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AEW Review 2021 "Lights Out Match" サンダー・ロサ対ブリット・ベイカー

AEW Dynamite #77 - St. Patrick's Day Slam 3/17/2021

アンサンクションド・ライツ・アウトマッチ

サンダー・ロサ対Dr.ブリット・ベイカーD.M.D(w/レベル)

 好勝負連発の好調ロサと新世代の殺人医師、いや殺人歯医者ともいうべきベイカーの流血戦に外れなしという一戦。試合はまさにピュア・ヴァイオレンス。レベルを使った奇襲から花道でのエア・レイド・クラッシュに場外戦で掴みは上々。所々女子選手のパワー不足な所は見られるものの、それをハードな攻防、流血とレベルの介入で完全にカバーして見せたのも見事。

 椅子、ラダーをしっかり使った後は、テーブル、極め付けは画鋲の出番。初回のライツ・アウトマッチとなったケニー対モクスリーに匹敵する過激度。しかし凶器を使うだけでは単なる良いハードコアマッチレベル。それを格段に昇華させたのは、2人のアクション以外の表現力の部分。ロサはいつもよりも前傾姿勢でいて、獰猛さを、驚いた表情や歯を食いしばる表情で死闘感を打ち出す。まとまり過ぎるよりも多少粗さがある位が、ハードコアにおいては良さを増す事も上手く作用していた。

 そしてベイカー。前回の流血戦となった志田戦に象徴されるように、流血した時の表情が画になり過ぎる。小賢しいヒールアピールもカリスマ性を帯びており、手袋を付けて必殺のロック・ジョーに行くと見せかけて、画鋲を取り出すシーンのカメラアピールの巧さは、まさにスターそのものであった。それでいてこれでもかとボコボコにされるのも見事。画鋲受けの魅せ方も完璧。しかも画鋲で終わらず、断崖式のテーブル葬のおまけ付きとあっては文句のつけようはない。

 こんな試合、昔は良くやっていたでしょうと思う人もいるだろうが、女子選手のメインで、片方はまだ代表的な好勝負のないベイカー、もう片方は契約選手ではなく、血統書もなく人種もヒスパニック系のロサで、この様な流血戦を全米のプライムタイムかつ世界中がライブで観ることが出来る今現在に行えたのに、大きな意義がある。

 長きに渡る抗争の決着戦をあえてPPVから外して、通常放送でメインに持ってきた選択も見事、その大抜擢に応える死闘をやって退けたのも素晴らしい。 2人のキャリアメイキングマッチであり、AEW女子部門史において今後も語り継がれる試合となった。デスマッチの失敗は、デスマッチで清算する。団体の弱点が女子部門なら女子部門で払拭する。何度でも見たくなる凄惨でありながらも清々しい名勝負。

評価:****1/2