世界のプロレス探検隊

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WWE NXT TakeOver: Vengeance Day Review ジョニー・ガルガーノ対KUSHIDA他

WWE NXT TakeOver: Vengeance Day 2/14/2021

まず今回の大会テーマは、Bring Me The Horizon の新譜『from the album Post Human: Survival Horror』からObey feat. Yungbludを起用。

BMTHは、Babymetalともコラボしており、当ブログをご覧になっておられる方には、リッキー・シェイン・ペイジの入場曲である『Can You Feel My Heart』でお馴染みでしょう。

 

1:Women's Dusty Rhodes Tag Team Classic決勝
ダコタ・カイ&ラクエル・ゴンザレス対エンバー・ムーン&ショッツィ・ブラックハート
 一番の巨体を誇るラクエルを中心に据えた展開が続く。激闘となったリア戦を経て更に格上げとなっているものの、攻めに受けにと余りにも出過ぎな所は否めず。ラクエルのレスラーとしてのスキルが上がっているとはいえ、カイがサポート役に徹しすぎないといけなくてなっていて、タッグのバランスは微妙。カイもその役割は出来るけれども、この試合においては単純に影が薄くなっていたのは惜しまれる。

 エンバーとショッツィもこの大会の為の急造タッグなので、技の打ち合いやスポットではアドバンテージが出せても、タッグチームの面白みには欠けていたという印象。これをするなら、各々にもう少しスターパワーが欲しい。只、その技の打ち合いに関しては、連携や合体技も正確に決まっていて、場外や花道の使い方も上々。身体を張ったスポットも多く、特別な試合にしようとする気概は伝わっており、ある程度はその頑張りに見合ったクオリティとなっている。中々良い試合。
評価:***1/2

 

2:NXTノース・アメリカン王座戦
ジョニー・ガルガーノ(c)対KUSHIDA
 KUSHIDAが、いつどこでもギブアップを奪い取れるシューターである特徴をより強く印象付けた試合。体格が小さくキャラクターが薄い分、ファイトスタイルでカバーしていく。世界最高の軽量級ファイターであることは、既にNXTでも示していたが、コスチュームやルックスのアップデートも相まって、ますます存在感を上げている。

 対するガルガーノは、KUSHIDAの良さを極限まで引き出しながら、細かなヒールとしての所作でクシダに出せない部分を補う一方で、少し荒く崩した攻撃で反撃する所も、ヒールとして徹底していて、やはりセンスがあると感心。ヒールのガルガーノも安心安定の高品質である。終盤以降もクシダの腕攻め&関節技をキーとして展開。七色の腕攻め+新しく必殺技として据えている魔神風車固めの使い方も絶妙。地味ではあるが使い方で価値を高めている。

 惜しい点としては、ガルガーノがKUSHIDAに合わせ過ぎていた所。小悪党ヒール道を進んでいるのは理解出来るが、プリースト等とは異なり、体格が同じサイズのKUSHIDAであるので、少しだけ攻めの割合を増やして、スリル感を更に高めたかった。この内容でも拍手をしたくなる素晴らしい内容だったが、更にエピックマッチに仕上がったはず。KUSHIDA自体がアンダードッグ性を持たないヒーロー属性の選手である為、ガルガーノ側の仕掛けで演出力を高めていきたかった。

 ルミスの拉致は面白かったが、セオリーなどガルガーノ一派の介入があっても面白かった。しかし卓越したテクニック満載の大激戦となり、WWEにおけるKUSHIDAの代表的な試合となった。文句無しに好勝負。
評価:****1/4

 

3:Men's Dusty Rhodes Tag Team Classic決勝
MSK(ナッシュ・カーター&ウェス・リー)対グリドルド・ヤング・ベテランズ(ザック・ギブソン&ジェームズ・ドレイク)
 堅実なインサイドワークを誇るGYVと、アグレッシブなアクションを連発するMSKの対決。試合前のマイクこそあったが、全体的にGYVのヒール要素は少なめ。もう少し小狡く悪くする事で加点を出せるタッグなので、アクセントは加える事が出来ただろう。試合時間も18分あったので、出来ない言い訳にはならない。

 しかし、リバイバルが退団後堅実なタッグ屋として、1番NXTのタッグ部門を支える可能性を持っているのがGYV。堅実だけれども、連携は豊富で派手に締める能力も備えている。嫌われ者としてのキャラクターも十分。この試合でも、一応WWEでは新参者のMSK相手に、上手く試合を回していた。

 MSKは、飛びっぷりは健在。それでいて支配される役となる元ウェンツのカーターの試合運びの上手さがよりフューチャーされる格好となる。GCW Bloodsportに参戦した事が示す通り、アマレスベースでレスリングは出来て、今はウェイトも上げて説得力もある。WWEに行ったことにより、長所でありつつ短所にもなっていた試合全体通して動き回りすぎる所が、改善されていて、元デズモンドことリーの爆発力が一層引き立っていたのは好材料。MSKに必要な最後のピースが揃いそうな予感があった。

 このアクション満載の内容ならば、もう少しスピード感を上げても良かったものの、決勝らしく大ボリュームの内容となっている。もっと磨けば、DIY対リバイバルの様な黄金カードになり得る存在である。好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4

 

4:NXT女子王座戦-トリプル・スレットマッチ
紫雷イオ(c)対トニー・ストーム対メルセデス・マルチネス
 実力者揃い超豪華メンバーによる3ウェイ。このメンバーなら革新的なものが出来るのではないかと思ったが、セミである点、不調のトニーを擁している点を踏まえてムーブの打ち合いという一番安全策を取った形。

 イオのハイフライは炸裂しており、高所ダイブも見せて魅了すれば、メルセデスとトニーもそれに続く。場外フェンスやバリケードも活用しながら目まぐるしく。只この3人ならこれ位朝飯前。もっと高みを目指して貰わないといけないレベルにある選手。良い試合だけれども、物足りないなという印象。クライマックスからフィニッシュにかけて、綺麗に決まらなかったのも印象を少し下げた要因。中々良い試合。
評価:***1/2

 

5:NXT王座戦
フィン・ベイラー(c)対ピート・ダン
 本来ならNXT UKのテイクオーバーで組みたかったかもしれないほどのドリームマッチが実現。
 ピートの堅いレスリングと打撃にベイラーも乗っかり、硬派な削り合いを展開。ベイラーも、最近はこういうゴツゴツした試合を趣向している傾向があるので、願ったり叶ったりだろう。得意の指折り、指踏み付けに脚攻めからの関節技を交え、同時に打撃でもハードさを崩さない。場外ダイブ等はなく、ロープワークもかなり抑え目と本来の大会場なら中々出来ない内容をやりたいという想いは感じるが、こういう試合こそNXTファンの大歓声によって、試合の熱を昇華させたかった。
 悪い点はなく、メインに相応しい死闘ではあるものの、どうしても玄人好み過ぎるのは否めない。WWEはおろか、PROGRESS Wrestlingの試合でさえもここまで渋いのはないだろう。サッチャーの試合の様な内容で、これならFight Pitで良かったかもしれない。良い試合だがインパクト十分の印象に残るシーンはなく、試合後のベイラー襲撃&オライリー襲撃によるアダム・コールのヒールターンの印象しか残らなくなってしまった。

 ベイラーとピートクラスなら、アクセントを加える位容易いのは言うまでもなく、あえてこういう試合を選択したのだろうが、試合後の一幕があるなら、尚更一つこの試合はこの攻防やシーンがあった!というパンチラインは欲しかった。

好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4

 

全体評価:9+