世界のプロレス探検隊

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東京女子プロレス レビュー 2021 山下実優対沙希様/山下実優対坂崎ユカ

CyberFight Festival 2021 6/6/2021
プリンセス・オブ・プリンセス選手権試合
山下実優(c)対坂崎ユカ
 堅いレスリング、坂崎の飛び技、山下による打撃中心の支配、そこから坂崎もキラーモードを解禁と16分の中に出したい要素を注ぎ込んだ形だが、結果的には広く浅くという形で、ハイライト的な内容になった。

 大会場でのビッグマッチにおいて、この後に後2試合王座戦が控えている中では、それは正解だが、戦っている当人達の首を傾げながら試合をしているのが良く伝わる。こんなはずじゃないと。絶対的な最強王者山下相手に、強く在ろう、シリアスに怖く行こうという坂崎の意図は伝わるが、それはやはり瑞希や辰巳の様な格下の方が効果を発揮し、同等の山下では、最高の効果は発揮せず。キラーモードで怖く厳しくするスタイルとマジカルガールというキャラクターが、噛み合わなくなっていたのがこの試合。

 7月からのAEWでは、マジカルガールのキャラクターを押し出すとしても、里歩と被る中で、どう個性を打ち出していくのか楽しみにしたい。

(解決策としては、里歩とのタッグにするかもしれないが。)
思い描いていた理想と描いたもののクオリティが合わなかった試合。中々良い試合。
評価:***1/2

 

東京女子プロレス Stand proud 6/26/2021
プリンセス・オブ・プリンセス選手権試合
山下実優(c)(w/伊藤麻希)対沙希様(w/メイ・サン=ミッシェル)

 一方、山下の強さを引き出すどころか、山下の強さすら超えていく魅力を放ったのが沙希様。良く似た別人の赤井沙希が、ユニットとしてもシングルとしても目覚ましい活躍を見せたことが影響しているかは当然別問題だが、満を持してシングル王座に挑戦。

 もうタッグで守る必要がなくなった事を示す戦いぶりは、中盤までは鋭い打撃にエレガントなヒールアピールを織り交ぜることで、山下の攻撃の芽を摘んでいき、試合をコントロール。山下の猛攻を単発気味に抑え、自身は打撃に加え、三角締め等の関節技を有効活用。序盤で使用したハース・オブ・ペインに三角締め、必殺技でもあるフットチョーク等関節技を上手く活用出来るからこそ、ここぞというときの打撃が活きる。

 この試合のハイライトである、終盤、沙希様が打撃の連打で追い詰めるシーンの鬼気迫る空気感は、全てを持っていった。沙希様や歴代美威獅鬼軍は全てを持っていくキャラクターを持っているが、この試合では、圧倒的な攻めで、同じく圧倒的な攻めタイプであるストライカーの山下を凌駕していったのは驚き。

 沙希様がここまで素晴らしいファイトを見せたからこそ、山下が豪快な蹴り、必殺技ゴリ押しで倒すヒーローらしい力技が活きた。最強のヴィランがいるからこそ、最強のヒーローは理屈抜きで真価を発揮出来る。

 想像を遥かに超える壮絶な内容でありながら、まだまだ伸びしろは感じるのも末恐ろしい。この内容ならビッグマッチのメインも可能。何なら沙希様にベルトを任せても全く問題はないだろう。
 そして、最後のもう一つ。声援が送れない中で、セコンドの伊藤とメイ=サンが、セコンドという役割を行いながら、並行して声援を送る観客の様な役割も担っていて、それによって、自分も声援を出しているかのような雰囲気になっていたのは、この2人の存在の大きさが光っており、そのパワーが、この試合に乗り移って、相乗効果となっていたのは特筆すべき点でした。好勝負。
評価:****