世界のプロレス探検隊

WWEAEW新日本インディ他、国内外問わずプロレスのマッチレビューを行っています。

WWE Review 2021 ケイ・リー・レイ対里村明衣子/紫雷イオ対トニー・ストーム他

WWE NXT UK #134 3/4/2021
NXT UK女子王座戦
ケイ・リー・レイ(c)対里村明衣子

 EVEの時は、女子プロレス界の横綱里村にKLRが挑む構図だったが、今回はNXT UKで名実共に敵無しという状況が続く絶対王者、UK女子界の横綱KLRに新参者里村が挑む真逆の構図。KLRがヒールという立場であり、NXT UKとはいえWWEなので、持ち味を発揮出来ずそこそこで終わるかと思っていたが、想像を遥かに超える大熱戦となったこの試合。

 里村が激しい打撃で攻めれば、KLRも普段見せない張り手で応戦。KO級の激しい打撃と関節技に加え、エプロンでのデスバレーボムといった特別仕様の攻撃も披露。KLRがボロボロにやられていく展開ではあるが、良い意味でヒールプレイに逃げず、絶対王者として真っ向から立ち向かっていたのは、この試合を発展させた要因だろう。

 里村は圧倒的な攻めタイプ、KLRは攻めでも受けでも試合は作れるが、特にハードパンプをベースに作るのが得意な選手なので、相性は抜群。必殺技を派手に使っていたのも大一番、特別な試合である事を示していて良く、その間に使う関節技の織り交ぜ方も絶妙で尻上がりに試合の質も熱も上がっていく。

 里村の容赦なき攻撃を耐え切ったKLRが、インディならカナディアン・デストロイヤーと行きたい所だが、今回はしっかり持ち上げる正調ゴリー・ボムを繰り出しフィニッシュ。試合展開に加え、まさかのクリーン・フォールという事に驚いたが、名実共に、更にKLRに箔をつける目的を遂行した。ようやくKLRの実力と実績に見合った代表的な試合をWWEで作り出す事が出来た。

 里村を呼んだ甲斐があった大熱戦。里村もWWEしか観てない人に対しても偉大なるリビングレジェンドであるとアピールする事が出来た。好勝負。
評価:****

全体評価:7

 

WWE NXT #446 3/10/2021
NXT女子王座戦
紫雷イオ(c)対トニー・ストーム

 良い試合。激しくスピーディーな展開からイオの華麗な攻撃で締めていくスタイルは堅実で、間違いのない内容ではある。トニーが並の選手ならこれで拍手を送りたいが、彼女はトニー・ストームなので、まだ物足りないと思ってしまう。

 濃いキャラクターを付けるには美しく強過ぎる。でもそれはWWEという場では光らない。上背がないというのも一つの要因である。WWEも活かし方がわからないけど、男子に比べれば層は薄いので、良い試合が出来て、イオのライバル関係もあるからとにかく使おうという形。

 でもテイクオーバーでは3ウェイ、シングルでも通常放送でオープニングと余り信頼はされていないというのが読み取れる。かといってタッグ屋にもなれないので、どうすべきか。批判覚悟でカーメラの様なキャラクターを付けるかどうかするしかないのだろうか。難しい立場から脱却する為の試行錯誤は続く。平均的良試合。
評価:***1/4

 

NXT女子タッグ王座戦
ダコタ・カイ&ラクエル・ゴンザレス(c)対エンバー・ムーン&ショッツィ・ブラックハート
 シンプルな技の打ち合いで一進一退。実績があり動ける選手が揃っているので攻防も見応えあり。その中でもショッツィはずば抜けて華がある。

 今後イオに挑戦するラクエルをプロテクトする為に、控えめな働きであったが、その分もカイが活躍していて、試合に色を添えていた。良い意味でインディ的な要素もあり、タッグとしての面白みがある内容で満足出来る。平均的良試合。
評価:***1/4

 

NXT王座戦
フィン・ベイラー(c)対アダム・コール
 結論から言うとコールとオライリーの抗争を煽る、その画を見せたいが為に組まれた試合。昔なら適当な試合で最後の画だけしっかりやる。それがTVプロレスなのだが、今のNXTはそれすらも手を抜かない。というか手を抜けない時代になっている。

 本来ならベイラー×コールの因縁はあるものの、次の抗争が控えているので、因縁は置いておいて、レスリングベースの試合。ヘッドロックの攻防から丁寧に厳しく一つ一つの攻防を紡いでいく展開は、ROHっぽいなと言う印象。無駄を省きとことんソリッドに。一進一退の攻防から各種得意技の応酬にオライリー登場からのフィニッシュまで全速力で駆け抜けた。

 素晴らしい内容ではあるが、印象的なシーンは余りなく、そこを補ったのはオライリーの登場なので、ある意味狙い通りとなっている。ただ、インディを長らく観てきた側としては、10年戦争みたいな抗争であり、ROHでも散々流血試合も行ってきている上、WWEでの比較対象はガルガーノ×チャンパの伝説的な抗争劇という余りにも高すぎる相手という中で、WWEがこの既視感溢れるどう料理するのかは楽しみである。逆に新鮮味のあるベイラー×クロスの組み合わせの方が興味をそそられる。好勝負。
評価:****

 

全体評価:7.5