世界のプロレス探検隊

WWEAEW新日本インディ他、国内外問わずプロレスのマッチレビューを行っています。

GCW Take Kare Review レイヴァー対ロイド/RSP対ジョーイ ~王の帰還とAEWへのアンサー~

GCW Take Kare 3/6/2021

 

▷ GCW: Take Kare - Official PPV Replay - FITE

 

ノーロープ・バーブドワイヤー・デスマッチ
G-レイヴァー対ジミー・ロイド
 衝撃のアイ・クイット戦を経て、激化したこの抗争の決着戦の舞台はノーロープ有刺鉄線デスマッチ。翌日にAEWで行われる電流爆破デスマッチを控える中、電流爆破のオリジネーターであるFMWと同じ時代で活動し、共に業界の革新を図ったECWの後進団体であるCZWの、更に流れを汲むGCWが、現在進行形のデスマッチ団体として、そしてUSインディの盟主たる姿を見せるべく組まれたとも言えるだろう。
 そしてこの試合、ゲスト解説に昨年引退をしたマット・トレモントが登場。大仁田厚と戦い、タッグも組んだ、自他共に認めるUSが誇る最強の信者であり、USデスマッチ界の若きレジェンドをこのタイミングで登場させるのもAEWを意識しての事だろう。


 

当然ケニーとモクスリーに比べれば、レスラーとしてのスキルは劣るけれども、デスマッチレスラーとして負けてたまるかという、秘めた闘志が爆発したこの試合。正直ノーロープ有刺鉄線デスマッチは、かなり難しい形式で、耐えきれず他の凶器を入れたくなる中で、殆ど有刺鉄線系の凶器に拘り、無理にクラシカルな魅せ方をするのではなく、レイヴァーによる張り巡らされた有刺鉄線の間をすり抜けるトペ・コンヒーロに始まり、とことん有刺鉄線でロイドを甚振る展開で試合を作り上げたのは賢明な判断。

 今のデスマッチ界でもトップレベルの輝きを放っているレイヴァーが、エグくロイドを甚振るので、画力の強いシーンとなる。ロイドもこういう時の被虐性、生贄力は高い選手なので、相手としては申し分なし。低調な試合が続いたロイドも、レイヴァーに引っ張られる形で、活きの良い働きを見せる。
 そして中盤以降は、場外に設置された有刺鉄線ドア破壊や剥き出しの場外床への投げ等断崖式のクレイジー・スポットをこれでもかと叩き込む。レイヴァーの高い身体能力を使っているので、見栄えも最高レベル。アクセントとして使った気合起き上がりも最高のタイミング。耐え抜いたロイドが、ジョン・ダマーもしくはスーパー・ドラゴンばりのバリー・ホワイト・ドライバーを決めフィニッシュ。

 大怪我から復帰してからのレイヴァーの存在感は日に日に増していて、キャラクターやルックスも相まって神格化が進む。その勢いそのままに、AEWへの素晴らしいアンサーを見せてくれた。凄いことをやるのはわかる。でもインディぶっているけど、大金を持つ資本の入ったメジャーでしょ?真のインディ魂を、真のデスマッチを見せるのは俺らだ!と言わんばかりの見応え満点の狂った一戦でした。AEWの電流爆破と合わせて見るのをお勧めします。好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4

 

アティカス・クーガー対Effy
 エフィーを44OH!に勧誘するクーガー。断るエフィーに蛍光灯攻撃一閃!デスマッチでメキメキと頭角を現すクーガーが、蛍光灯に緑竹串を活用し、エフィーを流血に追い込む。エフィーも蛍光灯クローズラインで反撃するも、竹串葬からすぐさまクーガーが反撃し、圧倒したまま幕というメインに繋げる為のストーリー重視の試合。

 しかしデスマッチとアナウンスされていなかった中での蛍光灯登場に、意表を突かれた形となり、盛り上がった試合。平均より上。
評価:***
試合後、エフィーが勧誘を受け入れ、なんと44 OH!に加入!

