世界のプロレス探検隊

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GCW Tournament Of Survival 666 Review ~年間ベスト、伝説級の名大会! そしてアレックス・コロンは「神」となった~

GCW Tournament Of Survival 666 6/5/2021

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www.fite.tv

 

観客は、フルハウス!大歓声も戻ってきた!
まずはGCW世界王座ニック・ゲイジが登場。併せてデューイもカムバック!
CZW時代のH8 CLUB Tシャツ!ライダーことカルドナを呼び出すも、カルドナはWarrior Wrestlingに出場中の為当然登場せず、何も起こらず。只、キングのアジテーションで会場を暖める。

 

1回戦-ファックリー・ボーズ・デスマッチ
G-レイヴァー対EFFY(w/アリー・キャッチ)
 ファックリー・ボーズということで、各種ボード系凶器が公認凶器。6月はエフィーの様なLGBTQ+の人々に、世界各地でLGBT+の権利や文化、コミュニティーへの支持を示す、様々なイベントが行われる「プライド月間(Pride Month)」。オープン・ゲイとして業界においても尽力を続けるエフィーが、LGBTQ+のコミュニティを背負い、優勝候補であるレイヴァーを追い詰めていく。

 声援ありで超満員のアトランティック・シティの熱狂にも支えられ、エフィーも蛍光灯や有刺鉄線ボード等を駆使していく。今のレイヴァーならもっと凄い内容が出来たとは思うものの、簡単には切って捨てる事は出来ない為、エフィーに活躍の場を譲った印象はある。とはいえ、熱狂を生かしながらテンポ良く試合を進めており、ハードな攻防も一定数ありと、しっかりオープニングの役割は果たした内容となっている。

平均的良試合。

評価:***1/4

 

1回戦-タワーズ・オブ・テラー・デスマッチ
オリン・ヴァイト対ノーラン・エドワード

 蛍光灯タワーが4コーナーに据えられている形で、蛍光灯タワーを中心に純粋に蛍光灯のみで勝負する内容。素早いレスリングから破天荒なスポットとクレイジーさと安定感も兼ね揃えた内容。

 ICW NHB総帥ダニー・デマントも当然ニコニコしているに違いない良試合で、ICW NHB勢として爪痕を残した。オリンが勝つかと思いきや、ノーランが勝ち残るサプライズもあり。正直これが一回戦で一番良い試合になるだろうとこの時は十分満足していたが、それはすぐさま覆される。中々良い試合。
評価:***1/2

 

1回戦-バンドルズ・オブ・ヘイト・デスマッチ
アレックス・コロン対バン・サリバン

iwtv.live
 バンドルズ・オブ・ヘイトという名前の蛍光灯デスマッチ。H2Oではコロンを破り、ダニー・ハヴォック・ハードコア王座初代王者に輝いた新鋭サリバンに、そのコロンが3連覇を目指すべくリベンジに挑む形。蛍光灯を景気良く割っていきながら、CZW TOD8のニック・ゲイジばりに、シカゴ・ブルズ時代のマイケル・ジョーダンのシャツを着用したコロンが、厳しい攻撃でサリバンを痛めつける。

 すると、そのサリバンは、降り注ぐブーイングをもものともせず、逆に煽り返した上で、アーン・アンダーソンばりのスパイン・バスターを蛍光灯束付きで放てば、王者コロンを後一歩まで追い詰める大健闘を見せる。

 最後は負けられないコロンが横綱相撲で振り切ったが、両者大活躍で疾走感、過激度満点の蛍光灯デスマッチに仕上げた。試合後の襲撃・乱闘シーンも今後に繋がりそうで、確実にサリバンはこの試合でブレイクスルー出来た。そしてそのブレイクスルーしたサリバン以上に、カリスマ性たっぷりの堂々とした立ち振る舞いと、攻める時の容赦たたみかけ、緩急の使い方等総合して、コロンが遂にベスト・デスマッチ・レスラー・イン・ザ・ワールドに辿り着いたのが見えたこの試合。とはいえ、ただまさか、この試合を簡単に超えてくるとは、この時もまだ夢にも思わなかった。
好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4

