世界のプロレス探検隊

WWEAEW新日本インディ他、国内外問わずプロレスのマッチレビューを行っています。

スターダム レビュー 朱里対渡辺桃/ "ノーDQ"ジュリア対刀羅他

STARDOM『スターダム10周年記念日』1/17/2021

ワンダー・オブ・スターダム選手権試合-ノーDQ
ジュリア(c)対刀羅ナツコ
  ラフファイトやハードコアは難しい。アメリカンプロレスの様に年がら年中ハードコアを行っていても、向き不向きが出てくる。その中で普段余りそういった試合をしていない選手が行うのは、難しさが如実に現れる。

 刀羅に関しては、花月のもとで、ヒールを学んだとはいえ、花月も凶器は使わないスタイルのヒール、アンチヒーロー的存在だった為凶器を使うスタイルは今取り組んでいる最中。一要素としては使っていても、試合全体で取り組むのは殆どないだろう。そしてラフファイトは学んで覚えるのにも、時間がかかる。ましてやセンスがかなり求められる所も大きい。他との差別化で取り組むのはかなり重要。だが他に教材がいない中、見よう見まねで覚えていくのは時間がかかるだろう。

 対するジュリアの方が、ラフファイトに対する適応を見せる。圧倒的な華があり、キレの良い攻撃で締める事が出来るだけで印象は良くなる。こういう試合が組まれる意味でも、今この団体はジュリアを中心に回っているのを示している。長い因縁でもなく、チェーンを使う様な遺恨戦の後に、相手を簡単に認めるマイクは余りにも爽やか過ぎるとは思うが、それでこそ漫画の世界における主人公要素が強く、ファンは付いてくるのだろう。

 試合は、凶器は使うものの、瓦割りやチェーンとチョイスがベストとは言えず、結果凶器なしの攻防に頼らざるを得なかった形。通常の攻防自体は悪くないものの、違いを生み出すまでは至らず。平均より上。
評価:***

 

ワールド・オブ・スターダム王座戦
林下詩美(c)対舞華
    舞華がJTO在籍時から続くライバル関係。スターダム参戦のきっかけとなった抗争でもある。団体は同じとなったが、立場はますます差が開く形となった。王者林下が初めてリードする立場となった防衛戦。

 キャリアは下で、ビッグマッチの経験は少ない。同じ柔道ベースでスタイルが似ている選手という、善し悪しがあったが、この試合はネガティブな要素の方が強く出た形となる。実力以上の24分を乗り切る事で精一杯で、試合が単調。アスリートとしての能力は高く、動きは良く、技も良い。その部分では良い点ばかりだが、良い動きと技を並べるだけでは、20分超えの王座戦は良い試合にはならない。

 打撃が使えないのと、関節技に必殺性がないので、スパーリング感が出過ぎて、緊張感が生まれない。シンプルなもので良かったので、終盤に放った張り手の様なライバル関係を示す様な仕掛けが、全体的に欲しかった。写し鏡様な存在なので、いずれより大きな舞台で組まれる可能性は高い。恐らくその為の経験値を積ませる為のマッチメイクだけども、それを超えなかったのは、残念だった。平均的良試合。
評価:***1/4

 

STARDOM

『高田馬場大会~日本武道館大前夜祭』1/30/2021

SWA世界選手権試合
朱里(c)対渡辺桃
 蹴り合いは蹴り合いでも、単なる気合の見せ合いから始めず、ローキックを見せてから、ミドルに上げていき、投げや関節技等他の技を使った攻防に持ち込んだのはハイセンス。コーナーで逆さ吊りにした朱里の頭部に蹴りを入れたり、単なるストンピングでも一層厳しく打ち込んだりと、只のストライカー対決以上の試合にしようとした渡辺桃の意識の高さは印象的。SWAレベルの選手ではないけれども、実力者朱里を迎えるにあたって、最高のもてなしを見せてくれた。

 一方の朱里は、アクションの質の高さは健在だが、魅せ方は改善の余地あり。ずっと叫び続けるのは、気合を見せる手段としてそれを褒めたたえる文化は、確かに日本には存在する。対する渡辺が、気合を見せずに、クールに進める選手なので、対比すると朱里の気迫が勝ったと表現したくもなるが、中盤から最後までどんな時もずっと叫び続けるのは、いくらなんでもやりすぎだろう。DDMというスターダム版ロスインゴ的ユニットという意味でも、朱里というUFC上がりの最強の実力者という立ち位置でも、余りにも似合わない。実力は申し分なく、日本最高レベルである中で、スターダムに入り、見せ方を変えよう。DDMのメンバーがクールビューティー揃いなので、自分が!というのも理解は出来るが、TPOは考えた上でやる必要がある。

 当然朱里も長いキャリアを築いてきた選手なので、修正はするだろうが、この試合は引く位叫んでいて、その割には試合の質は上がっていかなかったので、叫び損という印象が強く残った。前半の内容はすごく良く、女子選手でストライカー対決はそもそも中々ない上に、業界トップの実力がある者同士なので、再戦は是非とも観たい所。中々良い試合。
評価:***1/2