 

アレックス・コロン対ノーラン・エドワード
 ICW NHBを中心にインディシーンで頭角を現している新星エドワードが、TOS連覇、GCWデスマッチ部門のエース、コロンに挑むチャレンジマッチ。GCWを観ている様な人はICW NHBでエドワードの躍進を既に見ているとは思うが、ストーリーに則り、エドワードがコロンの猛攻、沢山のガラスボード葬を耐え抜き、リスペクトを得るという形にする為、見えない格差をかなり描いていた内容。

 こういう時、コロンにもう少しアピール力があれば、早めにフィニッシュシーンの様な鋭さを見せていれば、場内の熱量も上がったはずとは思うが、元々GCWの内部にいて、そこから独立し、商売敵ICW NHBを立ち上げたダニー・デマントが用意した若造はどんなものだと、アウェー感を必要以上に出していた観客も、マフやマードック等歴戦の猛者に削られまくっているエドワードのタフさは認めざるを得ない。

 エドワード自体もガラスボードへのネックスクリューの様な機転も効かせられる選手で、もっと出来る存在ではあったが、ストーリーの為にテンポを抑えながらも見事な働きを見せた。ガラスボードが大量に出る試合なので、インパクトは十分で楽しめる。まあまあ良い試合。

評価:***1/2

試合後、裏WMのコロンプロデュース大会で、エドワード対シュラックが決定となる。

 

GCW世界王座戦- Title vs Rights of Joey Janela’s Spring Break
(44 OH!が介入した時点で、RSPは王座剥奪となる。)
リッキー・シェイン・ペイジ(c)(w/ 44 OH!)対ジョーイ・ジャネラ
 自分の存在意義、ライフワークであるJJSBの権利を賭け、尚且つ汚され続ける団体の至宝を奪還する為の大一番とあって、いつも以上にブレット・ハート感を強めた特別仕様のコスチュームで登場したジョーイ。リングサイドで陣取った44 OH!の介入不可の条件が付いた為、RSPもシリアス度を強め、ベルトを守りに行く。

 会場を使った場外戦では、過激度は高くなくても、的確に進めていき、売店売り場のテーブル破壊で上手く締めて、RSPがそつなく甚振る中盤を経て、終盤は、凶器を投入しながら一進一退へ。ジョーイのビッグダイブを皮切りに、流血したRSPもここ一番でしか出さない豪快な飛び技を見せる一方、ジョーイは巨大ラダーからのダイブで反撃。凶器使用も軽さを出さず、大一番である雰囲気を守ることを第一に、丁寧に試合を進めていたのが印象的。2人とも丁寧に試合が出来る選手で、その上でハードコア・レスリングは得意中の得意なので、外さない。

 もっと詰め込むことは出来るが、試合の質以上にストーリーを遵守している為一定レベルで抑えられているものの、ベテランらしい確実な仕事を遂行した。

 そして待ちに待ったクライマックスは裏切りに次ぐ裏切りの大波乱。あのデスマッチ史はおろかUSインディ史に残る名大会となった『Run Rickey Run』から一年。サプライズに次ぐサプライズ。大会全体を通してこの為にストーリーを種蒔きしたのが功を奏した結末。

 ゴミが散乱し、会場が怒号と絶望に溢れる中、鳴り響く希望と狂気の鐘の音。Metallica『For Whom the Bell Toll』が流れれば、当然登場するのは、「The King」「MDK ALL F’N DAY」ニック・ファッキン・ゲイジ!!!!
 負傷していた脚も治った様で、瞬く間に44OH!をクリーンハウスし、裏WMでRSPとの一年越しの世紀の再戦をブチ上げました。
 ダーティー・フィニッシュからのこのサプライズ、ECW〜CZWそしてGCWと脈々と受け継がれるアメリカン・インディープロレスらしいどんでん返しは見応え有り。それまでの内容も良く、これを観てアガらない人はいないでしょう。

 

 CZW時代にCZW世界ヘビー級王座戦を巡り、半年以上の長きにわたる抗争を繰り広げたジョン・モクスリーが、電流爆破デスマッチを行う前日。11年前若きモクスリーを来る日も来る日も血祭りに上げていたゲイジが、モクスリーのデスマッチ・アイコン化に待ったをかけるが如く復帰したのは、偶然か必然か。全てが歴史の鎖でつながっていて、明日のAEW『Revolution 2021』の布石となっている。デスマッチ冬の時代を乗り越え、復興の立役者として現在進行形で戦い続けるデスマッチ団体GCWの、商売敵ICW NHBを飛び越えて、メジャー団体AEWへのアンサーを見せた試合であり、今大会でした。中々良い試合。
評価:***1/2

 

全体評価:8.5