ICW No Holds Barred Vol.12 4/10/2021
本来のタイトルは、「ICW No Holds Barred Volume 12 - Farewell To The Pawn Shop」本来はフロリダでの大会で、いつも使用している会場のオーナーが亡くなった為、閉鎖となるその会場の閉鎖前最後の大会となるはずだったが、この日の昼からフロリダは突発的な豪雨に見舞われ、急遽前日使用していた、屋内会場に移動し、開催となった。
ICW No Holds Barred - IndependentWrestling.TV
ノーラン・エドワード対ダン・マフ
昨年の「Pitfighter X3」にて、窓からポイ捨てに代表される、プロレス史に残るドミネイトマッチをやっておけた両雄が満を辞して再戦。マフとの一戦後急激に業界での評価を上げ続け、今やインディ界きってのブレイクアウトスターとなったノーラン。今回の裏WMでは、収録試合と合わせて12試合もの試合数をこなした、まさに今回のMVP。
対するマフは、マフでノーラン戦の潰しっぷりで再ブレイクを遂げ、フルタイムで活躍していた時にはない荒々しさと洗練さの両立を遂げ、ICWの門番として君臨している。今回の裏WMでは、マフもMVP級の大活躍を見せた。
とはいえ、両者肩で息をする程疲労困憊。ノーランはこの前の試合がシュラックとのデスマッチというのも辛すぎる。ということで体力ほぼ0の状態からスタート。しかし、この試合は特別だと2人とも認識していて、手抜きもせず、ニアフォール合戦だけで形だけ付けて終わりとかもなく、骨が軋む様なチョップ合戦、場外戦では椅子に投げ、壁には放り投げ、柱にも叩きつけとマフが渾身の力でノーランをボコボコにする。只、前と違う所は、ノーランのやられっぷりがミラクルではなく、必然になっている点。暴虐と被虐をコントロールし切っていた所に、成長を感じる。
連戦でなければ、更に歴史的な試合を作れたとは思うが、この状態でベストを作り上げた事に敬意を称したい。フィニッシュもマフを超えるには物足りない決まり手ではあるが、連戦の疲労を抱えながら、マフの猛攻を耐え切り、文字通り精魂尽きたノーランが最後の力を振り絞った突撃と見れば、もうこうするしかない。マフが受け止めてやったのかと納得したくなる。試合も素晴らしいものであったが、試合後のマフのプロモを感動的。
エディ・キングストンの様には流石に出来なくても、エディの様に魂を込め尽くしたその言葉には、確実に言霊が宿っていた。ダン・マフが一線に帰ってきて、インディ界の門番として、更に進化を続けている事が感慨深い。ノーランは、シンデレラ・ボーイでこれから昇り竜の様にステージを上がっていくが、そのノーラン・エドワードのレスラーキャリアに、ダン・マフ有りという事を印象付けた。このカードは今もプロレス史に名を刻んでいるが、数年後、数十年後に伝説になるカードである。必見。
好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4
ニール・ダイヤモンド・カッター対タンク
ジェフ・キングの欠場により急遽参戦となったタンク。IWA Deep South色満載のカードは内容もIWA-DS感が強く、タンクがニールを一方的にボコボコにしていく形。ニールの受けっぷりが素晴らしく、タンクが攻めるだけで試合が完成。そこにニールも的確な反撃を加えてくれるので更に試合は昇華。
パンチこそキレていても、タンクは相変わらずスカす上に蛍光灯も全然受けないので、また某浪速の大先輩レビュー師氏からケキョンケキョンにされるぞと思ってしまうけれども、やっぱり今回も案の定でしょう。ニールの凄さが良くわかる一戦。というかニールにしかタンクは処理出来ない。平均的良試合。
評価:***1/4
ホームラン・ダービー・デスマッチ
ルーベン・スティール対サトゥ・ジン
ホームラン・ダービー・デスマッチなので、各種バット系の凶器を叩きつけ合う形。画鋲バットを叩きつけながら同時に頭突きを喰らわすルーベンのトンパチ具合は光っていて、対するジンも体格に合ったファイトスタイルを突き詰めようとする意図があり、実際地獄突き等の打撃は鋭く、見得の切り方も様になっていた。各種凶器をこれでもかと使いつつ、間に挟む剣山攻撃や打撃も上々。
何よりも前回「Pitfighter X6」でのこの対戦が素晴らしい内容となった事で、この組み合わせなら、今の勢いならどこでも勝負出来ると自信にみなぎっていたのが何よりの源である。ジンが手を負傷した為、巻きで切り上げたものの、それまでは本当に見応えのあるデスマッチであった。
オープニングとメインも捨て難い試合ではあるが、過激度の高さ、出し切ったという意味では試合のみの観点からすれば、この試合がMOTN。好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4
ICWアメリカン・デスマッチ王座初代王者決定戦
ジョン・ウェイン・マードック対エリック・ライアン
遂に新設されたICWアメリカン・デスマッチ王座。名前もベルトのデザインも格好良過ぎる。こんな格好良いベルト中々ないでしょう。正直WWEとかUFCに見せてやりたいレベル。GCWウルトラヴァイオレント王座が新設されたその数時間後に、簡単に塗り替えてしまうのだから、ダニー・デマント恐るべし。
Blood, Sweat & Tears into this. pic.twitter.com/HhvXOOqobB
— The Struggles (@TheStruggles23) 2021年4月11日
このカードは、ICW NYがICW NHBと生まれ変わった「Vol.1」で対決。その時はまだデスマッチ団体にするというコンセプトではなく、マードックをエースに据えるというわけもなく、ライアンが普通に勝利している。
その様な超大一番とあって、オーソドックスなグラウンドの攻防からスタートし、蛍光灯を交えつつ、丁寧に試合を進めていく形。地味にライアンの方がナイーブになっている雰囲気はあり、十八番のフォーク攻撃等でカバーはしていたが、入場時の44 OH!所属とは思えないほど、神妙な面持ちは未だかつて見たことがないレベル。しかし、エースマードックが下支えをしつつ、ライアンもベテランなので帳尻は合わせてくる。ちなみに全編リングの板剥き出しの状態なのは、FREEDOMS=葛西や竹田を意識しての演出だろう。
大流血で凶器の使用量も多く、イアン印のナックル合戦は2回の大盤振る舞いと見所十分ではあるが、全体的なテンションは低め。会場が会場なので、場外スポットや高さを余り使えなかったのは痛手だった。当然2人ともこれまでの連戦で消耗している事も要因だろう。只、LED付き発光蛍光灯大束×2などビッグスポットとそれぞれの必殺技の打ち合いで、堅実にまとめた所は流石ベテラン。
しかしこの2人なので、クライマックスからフィニッシュにかけて、後2つ位は大きい仕掛けを用意しているとは思っていた。当然余りにも期待値が上がり過ぎてしまっていた所はあるので仕方はない。
それでも今後の展開に期待しか抱かない王座戦。数年前は、若い時に実績は作ったものの伸び悩み、ただの中堅だった2人が、皆の期待を背負い、この様なシーンを左右する大舞台に立つ事になるとは思いもしなかったので、非常に感慨深い一戦であった。裏WMのラストに相応しい説得力は備わっている。好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4
全体評価:8.5