世界のプロレス探検隊

WWEAEW新日本インディ他、国内外問わずプロレスのマッチレビューを行っています。

AEW Review 2021 クリスチャン対カザリアン/サプライズ連発! Arcade Anarchyマッチ

AEW Dynamite #79 3/31/2021
クリスチャン・ケイジ対フランキー・カザリアン

 約6年半ぶりにクリスチャンがシングルマッチを戦う。(※直近のシングルはオートンとの非公式試合だが実質スキット。)

 対するのはTNA時代にラダーマッチをも戦ったカザリアン。友人関係なのもそうだが、やはり戦った事があって、尚且つクリスチャンを熟知しているベテランの仕事人である所が、白羽の矢が立った要因だろう。AEWではシングルマッチが余りないカザリアンではあるが、ロックアップの力強さでこの試合が並々ならぬものであると認識させ、攻防をテンポ良く切る形の構築に、ヒール調の試合運びと隙がない。約6年半ぶりのシングルとなる47歳である事を考えれば、クリスチャンは健在ではあるが、まだ動きや受けがおぼつかないシーンも多々あり、流石にブランクは感じたが、そのブランクや体力の衰えすらも、組み込んだストーリーテリングは見事。

 この試合におけるカザリアンの働きは実に素晴らしく、終盤もチキンウイングの様な、激し過ぎずも良い画を作ることが出来て、尚且つクリスチャンが反撃し易い様な攻撃セットを組み、攻防の合間の表現も完璧であった。TNAの時はレイヴェン軍団セロトニンを抜け、トップ戦線に食い込もうとするカザリアンを、トップを張っていたクリスチャンが手助けした格好だったけれども、この試合は、構図としては元々カザリアンがいた団体にクリスチャンが流れ着いてきたという意味では同じだが、カザリアンが、クリスチャンの復活を手助けするという14年前にはなかった光景が見られた。カザリアンの円熟味溢れる試合運びが、クリスチャン復活ストーリーを昇華させた理想的な試合内容。そして散々身体を張りまくっていた14年前のラダーマッチよりも今回の方が良い試合になったのは非常に興味深かった。好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4

 

 

 

 

 

ケニー・オメガ&グッド・ブラザーズ(ドク・ギャローズ&カール・アンダーソン)(w/ドン・キャリス)対ルチャ・ブラザーズ(ペンタ・エル・セロ・ミエド&レイ・フェニックス)&ラレド・キッド

 ルチャ・ブロズ&ラレドが先制攻撃。その先制攻撃がこれでもかと飛びまくり、ヤング・バックス顔負けのスーパーキック乱舞も見舞いと最高のスタート。そこからBC組が、ギャローズの切れ味鋭い拳にケニーのヒールプレイなどそつないタッチワークでラレドをローンバトルに追い込んだ後は、再びルチャ・ブロズが大暴れ。業界最高級のキレを武器に、縦横無尽に暴れ回る。ギアの上げっぷりはまさに唯一無二である。圧倒されっぱなしではあるものの、BC組も何とか返して行き、最後はケニーの力技で押し込むのも理想的。PACとのデス・トライアングルとは違うパワーバランスだからこそ出来た内容の試合である。BC組の悪さを見せる意味では、ラレドクラスの実力はあるけれどそこまで格は高すぎない選手は、ベストチョイスであった。アクションてんこ盛りでありながら、BC組の強さ悪さは残すという、全編通して狙い通りの見事なトリオマッチ。好勝負。
評価:****

 

Arcade Anarchyマッチ
チャック・テイラー&オレンジ・キャシディ対ミロ&キップ・セイビアン(w/ペネロペ・フォード)

 何気なく組み続けているジェントルマンズ・クラブのチャッキーとキャシディではあるが、何と言ってもこの組み合わせは、F.I.S.TとコロニーのCHIKARAドリーム・チームであるので、より火蟻モードが強くなるタフマッチでは、やっぱり思い出してしまう。AEWの中でも歴史が格別に深い組み合わせ。当然裁くレフェリーはプライス氏。

 この試合は、1人桁違いに強いミロのドミネイトと、それに対処する為決死の思いで立ち向かうチャッキーとキャシディという構図。もうルセフモードになっているルセフは、ハイパーアーマーとまではいかないが強さをプロテクトされていて、セイビアン抜きでも圧倒してしまうが、数的優位と凶器攻撃で何とか埋めるバランス感覚が絶妙。セイビアンに対しては、キャシディが火蟻モード全開の荒々しい攻撃を見舞うのも面白い。通常の凶器攻撃だけではなく、モグラ叩き等テーマにちなんだアーケード・ゲーム機を使う城外戦も楽しめる。

 ミロ以外は強さや激しさが持ち味ではない選手ばかりだが、ベテランばかりなので、ハードコアに対する対応力は流石で、身体も張り締める所は締めるので、試合が緩まらない。ミロも安心してドミネイターを演じられる。そして終盤はサプライズも満載。まずはUFOキャッチャーに潜んでいた"Galaxy's Greatest Alien"ことクリス・スタットランダーが約1年ぶりの復活を遂げ、介入したペネロペ・フォードを断崖式ホッケーボード葬で粉砕。構わず暴れるミロに対しては、欠場中だったトレントが母親スーを引き連れて復活!何とかミロをテーブル葬で弱らせ、最後はステージからの奈落式テーブル葬で豪快にフィニッシュ。

 元WWE戦士ミロと豪華セットが織りなすメジャーのスケール感の高さとその他の演者ならではともいえるインディ感溢れるハードコアに、スタットランダーとトレント復帰と良い所ずくめの激戦。中堅の人気者であるベストフレンズとキャシディがこれでもかと特殊形式の試合で素晴らしい内容を残してくれるのは頼もしい限り。AEWの躍進を支える大きなピースになっている。好勝負。
評価:****

 

全体評価:9+