 

スクランブル・マッチ
カルヴィン・タンクマン対ジャック・カートウィール対ダンテ・レオン対ディラン・マッケイ対スターボーイ・チャーリー対ニンジャ・マック
 

 業界屈指の若手曲芸師とUSインディ界が誇るスーパーヘビー・タンクマンの夢の競演。当然スポットフェストだが、箸休めとしてはやはり楽し過ぎる。狂った飛び技連発はSNS時代に打って付け。場外への630°にフェニックス式630°と、飛んで飛んで飛んで回って回って回る内容。最先端のハイフライングはここにある!平均より上。
評価:***

 

準決勝-ガセットプレーツ&ライトチューブス・デスマッチ
アティカス・クーガー対G-レイヴァー

 GCWではヒール対決だが、NPUやH2Oでは火花を散らし続ける44OH!対H2O軍という構図があり、殴り合いからスタート。両者のフェイバリット凶器である緑竹串とタトゥーニードルの打ち合い等で盛り上げるも、決勝を控えている点、GCWではヒール対決である点を考慮して、良い試合ではあるものの抑え目。

 お題のガセットプレートは、CZWのMASADA対ダニー・ハヴォック戦、つまりオリジナルに忠実な形で据え付けていたのが印象的。MASADAからシンボルである竹串を奪い取ったアティカスと、ダニーとは縁が深いレイヴァーで再現したのは感慨深い。最後はロイドの介入からフィニッシュと、ストーリー重視で早めに切り上げた事もあり、改めて好調同士ワンマッチで試合を組んで欲しい所。平均より上。
評価:***

 

 

準決勝-タイペイ&ペインズ・オブ・グラス・デスマッチ
アレックス・コロン対ノーラン・エドワード

mdk2727.hatenablog.com


「Take Kare」の再戦。あの時はコロンが、GCWデビューとなったICW NHBが送り出した若手有望株のノーランを、良い試合ながら余裕を持って切って捨てた形だったが、この試合ではノーランのトンパチ具合が上手く試合に組み込まれていた。

 大量のガラスボードをメインに、公認凶器であるタイペイナックルは、打撃が得意なノーランが特に光る形式。通常形式の試合も得意な2人だからこそ、豊富なアイテムを使っても、全く散らかった試合にならなかったのは見事。それでいてガラスボードに、キャノンボールで、フルスピードで突っ込んでいくノーラン(上半身裸)の振り切り具合はやはり目を奪われる。雪崩式のスポットもありで、これはノーランが行くかと思わせておいて、ギリギリの所で耐えたコロンが一気に畳みかけるクライマックスは圧巻。

 ICW NHBでの現世代トップであるジョン・ウェイン・マードック対新世代筆頭ノーランを彷彿とさせる内容ながら、マードックとは違った魅せ方のコロンだからこそのテイストにしっかり仕上がっている。

iwtv.live

 ノーランもどんどん成長していき、只良い試合をして成長するだけではなく、風格も備わっているのが印象的。クレイジーな攻防満載の濃密な好勝負。例年であれば、十分この試合で満足出来るものだが、まさかこれを超えるデスマッチが生まれるとは夢にも思わなかった。
評価:****


決勝-ノーキャンバス、200ライトチューブス・デスマッチ
アティカス・クーガー対アレックス・コロン(w/マーカス・クレイン)

 


まず、試合前にこの後デスマッチHOFで殿堂入りとなる”シック”ニック・モンドがトロフィーを持って登場。『Last Resort』を聴いてブチ上がるのは、あくまでも序章に過ぎない。これも価値があるものだが、決してこれだけでなく、あくまでもその次が本編。
マーカス・クレインを引き連れたコロンの入場は、昨年の「TOS 5」の決勝同様ダニー・ハヴォックのテーマであるLibertinesの『What A Waster』で登場し、更にマーカスとダニーの名前が入ったTシャツを掲げながら登場。昨年は出来なかった超満員大歓声の会場で、盟友ダニーの追悼を果たす。ここまでで既に涙腺は爆発しそうだったが、まさかこの試合が2021年間ベスト候補最有力の試合になるとはこの時は知る由もなかった。

