世界のプロレス探検隊

WWEAEW新日本インディ他、国内外問わずプロレスのマッチレビューを行っています。

AEW Review 2021 ケニー・オメガ対ジャングル・ボーイ/MJF対サミー・ゲバラ他

AEW Dynamite #91 - Saturday Night Dynamite 6/26/2021
AEW世界王座戦
ケニー・オメガ(c)対ジャングル・ボーイ

 アナ・ジェイをゲットした時点で、どんなベルトよりも価値があるものを手にしているので、感情移入したくなくなるのは別問題として、団体のトップとライジング・スターの王座戦。格差を描きつつ、ケニーが動きを抑えながらどっしり構えて、俊敏なJボーイの持ち味に被せないようにしながら、良さを引き立つ。

 まだまだ掌に踊っている事を示しながらも、Jボーイの大健闘に心奪われていく。この2人にまだ関係性がなく、ストーリーも繋ぎということで、ケニーが一歩引いていた感じもあったが、それはそれで、ケニーが全力物量押しで仕留めていたこれまでとは異なる王者像を提示しており、仮にそれが、コンディションが悪いからなのかどうかは不明だが、また一段トップの中の階段を更に登った事を表している。

 母親が応援に来ていたJボーイの大健闘もむなしく、ケニーがまだまだ及ばないと、ダメージがあったとはいえ、余力を残しながら切って捨てたフィニッシュも長期的に今後に活きる形で良い。ストーリーとストーリーの繋ぎ目の様な中継ぎ試合であっても、非常に価値の高い好勝負でした。
評価:****

 

AEW Dynamite #92 6/30/2021

AEW世界タッグ王座戦-エリミネーター・マッチ
ヤング・バックス(マット&ニック・ジャクソン)(w/ブランドン・カトラー)対エディ・キングストン&ペンタ・エル・セロ・ミエド(w/アレックス・アブラハンテス)

 完全無欠のタッグワークと生意気ヒールで試合をコントロールするバックスに対し、一度は仲違いしたものの、フェニックスの負傷やモクスリーの育休等もあり、今はタッグとして再始動したキングストンとペンタ。

 タッグとしてはバックスの方が上だが、タッグの経験豊富なキングストンとペンタなので、キングストンが受け手とサポートに回り、クリーンハウス役はペンタと役割も定まっていて、ここぞというときの連携も正確。個々の破壊力では元々上なので、バックスに見劣りはしない。

 バックスもこういう2人である事を理解していて、ヒールプレイ、ダーティーワーク中心の構築、キングストンとペンタがやりやすい道筋を作っているのは見事。支配シーンのバランスと長さ、バックスの安定感にキングストンの受け手としての演出力の高さ、ニアフォールとカットプレーも絶妙な使い方をしていて、最後は介入祭りでド派手にフィニッシュ。

 バックスが最高なのは言うまでもないが、キングストンとペンタが光る最高の試合展開までお膳立てしているのは憎い。世界中のマットで活躍していた4人だが、AEWでしかあり得ない組み合わせで、素晴らしい試合を見せてくれる。ここでしか見られない特別感。それが何よりも素晴らしい。文句無しに好勝負。
評価:****1/4

 

マクスウェル・ジェイコブ・フリードマン対サミー・ゲバラ

 ゲバラの格上げストーリー進行中。とはいえ、MJFとは同世代の若手スター対決とあって、動きの量は多く、場外ダイブもこれでもかと叩き込み、ビッグスポットも多い内容。ゲバラのハイフライヤーとしての良さを殺さずに進めたのは、同時にMJFの試合構築力の高さを信頼しているからだろう。

 MJFのヒールプレイがかなり効いているとはいえ、演舞的な要素が強く、オーソドックスとはいいきれなく、思いの外、難易度の高い構築を選んだという印象だが、両者相当に気合いが入っており、ゲバラが全ての攻撃を完璧に勢いも満点で決めた事により、試合が緩まなかったのが大きいだろう。

 MJFも年齢を感じさせない老獪な試合運びとはいえ、所々身体能力の高さは示しており、そういうところは、年齢やキャリア相応の魅せ形をしていて、微笑ましくも、やはりスポットライトは独り占めさせないというスターとしての貪欲さが垣間見える。

 勢い満点の中盤までとは打って変わって、終盤は大技攻勢と、MJFの脚負傷(当然ワーク)スポットで、一気にストーリー仕立てに。ゲバラの究極奥義630°セントーンを自力で返したのは、詰めが甘かったとは思うけれども、展開自体は、MJFの胡散臭さを持ってしないと中々成立出来ないものなので、これはこれであり。終盤からクライマックスは、ストーリーに振り切ったものだったが、それまでの試合展開が素晴らしかったので、総合すると好勝負レベル。予想を遥かに超える激戦でした。
評価:****

全体評価:8+