルドナ(ザック・ライダー)

GCW Homecoming 2021 Night1 7/24/2021

 

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www.fite.tv

 

GCWウルトラヴァイオレント王座&BJW認定デスマッチヘビー級王座戦
アレックス・コロン(GCW UV ch)対ドリュー・パーカー(BJW DM ch)


 日本時間の金曜日の夜に塚本拓海から大日本デスマッチヘビーを奪取したドリュー・パーカーが、元々アナウンスされていたGCWの舞台にベルトと共に参戦。その為、コロンが持つUV王座との2冠戦に急遽変更!結果的にパーカーが勝つとはいえ、過去のCZWとのイザコザのトラウマを持つ大日本が、良くこういうブッキングを飲んだなという印象。大日本と日本メディアが全く王座戴冠を報じていない所の不自然さはあるものの、例え明日のロイド戦で、ベルトを落としたとしても、数日の間に快挙を達成したパーカーの大活躍は、国とシーンを挙げて喜ぶべきでしょう。
 試合においても、パーカーの成長度合いが良く伝わる内容。ムーブの精度が非常に上がっていて、シリアスな表情には風格さえ覚える。レイヴァー以上のハイフライングの綺麗さは大きな武器となっている。とはいえ、パーカーだけでは好勝負にはならなかった。現在のデスマッチ・キング、アレックス・コロンのおかげである。
 ニック・ゲイジが何故AEWへと駒を進められるか、GCWの屋台骨を支えるまでに成長したコロンが、ゲイジに劣らない振る舞いを見せるからである。攻めの容赦なさ、デスマッチレスラーとしてもレスラーとしても高い実力。そして何と言っても他を寄せ付けない貫禄を得たのがこの躍進の要因。パーカーが活きる様な試合運びを見せながら、例え結果が負けでも、一切価値が落ちない、全編通して格上である事を示し続けた。コロンのセルフプロデュース力の高さが特筆ものである。
 凶器群も蛍光灯トラップ、ガラスボードトラップと彼らに合った凶器群だった事も大きい。当然使い方、魅せ方も全てにおいて抜群。TOSのコロンの激勝を彷彿とさせる様な展開を入れたクライマックスも実に見事。今の無敵モードのコロンと様々なミラクルが重なり、昇華した好勝負。
評価:****

 

GCWタッグ王座戦
G-レイヴァー&ジミー・ロイド(c)対セカンド・ギア・クルー(マンス・ワーナー&マシュー・ジャスティス)

 先日のメキシコZONA23とのジョイント興行で、数年に渡りベルトを保持していたシクロペとミエド・エクストレモのロス・マジソスを倒し、憎み合う抗争相手ながら本国にベルトを持ち帰ったロイドとレイヴァー。ストーリーの仕切り直しで組まれた一戦。 

 対戦相手もSGC最強コンビジャスティスとマンサーなので、当然ハードコア。内容的には簡素ではあるものの、苛烈な頭部への椅子攻撃、流血、ドア破壊を織り交ぜつつ、本題のロイドとレイヴァーの仲違いを描き続ける。同士討ちを誘う手法も多彩。その結果結局仲間割れを起こした王者組をSGCが破壊しあっという間に王者移動。

 ロイドとレイヴァーの最終決戦へのセットアップと長くレギュラーとして活躍していたSGCにベルトを持たせるという両方のミッションを、ハードコアのサポートを得ながら、上手く描いていた試合。タッグ王座があると、選手起用やストーリーの幅が格段に広がるので、これは団体にとって好材料でしょう。平均的良試合。
評価:***1/4

 

GCW世界王座戦
ニック・ゲイジ(c)対マット・カルドナ
 試合前から、カルドナのポッドキャストのイベントにゲイジが乗り込み、SNSでも舌戦を繰り広げていた両者。カルドナが、MDK GANGの縄張りに飛び込む姿は、One Night Stand 2006のシナ対RVD戦さながら。WWEに長らく在籍し、シナの友人役も務めていたカルドナ。フェイクじゃなくてリアルになりたいからデスマッチ、ゲイジ戦も受けたのに、徹底的にヒールのフェイク野郎を演じるプロフェッショナルな面は見事。

 ONS2006では雰囲気に飲まれていた節もあったRVDとは違い、縄張りを守るギャングの長、ゲイジは序盤こそカルドナに手こずったものの、中盤以降はきっちりやり返し、カルドナを文字通り血祭りに上げる。ガラスボード、蛍光灯、ピザカッターのフルコースを受け切ったカルドナ、攻め切ったゲイジは見事。攻防のチェーン数を減らし、変なエッセンスは加えず、シンプルな展開を選んだのも良い選択でした。

 カルドナのおびただしい鮮血姿が仕上がった所で、クライマックスは怒涛の展開。まずはJudas、来週のAEWで対戦するクリス・ジェリコの登場を匂わせた上で、フェイクだとわかった瞬間にコードブレイカー一閃。これは凌ぎ切ったが、ゲイジを44OH!が取り囲む。それを救ったのはベビーフェイス宣言をしたRSP。44OH!をゲイジと共に排除したのも束の間、RSPがゲイジにチープショット!隙を突いたカルドナがゲイジに猛攻を仕掛け、まさかまさかの王座奪取という衝撃の結末!

 ジェリコ戦、来たるモクスリー戦の前にゲイジがベルトを失い、ゴミが飛び交い、客席に悪態を突くカルドナで放送終了。

 AEW×インパクト×GCW、メジャーとインディ、TVプロレスとデスマッチ、交わらないはずのものが交わり続ける怒涛の展開。WWF/WWEのお家芸を見事にやっておけた演出は、感嘆の一言。
 ジェリコ戦がどうなるかはわからないが、恐らくAEWでジェリコがここまで受ける事は出来ないと予想される中で、カルドナがここまで本気でヒールとデスマッチに取り組んだことで、彼のキャリアにおけるベストモーメントとなり、ジェリコを超える作品を残したのは、想像を遥かに超える結果を生んだ。

 米インディ界最高のカリスマゲイジが、Dark Side of the Ringの反響を受け、AEW登場で、更にスターとなった段階、大観衆も戻った中で、宿敵RSPのサイドストーリーで上手く絡めたのも絶妙。インディの旗手でありながら、メジャーレベルのスケール感を生み出していた恐るべき試合。試合としては好勝負だが、この試合に至るまでのストーリーや背景を考えると、トータルの作品としては、更に高評価を付けたい。

 今年を代表する作品の一つです。
評価:****

全体評価:9