 試合形式は、リングの板剥き出し、蛍光灯が4面ロープに据え付けられ、蛍光灯ボード・ガラスボード、CZW 「TOD 9」のニック・ゲイジ対アブドーラ小林戦を彷彿とさせる蛍光灯大束もありと最終決戦に相応しい超豪華版。そして昨年コロンに敗れた軍団のボスRSPの仇を取るべく、アティカスがコロンに牙を剥き続ける裏テーマもある。

 超豪華凶器群を矢継ぎ早に消費していく一方で、観客を乗せながらの場外戦、板剥き出しのリングへの投げや蛍光灯攻撃等丁寧なセットアップも欠かさずに行う事で特別感を作り出していく。ヒールという立ち位置を崩さずも、正攻法で試合構築を担当し、コロンをリードしていけるだけの実力を示したアティカスも、そのアティカスの攻撃に対して、溜めを上手く作り、攻めだけでなく受けでもストーリーを作り、試合を発展させる。カリスマ性満点の働きを見せたコロンも出色の出来。

 これまででも過去の決勝の中でもトップの内容だったが、終盤以降は、デンジャラススポット満載の死闘モードに突入。大量の蛍光灯を消費しつつ、FREEDOMSのデスマッチ(特に葛西対MASADA)を彷彿とさせるリング下への奈落式ガラスボード葬に、板剥き出しリング&蛍光灯束への雪崩式スパニッシュフライ、ガラスボードへの雪崩式スタイルズクラッシュと即死スポットをこれでもかと続ける驚愕シーンの連続でも決まらず、遂に取り出したのはワイフビーター印のウィードワッカー!

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 TOD1の決勝でワイフビーターからウィードワッカー攻撃を喰らい破れ去った、張本人モンドがいる前で繰り出すウィードワッカー攻撃は、特別。それを耐え切り、腕が鮮血で噴き出し続ける中、コロンが決死の反撃で締め落とすのは、形は違うけれども、デスマッチジーザス、ネクロ・ブッチャーを彷彿とさせる。新世代の筆頭3人を最高の内容の試合で討ち取ったコロンが、前人未到の3連覇を達成し、名実共に王となり神となった大会。この試合単体だけでも年間はおろかデスマッチ史に残る名勝負となり、当然2人のキャリアベスト。

 昨年から44OH!の若頭として身体を張り続け、AKIRA、オーシャン、ノーランの光に隠れてはいたが、新人王ものの活躍を見せていたアティカスが、デスマッチ業界でしばらく食べていけるだけのマスターピースを残した。

 そしてこの試合を含め大会を通してのアレックス・コロンの活躍は、まさにBest in the world。昨年マードックが到達した境地に、ライバル団体のエースであるコロンが、瞬く間に登り詰めたのも面白い。CZW道場出身でキャリアのスタートも近い、アダム・コールがROH、PWG、NXT等でBest in the worldというべき活躍を見せ続けた位置に、デビュー時は思いもよらなかったデスマッチシーンで辿り着いた感慨深い瞬間でした。盟友ダニーも天国で喜んでいるに違いないでしょう。文句無しに名勝負。
評価:****3/4

 

{総評}
大会全体でもメインだけでも、デスマッチ通常形式メジャーインディ海外日本関係なく年間ベスト級。そして過去のデスマッチトーナメントの中でも歴代トップクラスの内容でした。CZWでいえばTOD1、2やGCWでいえば初回NGIに匹敵するかそれすらも超える内容の濃さでした。世界中のデスマッチファンは絶対に見逃し厳禁。
老いた伝説ではなく、現在進行形で作られていく伝説に刮目せよ。
デスマッチ史に残る伝説の大会です。

全体評価:10+